123話「五年で極めた奥義、ついに炸裂!」
エンカウント空間が広がり、戦闘空間に切り替わった。
《ブオオオオオオオオオオオオン!!!》
悪霊の咆哮で更に大地が震え上がり、烈風が吹き荒ぶ!
煙幕が風に流れ、オレは頬に汗を流し見据える。黒く巨大な影は赤き満月に照らされて、その全貌をあらわにした。
「あれが……?」
「女性至上主義初代女王の…………」
ゴウッと烈風が吹き荒んで、ビリビリと威圧を感じる。
【最悪の女傑王ピポポクィン】(人族)
威力値:1250000
無数の痩せこけた男をドレスとして編み込んで着ている女性至上主義の初代女王。
六つの太い足を踏み鳴らし、太い手で握る大剣の二刀流。怒りに満ちた形相のカバのような大きな顔。
生前は最初こそ賢君だったが、残忍な独裁者に傾いていった女王。
死後、男性奴隷を糧に巨大な悪霊へと変貌した。大魔王級。
《ぶふふう……。ようやく外へ出れたわ……。あのクズ精霊めが! よくもわらわを封印しおってからに! 許さぬ! 許さぬぞえ!!》
興奮してか、大きな口から白い吐息をブフーブフー吹く。
ドレスに編み込まれた無数の男性霊は恐らく数百年もの間、かき集めてきた奴隷の霊。
封印されていながらも、奴隷が死すたびに自身のドレスとして編み込む事で己の力に加算していった。まさに男の尊厳を踏み躙っているぞ。
もし、このまま放っておけば第二のマリシャスに育つかもしんねぇ……。
オレは粛々と歩み始める。
《ぶもーっ! なんだァ、この男! 穢らわしい!! 貴様もわらわのドレスに編み込んでくれるッ!!》
悪意をあらわに、膨大なフォースを吹き散らし、六つの脚を踏み鳴らす!!
すると赤土の荒野から、無数の黒い手がドバーンと生え出してくる!
《なぶってくれるわあああああああッ!!!》
地響き共に、数千数万もの黒手が周囲から、嵐のようにオレへなだれ込んでくる!
しかしなにか結界でも阻まれたかのように、オレの周囲で破裂音と共に無数の黒手が弾け飛ぶ! 何度も執拗になだれ込むも弾け飛び続ける!
実は超高速で剣を振るって、斬り払っているぞ!
怒涛の津波とも思える量の黒手の群れは、周囲の岩山や城壁を粉砕していく!
「な、なんだっ?? 急に周囲が砕けている? 何が起こってんだよ?」
ウイルには見えていないらしい……。
見えているクックさんはウニメイスを振り回して、ヤマミとウイルの周囲を薙ぎ払っている。
察したヤマミは「見えざる手ね」と呟く。オレたちは妖精王だから見えてるけど、普通の人間には見えない黒手っぽいな。
なおも見えざる手による猛攻は、周辺の地形を容赦なく破壊しつくしていく。
岩山、草木、向こうの山、ことごとく粉々に散らしていく。
地図を書き換えるほどの凄まじい破壊の蹂躙だ。
それでもオレは得意の粘りで斬り払い続けている。
《ぬう!? 魔法の結界!? いや、剣で? まさか、呪詛手を全て斬り払うなど!》
そう、彼女が言っている通り、オレは剣が振るえる範囲で全てを斬り捨てている。
今回は新型の『太陽の剣 S・S』ではなく、普通に斬っている。
キリがないのか、無数の黒手は猛攻を止めて霧散していく。
「五年前のオレたちならいざ知らず、今はきっちり修行してっからな!」
《ブムウッ……! 下賎な男のクセしてッ!》
以前だったらヤマミと二人がかりでも勝てなかったかもしんねぇ……。
「けど、今回はオレ一人でも倒せっぞ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
オレの凄まじい視線と威圧で、足元の花畑が猛って、地響きが激しくなる!
さすがのピポポクィンも恐れを抱いて、僅か怯む。
《たかが威力値九〇万そこらで勝てると思うかああああああああッ!!!》
二刀流の大剣を左右へ振るい、その余波だけで遠くの山脈が切断! 世界一の山さえも山腹から切断!
それでもオレは「ああ! 勝てる!」と自信満々に見据える!
憤ったピポポクィンが二刀を振り下ろしてきて、オレは剣をかざして防ぐ!
ガァン!!
その瞬間、地盤が捲れ上がって周囲に吹き飛んでいく! ゴゴゴォッ!
力比べで互い震えビリビリと衝撃が体を駆け抜ける!
バシッと間合いを離れ、滑りながら着地──!
「おおおおおおおおおおおあッ!!!」
オレとピポポクィンは縦横無尽に駆け抜けながら、数千数万も剣戟を重ねて、幾重の衝撃音を響かせ、余波によって烈風が巻き起こっていく!
ガギギギッギィン、ギギン、ギン、ギギィン、ギン、ギギギィン!!
確かにピポポクィンの巨体による二刀流の大剣は重い!
しかしこれまで強敵と戦ってきた経験と培ってきた修行の量で、格上の攻撃を凌ぎきる!
お互いの剣が、嵐のように幾重も軌跡を描き、拮抗していた!
ピポポクィンの二刀流の大剣を相手に、オレは太陽の剣一本で捌ききれてっぞ!
五年前とは違うぞと見せつけんばかりに寄せ付けない!
例え凶人王が再び襲ってきたとしても、同様に切り崩されないように粘れっぞ!
《く……! ムカつくわねッ!! さっさと地獄に落ちなあああッ!!》
「断るぞッ!!」
ギギィン!!
気迫漲る力を込めた一撃で、巨体のピポポクィンを押しのけた!
大地を滑ってピポポクィンは後退……。ズザザッ!
《お……男のクセにッ、歯向かいおってえええ……!!》
攻めきれないと苛立ってピポポクィンは、再び凄まじい赤いフォースを全身から噴き上げた! 浮遊大陸さえ揺るがすほどの凄まじい勢いだ!
二刀流の大剣にフォースが凝縮されて、刀身が赤く不気味に輝き出す!
《女傑王最大の極技『クイーンカラミティ・ネメシス』で斬り刻んでくれるわぁ!!》
ビビッと脅威を感じる!
「なぁ……、好きな人がいたんだろ?」
《突然何をッ!?》
「フラれて辛れーのは分かるけど、他の男は関係ないんじゃないのか?」
《みんな同じだああああッ!! ゴミどもは喋るなあああッ!!》
ヤマミは「説得はムリ! でなきゃ悪霊になっていない」と呆れてくる。
「……そうか」
《手始めに貴様を惨殺して、女傑の偉大さを後世にまで刻んでやるッ!!》
六つの脚で駆け出し、一気に超加速して大地を爆発させ、百の音速を越えて突進してくる!!
大地を一直線に割りながら迫ってくる悪霊!!!
まさに天変地異かと思うほどの破壊をまき散らしながら、オレ一人へ襲いかかる!
太陽の剣を正眼に構え────!
「女性至上主義の歴史はもう終わった!」
《いいや!! 永遠に不滅だッ! 永遠にッ、弱肉の男どもは強食の我々女傑の糧ッ!! それが絶対の摂理なのだああああッ!!》
「さっき言った! 過去形でな!! そう、終わったとな!!」
オレは戦意を爆発させるようにカッと見開く!
「三大奥義が一つ『超越到達の領域』!!」
刹那、中心となるオレから“超越の輪”が世界へ拡大していく!!
それは世界の諸行無常を全て停止させ、天の川が横切る夜景へと変えた! そしてその中で、オレだけが一撃必殺を幾重も同時に繰り出す!!
「光輝・流星進撃!! 二十連星ッ!!」
ピポポクィンの目には、いきなり二十撃が煌めいたとしか見えなかった!
それは頭上、首、肩、腹、脇、腰、上腕、前腕、手、太もも、スネ、背中、それぞれを的確に完膚なきまでに打ち砕く!
オレは過ぎ去った閃光のようにピポポクィンの背中のはるか後ろで、立ったまま剣をゆっくり下ろす。
ドッ!! 同時ゆえに衝撃音は一つ!
《あ、ありえないッ! こ……この女傑王がぁ……、ゴブアッ!》
吐血し、ピポポクィンは爆散して粉々に吹き飛んだ!
すると、解き放たれた無数の魂は輝きを放ち始め、上空へと昇っていく。
数百数千とおびただしい魂は「ありがとう……ありがとう……」と安らかに礼を言っているようにも見えた。
それを見上げながら手を振る。
「安らかに成仏してなー!」
ウイルはそんな光景に「すげぇ……」と目を潤ませて感嘆。
逆に大精霊イフガープは唖然とした。
《うお……、あっさり終わちゃった……》
この日を境に、赤い満月の現象は消え去った────!
翌日、火の国は歓喜で湧きあがったのだった。
王宮に呼ばれたオレたちは、現女王アリシャスさまに「ありがとうございます」と頭を下げられた。
出国時、クーレロもマブポルトも清々した笑顔で手を振ってくれた。
「また来てくださいね! 先輩!」
「今度は観光を充実させておくよ。それまでお楽しみにね」
初めて走らせる火の国の馬車。
走る二頭の馬の手綱を握っているのがダークエルフのスゴエ。広大な赤土の荒野を走り、オレたちはノンビリと馬車に揺れる。
オレ、ヤマミ、クックさん、ウイルは遠のいていく火の国を眺め続けていた。
「しかし、まさかあの悪霊を馬になー」
「女傑王って言われるだけあって、いい馬なんですケド」
馬車を引っ張るその内の一頭の馬を、ヤマミは冷淡な目で眺める。
「これまで悪政をしてきた悪人を、そう簡単に成仏なんてさせないからね」
闇の妖精王ヤマミの能力によって、ピポポクィンって悪霊は馬に変えられた。
そして、これから火の国の為に働いてもらう事になった。
今まで男を使い捨ての奴隷として働かせた報いとして…………。
「ブヒヒヒヒヒヒヒ~ンッ!!」
涙目のピポポクィンは馬車を引っ張って赤土の荒野を駆け抜けていく……。
もう一頭の馬は「僕がついているよ」とブヒヒン励ます。
あとがき雑談w
その頃、幻獣界────。
殺人進撃の開祖デスはナッセの様子を知って愕然!
デス「あいつ!! もう殺人進撃マスターしてんじゃねーか!!」
エァミヤラ「しかもヤマミに再構成させてるから、不殺版もできそう」
デス「ちくしょー! 騙された!!」プンプン!
エァミヤラ(デスさまの教え方に問題あるんじゃ……?)
次話『さぁ! 次はどの国だー!!』




