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121話「女勇者失恋! 女性至上主義の終焉!」

 オレたちはクーレロとマブポルトについていって、王城の側にある洞窟のようなものへたどり着く。

 すると長身の逞しい女傑が前で立ちはだかっていた。


「だ、ダークエルフ!?」

「初めてみるわね……」

「かっこいいー!」


 褐色肌のダークエルフで銀髪ベリショートで黒い水着のような露出度の高い長身の女。腰にはハンマーをぶら下げている。

 棒立ちのように見えるけど(すき)が窺えない。


 ────できる! ただものじゃねぇぞ!


「かつて勇者のメンバーだった“闇槌の戦姫”スゴエヴォラです」

「普段はスゴエって呼んでるよ」

「お! あの英雄さまじゃナイ? マジ小さいんだケド」


 なんかフランクだなぁ。


「それはいい。それより面識があるとの事なので面会させるよ」

「確認の為です」

「オッケー、何かあったら報告してネ」

「はい」


 かつてメンバー同士だったからか、クーレロとマブポルトと親しいのが分かる。

 勇者とはどうなのか知らないけども……。

 洞窟を潜ると自動的に鉄格子の扉が開かれた。奥は薄暗く冷えている。


「勇者ゴーファドは私たちの頼もしいリーダーでした」


 階段を下りていきながらクーレロは淡々と述べる。

 マブポルトは火魔法(ホノ)を唱え明かりを広げて、先頭を務めた。


「ですが、アリシャス女王さまが改革すると言い出した時に、ゴーファドと口論になったのです。それでも平行線のままでした」

「そんな事が……」

「はい。ゴーファドは女性至上主義に盲信していたので、男性を解放するのを許せられないようでした。我々の生活を支える()()()をわざわざ無くすなど道理を外れた行為だと激昂しました」


 消耗品と言い切っている辺り、女性至上主義者の感覚は薄ら寒い。


「アリシャス女王さまさえいなくなれば、と狼藉(ろうぜき)を働こうとした所を我々が止めました!」

「ひええ……」

「極端すぎな勇者さんー!」


 さっきから黙り込んでいるウイルは不安そうにオレの(すそ)を握ったままだ。


「突然聖剣がすっぽ抜けたと思ったら、女王さまの手元へ収まりました。もう勇者を見限ったようでした。それで煮え切らないまま出て行きました」


 少し悲しげな雰囲気が窺える。

 今度はマブポルトが続きを話した。


「そうそう。その後で前女王と女性至上主義賛者による革命軍でクーデターを起こしたんだよ。しかし大精霊さまの怒りを買われて、国外追放されたよ」

「大精霊さま……?」

「この国を守護する火の大精霊さまだよ」


 前に幻獣界でマシュさまが同じように追い出してた事あったなぁ……。

 塔の魔女と同じように、とてつもない強い力を持っている。普段は人間界へ直接干渉はせず、加護を与える役目なのだが、緊急時には力を振るう。

 ……ってもボッコボコにせず、追放だけで留めているらしい。


「これから面会するけど、その前に勇者とだね」

「え? 大精霊さまと??」

「ええ。会いたいそうですよ」


 クーレロはにっこり。

 そう言われると緊張するなぁ……。


 階段が終わると、牢屋が並ぶ通路に入る。

 覇気を失った多くの女性が力なくへたりこんでいる。女騎士だった人だ。襲撃してたヤツもこの中にいるんだろうか。

 いずれも包帯を巻いている。痛みで呻く人もいる。

 なんか立派な身なりのカバみてぇなのもいる。ボロボロで憔悴(しょうすい)しきっている。


「なんで怪我してるんだ?」

「前女王と勇者が本気でケンカして、それに巻き込まれたようです」

「ついでに革命軍の本拠地も崩壊だよ」

「駆けつけた時は、とっくに終わってましたね」


「えー……」


 一体何があったんだよ?

 なんか知らんが勝手に内輪揉めで潰れてたぞ。


「回復魔法を使わなかった?」

「はい。普通に治療しただけです」

「どうして??」

「多くの罪を犯し、あまつさえクーデターを起こそうとした罪人なのですから……」


 ちなみにさっきのカバみてぇなのが前女王だと言われて、ビックリ!

 牢屋のステージを越えて、更に地下へと階段を下りていく。


「ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー、ナッセさまぁー!!」


 なんかガンガンガンガン叩く音と一緒に連呼してるぞ。

 ドン引きして足を止める。


「……帰っていいかぞ?」


 しかしクーレロはにっこり「ダメです」と、オレの手首をガシッと掴む。

 ぐぎぎ、と力比べで震える。見た目と裏腹に妙に力あるなぞ。

 マブポルトはため息をつく。


「ずっとああだから独房に入れてるんだ。でもキリがないから、こうして呼んだワケだよ」

「えー……」

「じゃあ、いい手があるわ」


 引いているオレにヤマミが提案したのだった……。

 しばらく歩き続けると、マブポルトとクーレロが足を止めた。


「“火勇の守護士”ゴーファドだよ」

「あっ! ゼルゲチィス国を襲った時の……!!」


 大柄な体格の女勇者。赤いパンチパーマの褐色肌。露出度の高い服で大きい胸と尻が目立つ。炎の模様の赤いマント。けどボロボロだ。

 それでも「ナッセさま」を連呼しながら周囲の壁に頭突きを繰り返していた。

 こちらをギャンと振り向き、凄い剣幕で見開いてくる。


「ナッセさまあああああああああ!!」


 急に突っ込んできて両手で鉄格子を握って、こちらへ狂気じみた笑顔を見せる。

 思わず()()る。

 しかし、オレはヤマミと腕を組んでピッタリ密着しているのを見せつける。


「なんださッ!! その女ァ!! あたしのナッセさまに触れへんなざッ!!」

「そのナッセさまの妻よ!」


 オレに寄り添ったまま憮然(ぶぜん)とヤマミは言い放つ。


「つま? つまってなんだし??」

「愛を誓いあって、一生を共にする永遠のパートナーの事よ……」


 ヤマミは自分の左手とオレの右手を並べて見せつける。共に指輪がある。


「これがその証。ずっと一緒に生活しているわ」

「永遠のパートナー!? 聞いてなざー!! いや! それより先に目をつけたんじ! (ゆず)れねぇしざ!!」

「あの時も一緒にいたのに、ナッセしか見てないんだもの」


 憤慨するヤマミに、オレは苦笑い。


「結婚してから五年くらいだぞ。これからもずっと一緒だけど」

「なにそれ、(うらや)まああああああっ!!」


 掴んでいる鉄格子をガタガタ揺らしながら嫉妬で怒り狂っている。

 そんな剣幕にオレはビビる。

 今に破ってきやしないかと戦々恐々だぞ。


「ここは大精霊さまの力で封印されてるから、レベル1より弱い状態だよ」

「てえっと、創作士(クリエイター)じゃない状態にされてるって事か?」

「そうだよ」


 (すが)り付く感じでゴーファドはこっちを睨んでくる。

 マブポルトはため息をつく。


「全部ゴーファドの思い込みだったね」

「ええ。なんかナッセさまに愛されているから反逆できるって息巻いてましたし」

「半信半疑で連れてきたんだけど、これでハッキリしたね」


 すると鉄格子を掴んでゴーファドが「うそざぁぁあ!!」と食ってかかる。


「そんなはずないざッ!! あたしとナッセさまは運命に結ばれてるんだぁぁぁああ!!」


 ひええ……。情緒不安定でバーサーカーっぽい怖さが……。

 しかしクーレロとマブポルトが(さえぎ)る。


「女性至上主義を掲げていたツケだね。今のあなたにそんな資格はないよ」

「そうです! 先輩とヤマミさんは相思相愛(ラブラブ)の仲で結ばれたのです!」


 ゴーファドは「うぐっ!」と(ひる)む。


「ナッセ! やりましょ!」

「お、おう……」


 それにトドメを刺すべき、ヤマミと唇を重ね合った。ぐちゅぐちゅ、濃厚な接吻(せっぷん)をこれでもかと見せつけた。

 そんな過激な接触で体が徐々に火照(ほて)っていく。


「ぷぱぁっ! こ、これが愛しているって事だぞ!」

「ええ!」


 ゴーファドは動揺に震え「そ、そんなぁ……」と、失意でへたりこんでシクシク嗚咽(おえつ)。とても勇者とは思えない。


「……初めて見る姿だね」

「うん。先輩と何かあったか分からないけど、ここまで落ちぶれるなんて……」


「えー! 勝手に一目惚(ひとめぼ)れされただけなのに!?」


 マブポルトは「だろうね」とため息。

 あらかた説明はしておいたぞ。

 すると勇者から聞いているのと違うってた。


 なんか、オレがゴーファドに「あなたに一目惚(ひとめぼ)れした。一緒に国を築きたい」って告白してたっぽい。

 とりあえず首と手を振って「ないない!」と否定した。

 とは言え、人を好きになるってだけで、こんなに変わるものかと驚かされた。


「もしオレと出会わなかったらどうなってたんかな?」

「今まで通り膠着(こうちゃく)してましたね。いつ攻めて来ないかと緊迫したままでしょう」


 それが、オレに一目惚(ひとめぼ)れして勇者ゴーファドは狂ってしまった。

 好きな人を想うあまり、前女王と衝突して王国ごと潰してしまう形で自滅した。それで女性至上主義の時代は終わってしまった。


「なんつーかオレのせい……?」

「あなたが気にする事でもないから」

「そーだぞー!」


 ヤマミとクックさんに背中をポンと叩かれた。


「完っ璧、フラれたあああああああぁぁぁぁ~~~~~~!」


 独房から去ると、彼女の悲哀な声で響き続けていたぞ……。マジ勘弁。




 とある祭壇の広場……。

 王城よりも深い地下。広い空洞になっていて薄暗い。周囲はマグマの池になっている。

 オレたちが踏み入れると、祭壇への道に並ぶ篝火(かがりび)に火が次々とついていく。


《グハハハハ──ッ!! ようこそ! 若き妖精王の英雄よ!》


 祭壇の上で、陽炎のように浮かび上がって筋肉隆々の褐色の男が大笑いしながら現れた。

 赤髪の大男で体に炎をロングコートの形状に纏っている。

 そして肩に乗せている大剣。


「初めて見ましたけど、このお方こそ『火の大精霊イフガープ』さまです」

「今まで声だけだったけど男だったなんて……」


《うむ。数百年前のバカ女王が意中の王子にフラれたからって、女性至上主義政策に突っ走ったのだ。かなーり感情的になってて、こちらの話も聞かんから困り果てて引きこもってたぞ》


 オレたちはポカンとしてしまったぞ……。

 当のクーレロもマブポルトも唖然としていた。


 そんな下らない理由で変な風習を作って国を巻き込んでたのかよ…………!!

あとがき雑談w


クーレロ「恋愛とか結婚とかは本で読んで知ってるけど……」

マブポルト「密書を勝手に読んでるからこれだけど、一般人は知らないままだよ」


 火のルビレッド王国では「恋愛」「結婚」「夫」「妻」などの概念がなかった。


ナッセ「どうやって子孫残すんだぞ?」


クーレロ「言いにくいですが、繁殖用の奴隷から種を摂取して人工授精です」

マブポルト「よりイケメンで素質のある男ほど、種の価値は高くなるんだ」

クーレロ「今では完全撤廃(てっぱい)しましたが、当時はそういう技術が発達してました」


 生まれたのが女児であれば育てるが、男児は施設に即売り(ポイ)

 施設で育てて検査して素質などを調べ上げて、どの奴隷にするか分別している。

 どの奴隷にもできない場合は屠殺(とさつ)して、家畜の食料に。


ヤマミ「最低の発想ね……」

ナッセ「えげつねぇぞ!」



 次話『火の国を守る大精霊の秘密!! 負の遺産! 悪霊!!』

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