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120話「生まれ変わった、火のルビレッド王国!」

 オレはウイルを背負って、ヤマミとクックさんと一緒に赤土の荒野を時速三〇〇キロ以上で駆け抜けていた。

 岩山や草木が一瞬にして後方へ過ぎ去っていく放射状のような光景だ。

 世界一高い山『アリジェロ山』を迂回(うかい)するような感じで走り抜けていると、ようやく(ふもと)の湖と王国が視界に入ってきた。


「あれが『火のルビレッド王国』か!」

「間違いないわ」


 遠景の王国がゆっくり近づいてくる最中、数十キロもの荒野を走り抜けていく。


 そーいや、いつのまにか地響きなくなってるなぞ。

 世界一高い山は活火山かと思ってたけど、死火山ってヤマミ言ってたしなぁ……。ま、いっか。




 オレたちはゼルゲチィス王国から、一日半で王国へたどり着けた。


 赤土の城壁で囲んでいて、出入り口となる門は一つ。

 出入りする人が全くないせいか、普段は頑丈な扉で閉まっている。八大王国の一つなのに小国のような印象を受けた。


「あ! あなたたち、観光ですか?」

「ああ。ってか、入れない?」

「いいえ。交流がないので閉めていただけです。直ちに開けます」


 数人の女兵士が門番していたが、そんな頑ななではないようだ。

 女性至上主義の国と聞いてたから緊張してたけど、そんな事ないようで安心した。


「改革が進んだんだけど、やっぱり国際の信用を回復するの難しいのよね」

「そうそう! でもこれから新しく歴史を作っていくの」

「って事で、英雄さま! ごゆっくりー!!」


 全く観光客がいなくて困ってたから、オレが来ると泣いて喜んでたほどだ。

 周辺で凶悪な盗賊団が多いから仕方ない。


 ギギィ……、と扉が開かれてオレたちが入ると、再び閉まった。



「また襲ってきやしないかと思ってたけど、心配いらないな」

「ええ。あの女騎士はどこかにいるかもね」


 女騎士は年功(ねんこう)の入った女性が多い印象だったから、これも古い人の変な価値観って事かな。若い世代はそうでもなかったらしく、解放された今は窮屈(きゅうくつ)な時代が終わった事を喜んでいた。


「ここが火のルビレッド王国だよな……?」

「ええ」


 道路は平らな地面であるものの、他の国のようにタイルとかで舗装(ほそう)されてはいない。

 その左右の端で篝火(かがりび)等間隔で並ぶ。


「しかし……、この国はちょっと殺風景っぽいかな?」

「仕方ないでしょ。さっきまで女性至上主義で通ってたから観光なんて力入れてないんでしょうし」

「ほえー! うんうん、光の国や緑の国よりちっさいかなー?」

「クックさんもそう思うかー」


 住宅地では赤い屋根を基本的なものとして、赤土で作られた家が多く、ブロック状の建物もある。

 店は最低限のものしかないのが気になる。

 国内で販売しているって感じだ。最低限は揃ってるって事か。


「まぁ、観光できるだけでもマシかぞ」

「ホントにね」


 行き交いしている人々は穏やかな雰囲気だ。

 やや半裸の男が多いが、ヤマミが言うに「奴隷から解放されて間もないので、服装は用意されていなかった」との事。

 確かに女性だけ立派な衣服だもんな。


 パトロールしている女兵士や女騎士は筋肉が窺える。

 そして若い女性が多い印象だ。

 並々ならぬ強さは窺えるが、先ほどの王国襲撃のような殺気立った気配は全くない。王国量産型の鎧も形状が違う。

 反対派の女騎士(あいつら)はどこにいるんだろうな?



 王国と隣り合わせになっている山麓(さんろく)の湖は、エメラルドのような緑色で、中心部ほど青くなっている。

 そんな広々とした水面にクックさんは目をキラキラさせていた。


「うっわー! きれーな海ー」

「それ湖だから!」


 入り江が公園になっているらしく、はしゃぐ子どもたちが多い。

 今は閑散(かんさん)してっけど、何年かすると観光客が増えていくといいなぁ。観光してるのオレたちだけだろうし。


「もう三時過ぎているから、泊まるトコ見つけましょ!」

「だなぞ」

「えー! 描きたかったのに!」


 散策(さんさく)した結果、宿屋は王国で二件しかなかったってのが驚いた。

 火の国は女性至上主義の悪習の為か閉鎖的で、あまり他国との交流がなく、宿屋は需要(じゅよう)がなかったらしい。


「全く、この国は……」


 赤いレンガで建築された三階建ての宿屋。

『太陽旅館』

 新しく建てたてなので、エントランスホールは新品同様のキラキラ。受け付けの女性も慣れない感じで「い、いらっしゃい~」とぎこちない笑顔で迎えてくれた。

 これまた久しぶりの客なので緊張しているらしい。

 ヤマミがチェックインして済ませ、該当する三階の部屋へ入った。


「これはなかなか……」

「悪くないわね」


 クリーム色の壁天井。フカフカな絨毯。ベッドは真っ白で、クックさんが跳ねている事から柔らかさは確かだ。

 大窓にはベランダがあって、そこから外を見渡せる。

 湖と世界一の山が一望できる。


「ウイル相変わらずだなぞ」


 もうベランダでウイルが風景を絵にしている。目に焼き付いたら即描いている。すっかり夢中だ。

 この大陸へ着いてから、結構な枚数描いてねぇ?

 そんな積極的な絵描きはオレも見習いたいなぞ。


 ヤマミはベッドへ腰掛け、安堵(あんど)のため息。


「おつかれ」「そちらこそ」


 テーブルには観光するためのガイドブックが置いていた。

 たぶん、観光客の為に用意してたんだろうな。サンキュー。


「お、温泉あるらしいな」




 湖近くの露天(ろてん)風呂の温泉。

 岩で囲んだ風呂がいくつもあって、湯気が濛々(もうもう)としている。床は岩のタイルで敷き詰められてて、湯で濡れている。

 ウイル、オレ、ヤマミと横に並んで湯に浸かっていた。

 クックさんは楽しそうに、湯に浸かったままスイ~ッと移動している。


 なんと混浴だったのだ!

 元は女性専用だったから仕方のない事とは言え、これはちょっと……。

 オレたちが入浴しているにも関わらず、平然と行き交いしている女性が多い。あらわな胸がプルンプルン。筋肉質の女傑も混ざっている。


「あんまり見ないで」


 むくれたヤマミに尻をつねられた。いてぇ!

 この辺はまだ国際的な性事情は浸透してないんだろうな。


「ナッセー、スケベー! いやーん!」


 クックさんは全裸で立ちあがってイヤンイヤンポーズでからかってくる。


「そうは言うが、意味分かってんのかよ?」

「ひっさしぶり一緒の風呂だぞー!」


 久々に一緒だもんなぁ。一人で入れるようになったとはいえ、(さび)しかったのかな?

 ともかく体は成長しているんだから、少しは恥じらって欲しい。


「タオルで前を隠しなさい!」

「えー!」


 ヤマミがタオルで隠すように指導している。


「ぶーぶー! ヤマだって隠してなーいぞー!」

「夫婦だからいいの!」

「一緒に入れるウイルずるいー!」

「ウイルは男の子だから! あなた体が変わってきてるでしょ? 胸とか膨らんでるから」

「むー」


 すっかりヤマミも立派なお母さんだなぞ。

 ウイルは気になって「なんで一緒だとダメなんだ?」と不思議がっていた。


「大きくなれば分かるよ」

「なんだよそれ!」


 オレのいた地球じゃ、その頃の年でスケベなの多いのになぁ。

 ()マリシャスとは言え、性知識は全然なのな。概念の存在だったから男女を知らないのも無理ないかもしれんが……。


「でも景色はいいよな」

「だなぞ。ゆっくりしてていいけど、のぼせないようにな」


 露天なので、夕景の世界一高い山を一望できるのは風情があっていい。

 温かい湯に浸りながら眺めるのも気持ちいい。


 風呂上がりに飲む果樹のジュースが冷たく美味しい。ゴクゴク!



 日が沈んでから、オレたちは食亭で豪勢な肉料理をいただいていたぞ。

 カアビ港町の肉料理とは、噛み応えが微妙に違う。スパイスが効いていて辛味がある。

 野菜も地球のと違った甘みのある味で、瑞々(みずみず)しい。

 キノコのシチューは破壊力抜群。(あなど)れない。


「うう……、腹がパンパンだわ……」


 デジャヴかと思ったぞ。

 再び辛そうなヤマミには苦笑いしてしまう。ここも美味しすぎたんだなぁ……。



 夜空の下で、篝火(かがりび)の明かりが点々(てんてん)と火の国を照らしている。

 オレたちはゆったりと宿屋へと道路を歩いていた。手を繋ぐクックさんとウイルはウトウトと眠たそうだ。

 部屋へ入ると、二つのベッドにウイルとクックさんを寝かせた。


 オレはヤマミと一緒にテーブルでゲームしながら十一時まで(ふけ)ったぞ。そろそろ、といつもの心霊の会話(スピリチュアル)を行った。

 後にベッドで横になって、ベッドライトの明かりを消して「おやすみ」と安らぎの闇へ沈んだ。


 すやぁ……。





 リフレッシュな朝飯で食べるハムエッグは美味しい。

 ここは湖近くの食堂。開放的な空間で、景色が一望できるトコだ。

 モグモグ食べてると、例の二人が訪問してきたぞ。『大祓祭』以来の久しぶりな妖精王と竜王。


「先輩! おはようございます」

「おはようです!」


 三角帽子、装飾が施された優美なローブのメガネをかけた黒髪ロングの女“叡智(えいち)の大魔道士(マジシャン)”クーレロ。実はオレたちと同じ妖精王。

 桃色の髪の毛でロールを巻いているロリっぽい風貌で、本を抱え持つ“氷震の策士”マブポルト。マイシと同じ竜王。

 にっこりと微笑んでくる。


「なんか用?」


 ナッセに親しげだと思ったか、ジト目のヤマミ。


「反対派である革命軍の事だけど……」

「ああ。あのフェミ集団か」

「今は旅行中よ。依頼なら──」

「そ、そうではなくてね。もう解決しちゃってるんです! その報告!」


 オレたちは目を丸くした。

あとがき雑談w


アリシャス女王「改革で奴隷制度を廃止したのはいいけど……」

クーレロ「そうですわね。男性の方は読み書きできませんし」

マブポルト「特別に学校を設立しましょう。反対派の広い屋敷を使って」


 男の子はともかく、大人の男たちは勉学に苦労したらしい。


マブポルト「次は衣服と食料ですね」

クーレロ「ええ。これまで最低限のしか与えてこなかったですしね」

アリシャス女王「それから輸入した()()()()とティッシュも大量に用意しなさい! たくさん使うそうよ」

クーレロ「え??」

マブポルト「何に使うんでしょう?」

アリシャス女王「……治安の為、多少のガス抜きも必要です」コホン!


 アリシャス女王はそそくさと去っていってしまったぞ。待ってー!


 改革してから五年経っているとは言え、まだまだ。先は遠い……。

 しかし、十年、二十年と経っていけば他の国と遜色(そんしょく)ないレベルに育つかも知れない。



 次話『ナッセ、勇者ゴーファドと面会!?』

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