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117話「即落ち! 勇者ゴーファドご乱心!」

 城壁が壊され、煙幕が立ち込める最中、なんと“火勇の守護士”ゴーファドが現れてきたのだ!

 しかもその後ろから完全武装した女騎士たちがザッザッと隊列を組んで歩み寄ってくる!

 ごろつきどもは騒然とする! ザワザワッ!



 オレは初めて見る火の国の勇者を目の当たりにして驚かされた。

 大祓祭の時はいなかった。

 確か同じ妖精王のクーレロと竜王マブポルトは不死鳥(デマイズ)に王国ごと消されたって言っていたな。


「あいつが……火の国の勇者!?」


 にじみ出てくる殺意で信じられない。


「くッ! ついにこの国にも来やがったか!」

「主人!」

「どうしやす?」

「レソ国が壊滅したの、マジっぽいっす!」

「シャブアイグド国に逃げるしか!」


 なんか後ろで宿屋の主人と怖いお兄さん四人組が狼狽(うろた)えているぞ。

 それとは裏腹に、ごろつきどもは殺気立っていく。これまで以上にギンギン鋭い殺気で(ひし)めいているぞ。


「クソ! 先手を取られた!!」

「こうなったら計画は前通しだ!! やっちまえ!!」

「おう!!」

「全員エッチ回してやんよ!」

「ここに来た事を後悔させてやる!!」

「キサマら女性至上主義が気に入らなかったんだーっ!!」

「「「やっちまえ────ッッ!!」」」


 ごろつきどもは全員凄まじいオーラを噴き上げて、得物を振り上げて、尾を引きながら勇者や女騎士たちへ飛びかかる!


「可能なら捕えよ! それ以外は殺せ!!」


 ゴーファドはボロボロに欠けている大剣を振り上げる。

 それに応えた女騎士たちは洗練されたエーテルを一斉に噴き上げて、ごろつきを迎え撃つ!


「「「うおわあああああああああああああッッ!!!」」」


 互いの人海が衝突し、衝撃波が爆ぜて、数十人ものごろつきが宙へ舞う!

 女騎士たちは堅実な剣術でごろつきの攻撃をいなし、鋭い反撃で斬り伏せる!

 大勢でズンズン前進し続け、次々蹴散らしていく!


「ぎええ!」「ぐぎゃあ!」「うわああ!!」「ぎゃああああ!!」「があっ!」


 数こそごろつきの方が圧倒的だというのに、完全に負けている。



「下郎どもはひれ伏せなざぁッ!!!」


 ドガアッ!!


「ぎゃあ!!」「ぐえ!」「うわああ!!」「うぎゃあ!!」


 勇者の大剣が地面ごと爆発させ、数十人のごろつきが宙を舞う!

 この国のごろつきだって数万もの威力値を誇るというのに、勇者たちの優位は覆りそうにない。一方的な蹂躙(じゅうりん)とも言える。転がるごろつきを頑丈な鎖で縛り上げていく。

 もはや彼女らの狩り場だ。


「く……! この国はもうダメだッ!!」

「今の内に逃げろーッ!!」


 宿屋の主人は怖いお兄さんと一緒に、オーラを纏って空へ飛び去っていく、がエーテル纏う矢が狙い違わず肩や足を貫いた!

「ぐあああ!!」「ぎゃああ!!」

 そのまま地面へ急落下して横たわる。すぐさま女騎士たちが駆けつけて縛り上げる。

 一匹たりとも逃さない、そんな剣幕の女騎士たち。あまりにも容赦がない。



「ナッセ!!」

「うむぞ!」


 飛んでくる女騎士たちがエーテルを纏って、こちらにも剣を振り下ろしてくる!


「パヤッチの杖! 斬れないバージョンの剣になれ!」


 取り出した短い杖の聖剣が剣に変形して、女騎士の剣を防ぐ!

 ヤマミもクックさんも得物を向ける!


「む! その方々は避難されよ!」

「この下郎は捕らえるゆえ!」


 しかしヤマミは毅然(きぜん)と「夫です!」と火魔法(ホノ)を撃ち、一人の女騎士を爆炎に包む!

 鎧の魔法耐性が高いせいか、女騎士は体勢を崩しただけだ。


「なにを!? お、おっと??」

「私の夫です! 結婚しました!」

「けっこんとはなんだっ?」


 オレは聖剣で切り結んでいたが、間合いを離すように女騎士を弾く。ギィン!


「こいつ手強いです! 応援を!」


 その間も、国中は阿鼻叫喚と火の手が上がり続けている。

 今も女騎士たちの蹂躙が続き、ごろつきは次々とねじ伏せられて捕らわれていく。もはや地獄絵図だ。



「覚悟するんだねッ!!」


 なんと勇者ゴーファドが狂喜の笑みで大剣を振り下ろしてきて、オレは緊迫したまま聖剣で受け止める!

 足元から広がった衝撃波の波紋が地盤が(めく)れ上げて破片を吹き飛ばしていく!

 ギリギリと(つば)()り合いしていたが、ゴーファドから力を緩めてくる……。


 さっきまで凄まじい殺気だったというのに、鳴りを潜めた?


「貴様……、何者かざ?」

「オレは妖精の白騎士ナッセだぞ」


 顔を赤くして睨んできているのに、殺気は全然ない。……できる!


「なんだって!? あの大祓祭を解決したあの英雄?」

「なんでここにいるのです??」


 さっきまで相対していた女騎士も狼狽(うろた)えているぞ。


 そうか。オレが噂の英雄だと面影があるから聞いてきて、聞いた名前で確信したなぞ。

 他のごろつきのようにはいかんから、迂闊(うかつ)に仕掛けられない。

 なにしろ、世界を焼き尽くすような不死鳥(デマイズ)を打ち破り、黒幕であるマリシャスを滅ぼした英雄って知れ渡っているからな。


「何をしに来たざぁ!?」

「ああ。こんな時に悪いけど、世界旅行している。今度火の国へ向かうトコ」

「なぜこの国にいる!?」

「たまたま。もう暗いんで泊まる所がここだった」

「……こいつらと結託(けったく)しているのではないのかざ?」


 オレは首を振る。

 ゴーファドは剣を下げる。すると女騎士たちは「勇者さま?」「なぜ??」と戸惑(とまど)う。


撤収(てっしゅう)だざ────!!」


 急に勇者が大声を張り上げて、襲っていた女騎士たちはピタリと動きを止めた。

 ぞろぞろと女騎士たちが寄ってくる。

 オレの姿にザワッと騒然するが、勇者が制止の腕を伸ばす。


「手を出すなざ! この方は世界を救った英雄だざ!」

「え? 何故です??」

「さっきまで英雄だろうが男であれば下郎! 種を残す繁殖用の奴隷にせよ! と!」

「我が軍全員でかかれば捕らえられます!」

「何ぞとご命令を!」


「ならん!! こっちが大きな被害を被るざ!」


 ゴーファドは勇者として毅然と抗議を跳ね除ける。

 確かに正しい判断だ。オレたちと本気で戦えば被害は甚大(じんだい)なものとなる。下手に返り討ちされれば元も子もない。


「この国に(くみ)しないなら、今の所は見逃してやろう」


 変に穏やかな声だ。

 周りの女騎士たちは未だ殺気立っているが、必死に抑え込んでいる感じが窺える。


「この下郎が! いい気になるなよ!」

「必ず奴隷に────」


 するとゴーファドが急に大剣を振るい、侮蔑(ぶべつ)を吐いた女騎士を薙ぎ倒した!

 全身鎧を破損され「ぐああ!」「きゃあ!」と転がった。

 唐突な事態に、オレも女騎士たちも目を丸くして驚く。


「挑発するのは許さん! この方の気が変わったらどうする気だ!」

「す、すみません……」

「過ぎた口を許しください……」


 他の女騎士たちに肩を貸してもらってすごすごと去っていく。

 ゴーファドは一息ついて「無礼を済まなかったな」と神妙に謝ってくる。そして悲しげな視線を見せ、場を後にしていった。



 訪れる静寂(せいじゃく)────……。

 未だ黒煙と火の手が上がっているゼルゲチィス王国。被害は甚大なものとなっていた。

 連れ去られたのか、逃げたのか、もはや誰もいなくなっている。


「ふう、なんか知らんが退いてくれたなぞ」


 振り返ると、何故かヤマミがチョップで軽く頭上に当ててきた。


「え?」

「この女たらし!」

「いっけないんだー! いっけないんだー!」


 目を細め不機嫌そうなヤマミ、そして悪戯(いたずら)っぽく笑うクックさん。


「自覚してないと思うけど、勇者を一目惚(ひとめぼ)れさせてるわよ?」

「え? うそ!?」

「不自然に殺意消えてたでしょ?」

「まさかー……」

「あなた相変わらず鈍いのね……。全く……」


 でも言われてみれば、妙に殺気が収まるのが早かったな。

 一連の挙動を思い返せば、そう見えなくもない。侮蔑吐いていた女騎士を問答無用でぶっ飛ばしてたしな。あれビックリした。

 信じられないけど勇者さんを惚れさせてしまったみてぇだ。今後、面倒な事になりそう。


「……なんというかスマン」


 ヤマミは「仕方ないわよ」と、オレの背中をポンと軽く叩いてくる。





 月明かりの下、闇夜の荒野を疾走する勇者たち。


 捕らえたごろつきを網袋で(かつ)いで走る女騎士数十人。息も切らさず走り抜けていく最中、勇者ゴーファドは脳裏にナッセばかりが浮かんでいた。

 顔が熱くなる。胸がドキドキする。これは初めての経験だった。


「妖精の白騎士ナッセか……。あたいは一体どうしたいのださ……」


 生まれてから女性至上主義が当たり前の環境で育ってきた。

 奴隷の醜い男どもを見ても何にも感じなかった。むしろ(けが)らわしいナマモノ。力仕事や繁殖にしか価値のない愚物。それしか見ていなかった。

 イケメンは数々いたが、今回ほど心が揺れるものはいなかった。

 それもそのはず、イケメンすら我ら子孫の美を生み出す為に生まれてきた道具としか認識していなかったのだから……。


「……勇者殿、私情は挟まれては困るな」

「うるさい! この場で斬り捨てるざぁ!」

「むっ?」


 不思議だった。いつもなら「承知している」と冷静に返していた。

 なのにカッと感情的になった。


「明日、反乱軍総出で火の国を攻め込んで乗っ取る!!」

「なんと!?」

「それは時期(じき)尚早(しょうそう)ですぞ!」

「まだ戦力が……」


 勇者ゴーファドは表向き冷静を取り(つくろ)っていたが、内心焦っていた。


「奴らは火の国へ行くと言っていた。もし穏健派へ味方すれば勝ち目がなくなるぞ」

「ぬっ!」

「言われてみれば……!」

「それは危ういですな!」

「では早速!」


 最悪、王国の穏健派へ流れへば敵対する事になりかねないざ。

 何故敵対していてんのか、後ろめたい事情を穏健派が語れへば自分への心証は間違いなく悪くなるず。ナッセには間違いなく嫌われるず。避けねば!

 ……その前に、穏健派を全て駆逐(くちく)するざぁ!


「行くだざ!! 火の国を我らの手に!!」

「「「おおおおお────!!!」」」


 勇者ゴーファドが大剣を振り上げると、女騎士たちも雄叫びを上げた。


「そしてナッセ様を迎えて、新たに王国を築くだざ──!!」


 走っていた女騎士たちは全員ずっこけて転がったぞ。ゴロゴロッ!

あとがき雑談w


女騎士フロデボラ「なんか勇者さん、おかしくなってきてないですか?」

女騎士ミレバラ「あの英雄でしょ? イケメンだとは思うけどさぁ……」

女騎士ヨヨ「下郎って言ったら、逆に殴られたです。酷い」

女騎士アシリア「なんで斬りつけてくんの! 奴隷呼ばわりぐらいでさ!」


ゴーファド「もう一度言ってみろじ!」ギロッ!


女騎士ヨヨ「大人になるって悲しい事なの……」

女騎士アシリア「お願いです……止めてください……」



 次話『勇者の乱心でいろいろ大変な事に……!』

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