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115話「道中旅で語る、火の国の情勢!」

 カアビ港町を後にして、オレたちは広い獣道を歩いているぞ。

 周囲はヤシの木っぽいのが多く、やや多めに草が生えているが、赤めの荒野が広がっている。


 そして大きな山が近くで(そび)えている。圧巻だぞ。

『アリジェロ山』

 それは標高約一万二〇〇〇キロもの世界一の山だ。山頂から雪化粧が被さって山腹までギザギザに枝分かれして途絶えていく。

 登ってみたいが、ウイルには厳しいかな。気圧とか気温とかやべーし。


 ウイルは後ろへ振り返って小さくなっていく町を名残惜しそうに見ていた。


「肉、美味しかったもんな」

「それはそうだけどよ……。なんで内戦中の国へ行きたがるんだよ」


 恨めしそうに見てくるのを、苦笑いで返す。


「ずっと内戦中だったっぽいから、情勢どうなってんのかなって?」

「聞いてたんじゃないのかよ!? 男の奴隷とか勇者の反乱とか兵士さん言ってたじゃん!」

「いやぁ……、大祓祭までは内戦なかっただろ?」


 そう、大祓祭が終わってから内戦が起きたのだ。

 その国の事情を知らないオレには突然の事のように思える。


「それは“火勇の守護士”ゴーファドって女勇者が反乱を起こした事から始まる」


 歩きながらヤマミが話し始める。

 元々、火のルビレッド王国は他の国と交流があまりない。それは男の奴隷制度によるものだった。

 この国の特徴は女尊男卑。

 男性には戦闘力も娯楽も与えず、労働力と命の盾だけを()いて国の犠牲になっていたのだ……。

 逆に女性は王族貴族階級で美や娯楽を楽しんで偉そうにしてて、優れた魔法と戦術を独占していた。


「つまり“男に人権を認めていない”という差別的制度がある事ね」

「うわぁ……」

「ひっでぇ!」


 オレもウイルも顔を(しか)めるほど酷い情勢だぞ。


「それらが昔から当たり前のようになっていたから、男の冒険者は絶対行かない。迂闊(うかつ)に入国すれば拘束されて奴隷にされるって言われるほどだからね」

「そりゃなぁ……」

「ひっどーい国ー! 奴隷制度なんかなくなっちゃえー!」


 ぷんぷーん、とクックさんは頬を膨らまして感情を表現している。


「前女王は全世界にこの制度を採用すべきと積極的に働きかけたけど、非難轟々を浴びた上に自国評価も下げまくったから体調を崩して今の女王さまに王位を譲っていなくなってしまった」

「あったりまえだろ。全く傲慢(ごうまん)なヤツだな……」


 ウイルはため息をついてそんな事言ってるけど、お前人の事言えねーぞ?

 とは言え、不満を感じるほど善悪に区別がついているのは喜ばしいか。


「で、今の女王さまは前からこの制度に疑問を持っていたものの言い出せなかったんだけど、大祓祭をきっかけに奮起したの」

「へー」

「んで、それに女勇者と貴族たちは反発したわ」

「おおお! クーデタかー!」

「男は自由になると犯罪者になるからダメだと女勇者たちはしきりに主張したけど、女王さまはそれを跳ね除けて制度撤廃(てっぱい)敢行(かんこう)した。全世界にも『古い制度に縛られた愚かな国をお許し下さい』と謝罪を発表した。それも反対派に火をつけたの」


 反対派は予想外に多かったけど、精霊や若い妖精王と竜王が女王さまについた為に均衡(きんこう)してしまい、国は分裂してしまった。

 今は女勇者を中心に反対派による革命軍が形成されて、王城を乗っ取ろうと躍起(やっき)になってるのが現状。

 ただ国に加護を与える上位生命体が味方していないので(はかど)っていない模様。

 ……とヤマミが言ってたぞ。


「要するにフェミの革命軍と良識派の王国が対立しているって事か」

「そんな感じね」


 オレの元いた並行世界(パラレルワールド)にもフェミニストという偽善者が幅を利かせていた。

 男を見下し、女性至上主義を世間に押し付ける()で日本文化の衰退を狙っていた。しかも反社組織と繋がっていた。それは悪意のある隣国が送り出したスパイの仕込みとか言われている。

 それと似ている。

 違うのは、純粋に女性至上主義としての体制を主張してるぐらいか。


「だから馬車ですら火の国とはルートを敷いていないって事か」

「いいんじゃないか? 徒歩でゆっくりしてよーぜ」

「お、珍しいな?」

「こうして歩くのも悪くないなって思ってるぜ。こんな景色あんま見れねーんだしよ」


 変にウイルが神妙な事を言い出す。


「ははーん。火の国へ着くまで時間かかるから、その内終戦してくれる事を期待してんだろー?」

「うっ……!」


 やはりと言うか、そんな事考えてたかー。

 でも確かに普通に歩いていけば数ヶ月かかる距離だぞ。地形も険しいらしい。地図じゃ全然近いように見えるけどな。


「しばらく野宿多くなるけど、いいか?」

「……まぁ」


 渋々(しぶしぶ)ながらも、やはり徒歩の方がいいって事か。

 とは言え、初めて見た景色も何時間見ていると飽きてくる。ずっと点々とした草木と赤土の荒野ばかりだもん。

 延々と同じ場所を歩かされてるとさえ錯覚する。

 クックさんも退屈そうに小石を蹴飛ばしながら歩いている始末。


 ウイルは時々オレの方をチラチラ見てくる。何か言いたげだ。


 時々エンカウント現象起きるけど、気合いや素振りだけで吹っ飛ぶ程度のモンスターしかいない。

 なんかこう「はっ!」と掌を突き出すだけで全滅しちゃうからな。

 目に見えない列車にはねられるようなもんで、肉片散らして粉々になっちまう。

 ウイルは「えげつねぇ」って引いてるけど、それよりももっと凄い事をマリシャスでやってたけどな。宇宙を崩壊させるとかさー。

 敢えて突っ込まないけど。


「トーチャン、ノド渇いたー!」

「しゃあねぇな……」


 疲れた顔で催促(さいそく)してくるウイルに魔道水筒をよこす。

 ゴクゴクと飲んで喉を(うるお)していく。


「ふう。ありがとな」


 返してくれて、それを腰にぶら下げる。


「ってか、水なくならないな?」

「そりゃ周囲から水分をかき集める『刻印(エンチャント)』を付加してっからな。十分もすれば満タンよ」

「そんな機能あったのか?」

「さっき言ったろ。魔導水筒にオリジナルの『刻印(エンチャント)』を付加、な」


 そう、オレたちは幻獣界で学んでいるからオリジナル刻印(エンチャント)が作れる。

 魔導水筒そのものは温度を保つ機能しかないが、オレたちは更に自動で水をチャージできる仕様にしている。

 でもこれは世間には公開していない。オレたちだけ独占だぞ。


「これ発表すれば、一気に売れるんじゃねぇか?」

「あんまり多いと水が枯渇する恐れがあるからね。そのせいで世界のバランスが崩れかねない」

「また魔族たちとか世界大戦引き起こしかねねぇからな」


 人類が繁栄しすぎて星の危機に陥ったが故に魔族たちの大侵攻が行われた。

 今度はオレたちが戦犯になりかねない。


「個人で使う分には問題ないから」


 余談だが、オレはライトミア王国で『刻印研究開発所』で働いている。

 意外な事に戦闘力がありながらも地味な所へ働いているのは、オレ自身戦う事はあんま好きじゃねぇってのもある。

 実は騎士たちにも勧誘されてたけど断った。残念がってた。すまん。


 と言っても、開発所でやる作業は刻印(エンチャント)のミスがないか確認するだけだ。

 新しい刻印(エンチャント)を開発する人は別にいる。そりゃ開発部門へ誘われもしたが「ミスを探す方が好き」って事にして敢えて(・・・)辞退した。

 妖精王の知恵を発揮して画期的な発明ができるんだろうけど、戦犯になる事を恐れたのが真の理由だぞ。

 ミスを見つけるだけなら何も影響もないからな。


 みんなから「ミスが全然なくなった」「クレームが少なくなった」「すげぇな、あんな細かいミスにも気づくなんて!」と絶賛されてるぞ。えっへん。

 給料もいいから、こうしてノンビリ作業やってれば楽々さー。




 夕日が沈んで冷えていく頃、オレたちはテントを張って焚き火を起こしたぞ。

 そこら辺から木の実やキノコを集めてきて焼いて食べたぞ。


「毒キノコじゃねぇか!?」


 見るからに毒々しい赤いのや、ヤバそうな形状のキノコだ。

 オレたちはバリバリ食う。

 ウイルには「前から思ってたけど人間やめてねーか?」と言われる。


「解毒してるから大丈夫よ」

「毒の種類も(直に食べる事で)識別して完全完璧完遂解毒してっから安全安全」

「えー……」


 ジト目で渋々(しぶしぶ)ながらも食べると「うめぇ!!」って喜んでくれた。

 美味いけどヤバい毒キノコなんかもあったりするので、解毒さえすればただ美味しいだけになるぞ。

 毒を抜くと旨味(うまみ)も一緒に消える種類もあるから、この辺は苦慮する。



 星々煌く夜空の下でオレとクックさんは得物を重ね合ってガッキィンと衝撃音を轟かした。バチッと反発して間合いを離す。

 オレは「来い!」と挑発し、クックさんは喜々と飛びかかる。


 ガガガッガッガガガガッガガガッガッガガガガガガッ!!


 縦横無尽に駆け抜けながら、幾重に踊る軌跡で絶えぬ激突を繰り返していく。

 これまでの退屈を晴らすかのような激戦だ。


流星進撃(メテオラン)!! 三十連星(さんじゅうれんせい)ーッ!!」

「爆裂乱舞ミラージュ・ウニメイスーッ!!」


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!


 轟く連撃が相殺し合い、最後にオレとクックさんは渾身の一撃を振るい合う!


「おおお! サンライト・スパークッ!!」

「うにあー! ウニメイス・スパークゥー!!」


 ギキィンッ!! 強烈激突の際に閃光が爆ぜた!


「ぐっ!」「むむっ!」ビリビリッ!


 大地を揺るがすほど重々しい衝撃が響き、烈風が吹き荒れていく。

 平然と立っているヤマミの後ろでウイルは吹き飛ばされまいとしがみついている。尚も煙幕は烈風に流されていく。ブオオッ!


 クックさんが眠たくなるまで付き合ってあげたぞ。



 強力な魔除けの結界を敷いて、テントの中でオレたちもぐっすり寝たぞ。

 その上空で天の川が数多の煌きと共に神々しく横切っていた。

あとがき雑談w


 生き返った火の勇者は、後から事情を知った。


“火勇の守護士”ゴーファド「マリシャスを倒した妖精の白騎士ナッセって誰だよ!?」

革命女騎士A「男の妖精王らしいですね」

革命女騎士B「信じられませんわ」

革命女騎士C「男如きがマリシャスを滅ぼした英雄とは!」

革命女騎士D「本当はヤマミさまのおかげじゃありませんの?」


ゴーファド「ヤマミさまと並んで戦ったなどと認められるかい! ってか女王派のスゴエもクーレロもポルも追放したから、こんな量産型みたいなのと会話とか煮え切らないよ!」


 まさかの追放モノw で、なんかザマァされそうw


革命女騎士A「そんな! ごむたいですわ!」

革命女騎士B「我ら火のルビレッド王国直属護衛騎士“火焔四女傑(ブレイズ・フォー)”なのに!」

革命女騎士C「()護衛騎士とはいえ、この扱いはあんまりです!」

革命女騎士D「これでも威力値12万以上の実力者ぞろいですの!」


ゴーファド「ってか顔(さら)してから言いな!」


 カブトをかぶったビキニアーマー四人衆だったぞ。

 顔も分からないのでコピペしたような風貌なのだぞ。まさに量産型。



 次話『女勇者と(はち)()わせに!? 激突必至!?』

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