エピローグ:記録と未来と、歩幅をそろえて
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数日後。いつもの講義室。
窓際に腰かけて、俺はスマホを片手に迷宮アプリを起動していた。
かつて謎の迷宮として恐れられたそのアプリは、今や誰でも使える公開データベースとして再構築され、迷宮探検者たちの共有ツールになっている。
画面の端には、あの踏破マップが保存されていた。不完全な線、何度もやり直したルート。
でもそこには、確かに俺たちの旅の記録が残っていた。
「ちょっとー、まだアプデしてないの?」
ルルの声が後ろから聞こえた。
振り返ると机に肘をついて、いたずらっぽく笑っていた。
「しばらくは、思い出のままにしときたいんだよ」
「ふふ、ロマンチスト~」
その隣でユナがあきれ顔で言った。
「あたしが巻き込まれた理由、最近ようやく分かってきた気がするんだよね」
俺とルルが同時にユナの方を見る。
「迷宮ってさ、記憶とか、感情とか――そういうのに反応するでしょ?
きっと私、御崎くんのそばにいて何かしら感情が揺れたんだと思う。……だから引き寄せられたの」
「……それって」
「うん。ちょっとムカつくとか、ちょっと気になるとか、そういうの」
ユナは照れ隠しみたいに笑ってから、ぽそっと言った。
「まあ、でも。……それって悪くないかも」
「おおっ」
ルルがニヤリと笑い、俺の方を肘でつついてくる。
俺は誤魔化すようにスマホを見下ろしながら、少しだけ口元を緩めた。
変わったものもある。けれど、変わらないものもある。
大切なのは、何を残して、何と向き合っていくか。
窓から差し込む光の中、俺たちはただいつものように笑っていた。
この物語がどこまで続くかは、まだ分からない。でもきっと、どこまでも歩いていける。
仲間がいれば、歩幅をそろえて。
——END——
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