第30話 カギと地図と、不可解なナビゲーション
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記録回廊を抜けた先に現れたのは、今までの迷宮とはまた違った雰囲気のフロアだった。
広々とした空間に、低い草木や水辺、人工的な街灯のようなものが並んでいる。
まるで、屋外の公園を再現したようなエリアだった。
『階層31:散策型安定区画/目的:探索誘導・回復』
「あ、これ……ちょっとした休憩ゾーン?」
ユナが芝生に腰を下ろし、寝転がった。
「気を抜きすぎないでよ。これでも迷宮の中なんだから」
ルルが警戒を残しつつも、草の匂いを嗅いでいた。
俺も、地図アプリを開いてみる。
『この階層の地形情報は“動的”です。更新頻度:中』
「動的って……また勝手に変わる系かよ……」
そのとき、マップ上に赤く点滅する小さなマークが表示された。
『未解析エリア:座標X28,Y7/注意:周囲に“幻像干渉”の兆候あり』
「カギは、あそこにあるかもな」
「じゃあ、迷わないうちに行きましょ」
俺たちは、ゆるやかな丘を下りながら“次の鍵”を目指して歩き出した。
途中、ユナが小さな池を覗き込んで叫んだ。
「あれ、魚じゃない!? しかも、ハート型の模様ついてる!」
「ほんとだ……ちょっとかわいい……」
ルルも思わず足を止める。
「いや、そもそも迷宮内で生き物がいるっておかしくないか?」
不安を覚えながらも、探索は続く。
そして俺たちは、草むらの向こうに見えた異質な光を追って、小さな橋を渡った。
草むらの向こうに見えた光は、やはり鍵のように見えた。
けれど近づくにつれて、形がぼやけたり、急に浮かんだり消えたりする。
「……これ、ホンモノなのかな?」
ユナが眉をひそめた。
「いや、でもさっきのマップだと、たしかにここが座標だったはず」
「待って、足元……!」
ルルの叫びと同時に、俺の足元の地面がふっと崩れた。
「うわっ!?」
転げ落ちた先は、わずかに開いた地割れのような場所だった。
数メートルほどの斜面を滑り落ちた先に、ポツンと浮かぶ光の欠片。
「だ、大丈夫!? 御崎くん!」
「うん、生きてる……!」
ユナとルルが上から覗き込む。
その様子がなんとなくユナのスカートの角度的に危うかったので、俺はすぐに顔を逸らした。
「……見てないからな!?」
「なにそれ逆に怪しい!!」
手を借りてなんとか斜面を這い上がる。
そして手にした光の欠片は、確かに鍵のかたちをしていた。
だがそれは、半分だけだった。
「これ……壊れてる?」
「いえ、分割式だと思う」
声の主は、後ろから歩いてきたカエデだった。
「3つの鍵。それぞれが記憶に紐づいているの。これは3つ目の、最後のピース」
ルルがその言葉に、じっと鍵を見つめる。
「じゃあ……全部、そろったんだ」
「ええ。そしてこの先が、最深部」
カエデの声は、ほんの少しだけ震えていた。
「行こう。全部の答えが、そこにある」
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