第27話 湯けむりと罠と、布面積の裏切り
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迷宮を進み続けていた俺たちは、戦闘と感情のジェットコースターを抜け、ようやく落ち着いたエリアにたどり着いた。
『階層分類:リラクゼーションゾーン(安全エリア)』
『危険度:極小/戦闘発生率:0%』
「おお……これ、完全に温泉フラグじゃん!」
ユナが嬉しそうに画面を見つめ、ルルは「どうせまた罠あるんでしょ」ってちょっと警戒モード。
でもその先に広がっていたのは、まぎれもなく湯気の立ちこめる温泉施設だった。
しかもかなり本格的な造りで、のれんや脱衣所、洗い場まで完備。
『混浴・男女別選択可』
『脱衣所ロック機能あり』
『衣装自動支給システム作動中』
「……最後のがちょっと気になるな」
俺がつぶやくと、ルルが不穏な目で『衣装自動支給』の文字を見つめた。
「……あたし、妙な予感するんだけど」
「フラグってやつだな」
「回収する前提で言わないでよ、御崎くん!」
かくして、俺たちはそれぞれの脱衣所へと向かうことになった。
湯気に包まれた温泉でしっかり汗を流し、俺はふぅと息をついた。
「……極楽って、こういうことを言うんだろうな」
のんびり湯船につかってリラックスしていたが、そろそろ出るかと脱衣所に戻る。
すると、そこには既に『新しい服』が用意されていた。
『システム衣装支給完了:ユーザー適正に基づき選定』
「適正って、なに基準なんだ……」
それはなんというか……。妙に身体にフィットしすぎる、ぴっちぴちのハーフアーマーみたいな服だった。
露出こそ少ないけど、無駄にライン強調で動くたびにやたら目立つ。
(まぁ、男だし別にいいか……)
そう思っていた矢先だった。女子側から悲鳴が響いた。
『ちょ、ちょっと!? なにこの服!? どこ隠す気なの!?』
『これ、絶対戦う用じゃないでしょ!?』
数分後、俺が出口前で合流を待っているとルルとユナが現れた。
……現れたのだが。
「お、お前らそれ……」
ルルはおへそ丸出しのホットパンツに、背中がざっくり開いたタンクトップ。
ユナはというと、肩紐が落ちそうなドレス風の戦闘服、しかもスリットが太もも上まで。
「見んなぁああああああ!!!」
「ちょ、目線! 目線固定して!!」
「……俺の服、地味でよかった」
心からそう思った瞬間だった。
そのまま俺たちは、迷宮の次のエリアへ向けて移動を開始した。
ふたりは歩くたびにブツブツ言いながら、自分の裾や肩を直してばかり。
「なぁ、これって本当に『戦闘用』なのか?」
「むしろ戦意削いでくるんだけど!」
するとスマホが再びピコンと鳴る。
『衣装支給理由:迷宮側の士気維持・精神的刺激を目的とした装備選定』
「……なるほど、迷宮が悪い」
「ぜったいに開発者の性癖でしょ、これ!」
そんなこんなで騒ぎながら進むと、次の階層の入口が現れた。
そこには奇妙なマークと、警告メッセージが表示されている。
『階層28:特殊領域/警戒レベル:中』
『推奨:精神防御強化・冷静な判断力』
「……なんか、嫌な予感しかしないんだけど」
「ねぇ御崎くん、さっきの《精神的刺激》って……」
「……この格好で、出会い頭にイベント戦とかやめてくれよな」
俺たちは肩をすくめながらも、次の階層へと歩を進めていった。
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