第26話 マップに残された『足跡』、それは俺のものだった
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俺は教室の中を、ゆっくりと歩いた。あの席。あの黒板。あの窓際。
全部、俺がここにいた証拠だ。
机の中にはノートがそのまま入っていた。開いてみると、途中でやめた絵の落書き。
「うわー……。これ、黒歴史……」
けど、どこかあったかい。
そのとき教卓の上にパッと光が集まり、懐かしい画面が浮かび上がった。
それは、旧アカウントのチャットログ。
──『Lulu_Astra:今日もマップ作りありがとね!』
──『Misaki_R:いいよー。こっちも楽しいし』
「ルル……」
表示されたログは、俺が昔プレイしていた迷宮ゲームの一部だった。
俺とルルは毎日のように遊んで話して、ふざけて。
でもある日、突然ログインが止まった。
『君は覚えてないかもしれない。でも、私は忘れなかったよ』
チャット画面の最後にそのメッセージが浮かんだ。
……なんで、こんなものが。こんなにリアルに、こんなに正確に。
俺は、目を閉じた。
昔の俺は、ただのゲーム仲間だと思ってた。
でも、彼女にとっては……違ったのかもしれない。
黒板に、もう一行だけメッセージが浮かんだ。
『だから今の私は、君と一緒にいられる』
その言葉が、胸にじんと染みた。俺がしたことなんて大したことじゃなかった。
ただ、ゲームで一緒に遊んで、マップを作っていただけ。
でも……それでも、誰かにとって『最初の一歩』になることがある。
俺の中で、何かが変わった気がした。
「よし……行くか」
そう呟いたとき、誰かの声が聞こえた。
『御崎くん! 聞こえる!? 戻ってきて!』
ユナの声だった。次いでルルの声も聞こえる。
『バカ……何勝手に迷い込んでんのよ! 帰ってきなさい!』
「……ああ、戻るよ」
教室の扉が、カラリと開いた。眩しい光が差し込み、俺は一歩、踏み出した。
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