第24話 殴って、斬って、叫んで、そして——
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真っ赤なマーカーが、こっちに向かって一直線に動いてる。
俺たちは広場の中央で構えてたけど、もうすぐ目視できそうだった。
「くるよ、御崎くん!」
ユナが拳を握りしめる。
「こっちはいつでも斬れるわ」
ルルは剣を抜き、構えをとった。
1歩、また1歩と近づいてくる気配。足音が、鉄の地面を叩くたびに空気が震える。
『警告:敵戦力、警戒基準を上回っています。連携行動を推奨します』
「お、おいマジかよ……」
画面に表示された敵のステータスが、えげつない。
デカい。4足の獣型かと思いきや、背中から槍のような枝が生えてる。
そして、顔は仮面のようにのっぺりとしていた。
「あれ……動き出したら止まらなさそうだな」
「でも、やるしかない!」
俺たちは武器を構え、正面から突っ込んでくる化け物を迎え撃つ準備をした。
「いっくよぉぉぉぉぉぉおお!!」
先陣を切ったのはルルだった。
スレンダーな体とは思えないほどのスピードで、獣の側面に切り込む。
刃が一閃。鋭い金属音とともに、枝のような槍が吹き飛んだ。
「ナイス、ルル!」
俺が叫んだ直後、ユナが右側から突進する。拳に緑の光が集まり、彼女の周囲がほんのりと熱を帯びた。
「これで終わりぃぃっ!」
ドゴォッ! という鈍い音とともに、ユナの拳から放たれた旋風が獣の胸を直撃する。
一瞬、獣の動きが止まった。
「……すご」
「ふふん。私、やればできるんだから!」
「ふたりとも、そのまま押し込んで!」
俺はマップを見ながら、彼女達の動きと敵の位置を把握する。
「敵の足元、今ちょうど罠エリアに入ってる!」
『システム:地形トラップ作動。対象の移動を2ターン拘束』
「今だ、集中攻撃!」
罠が解除された瞬間、獣がうなり声をあげて暴れ出した。
4本の足を大地に叩きつけて、ルルとユナを一気に弾き飛ばす。
「くっ……!」
「あたたた……。ちょっと、なにあれ強すぎ……」
俺の足がすくんだ。目の前に迫る巨大な敵。動けない。けど、このままじゃ……。
「御崎くん、下がって!」
ユナの声。でも俺はそこで足を止めなかった。
「俺だって……。できることやるって決めたんだ!」
スマホを構え、マップに表示された『光点』を確認。
かつてルルとプレイしていた迷宮ゲーム。その感覚が手の中に戻ってくる。
「あそこが、弱点だ……!」
俺はポーチの中から拾った探索ナイフを取り出して、一気に駆け出した。
獣の脇腹に滑り込み、マップで見た一点を狙って勢いのまま突き刺す!
「やあああああっっ!!!」
ずぶ、と嫌な感触とともにナイフが沈んだ。
獣が絶叫を上げてのたうちまわる。次の瞬間、ユナとルルが同時に追撃を加えた。
「今だ、御崎!」
「いっけえええっ!」
全員の攻撃が重なり獣が崩れ落ちた。
――静寂。
マップには、ただ『クリア』の文字が浮かんでいた。
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