表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮アプリが導く先は、ダンジョンの奥でだけチートな俺でした  作者: 秋月 爽良


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/33

第21話 塔の分岐と、うっかり踏んだら『トラップ芸術』

いつもご覧くださって本当にありがとうございます。

 塔の内部に足を踏み入れた瞬間、スマホの画面が自動的に切り替わる。

 表示されたのは、碁盤のようなマスで構成されたダンジョンマップ。

 俺の視界とリンクし、一歩踏み出すごとにマスが青く塗りつぶされていく。


『マップ更新:現在位置を記録中』

『周囲5マス分を自動検知します』


「……やっぱ、来たな。マッピング式の迷宮」


 俺はスマホを軽く傾けた。マップ上には白いマスと、探索済みの青いマスが広がっていく。


「これ……、歩いたとこだけ記録されるのか」

「わっ、こういうの、ちょっと燃えるかも!」


 ルルは嬉しそうにくるりと1回転する。


「まあ、マッピング系の迷宮って情報命だしね。あたしも嫌いじゃないよ」


 ユナも興味津々といった顔で、マップを覗き込んだ。


「こっち、3マス先で行き止まり。……でも、なにかあるっぽいな」


 マップにはうっすらと光の波のようなものが揺れている。


 一行は、慎重にそのマスへ向かって進んだ。問題の場所にたどり着いた瞬間、スマホが反応した。


『この場所には仕掛けがあります』

『調べますか? ▶はい/いいえ』


「うわ、ほんとに出た。選択肢……」

「罠か、ご褒美か……。運だな」

「迷宮って基本、優しくないよね? 大体『押したら爆発』とか、『踏んだら奈落』とかじゃん?」


 ルルが若干警戒した様子で一歩下がる。そのすきに、ユナがずいっと前に出た。


「なら、私が押す!」

「ちょっ、待てユナ!? 軽率すぎない!?」

「いいの! 私は直感派なの!」


 ポチッ。


 ユナがスマホの『はい』をタップした瞬間、足元の床がゴウンと音を立てて沈んだ。


「うわあああ!? やっぱりトラップかーい!!」


 足元の板がバネ仕掛けで跳ね上がり、派手に後方へ吹き飛ばされるユナ。

 ルルが爆笑しながら駆け寄った。


「ユナ、無事!? っていうか、すごい跳ねっぷりだったよ!」

「痛い……。でも、なんかスッキリした……!」


『罠を発動しました:ダメージなし』

『マップに《この場所は罠だった》と記録しました』


 俺は苦笑しながら、画面に新たに書き加えられた『赤いバツ印』を確認した。


「……罠は、選択肢を選ばないと分からないってことか」

「つまり、試してみないと正解も罠も見えない」

「うわ、これ思ったより手ごわいやつだ……」


 その後も、マップの各所で選択肢が出現する。


『祭壇に触れますか? ▶はい/いいえ』

『この宝箱を開けますか? ▶はい/いいえ』

『うっすら光る壁に手を当てますか? ▶はい/いいえ』


 押せばアイテムを得ることもあれば、またしてもトラップが炸裂することもある。

 マップには、そのすべてが記録されていく。


 スマホは、すでに20以上のマスを『探索済み』として塗りつぶしていた。

 ルートは複雑に枝分かれし、既にどこから来たのかも分からなくなりそうだった。


「御崎くん、これちょっと難しくない?」


 ルルが顔をしかめながら画面を覗き込む。マップには未踏ルートが左右に3本、上に1本伸びている。


「いや、分かる。探索は楽しいけど、脳がだんだん疲れてくる……!」


 ユナは両手をあげて伸びをしながら、大きな欠伸をひとつ。


「でもさ……なんか、こういうの久々で楽しいかも」


 その言葉に、俺は小さく笑った。


「うん。単純だけど、地道な歩みがちゃんと結果になるのって悪くないよな」


 そのとき、マップの右上に新たなマークが浮かんだ。


『強敵シンボルを検知しました』

『現在位置との距離:7マス』

『移動型:プレイヤーの行動に反応して接近します』


「……来たか。FOE系」


 指先でそのマスを拡大する。真紅の丸が、一定間隔でこちらに向かって動いている。


「これ……。『一歩動いたら一歩近づく』ってやつ?」

「そう。だからこっちの行動数で敵の移動も決まる。戦うか、避けるか、早めに決める必要がある」


 ルルの瞳が鋭くなった。


「私ああいうの、結構燃えるんだけど」

「燃えないで!? 逃げよう!? まだレベル低いって!」


 すばやく逃走ルートをマップに記録し、最短で下階層に抜けるルートを確保した。

 敵の影がマップのすぐ隣の列にまで迫ったとき――。


『この扉を通過しますか? ▶はい/いいえ』


 立ちはだかるのは、どこか不気味な鉄扉。


「押すか……」


 ためらわずに『はい』をタップした瞬間、扉が開き次の階層への階段が姿を現した。

 敵はマップの境界線で止まり、霧の中に静かに消えていった。階段を降りながら、ルルがぽつりと言った。


「蓮くん。なんか迷宮の扱い方慣れてきたね」

「ん……。まあ、マップって性格出るんだよ。地道に着実に。……それが一番安心する」


 ユナが横からひょっこり顔を出す。


「さすが、《地味さのプロ》!」

「……お前、そうやってからかうのやめないよな」

「ふふふ、安心するでしょ? こっちは《直感型の天才》なんだから」


 軽口を交わしながらも、次の階層の空気は張り詰めていた。

 階段を降りきった先、霧の中から再び選択肢が浮かび上がる。


『あなたの選択が、ここから先を決めます』

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや★評価をいただけると嬉しいです。今後の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ