親友が遊びに来て、私の部屋がお義兄様のお妃様の部屋だと初めて教えてくれて私は赤くなってしまいました
「聞いたわよ。エリ!」
私がすやすや寝ていたら、セッシーが私の部屋に入ってくるなり叫んで、ベッドに飛び乗ってくれた。
「ギャッ! 重い!」
私が上に乗ったセッシーに文句を言うと、
「何が重いよ。この天女よりも軽い私に向かってなんてこと言うの!」
セッシーが怒ってくれたが、
「と言うか、早く、私の上からどいて」
私の言葉にやっとセッシーは退いてくれた。
私は寝ぼけ眼で起き上がったのだ。
セッシーの後ろにいたアリスが、早速、着替えを手伝ってくれた。
「で、何を聞いたって?」
「学園の歓迎のパーテイーでいきなり、ガンダムとかいう国の王子が色目使ってきたんだって?」
「なによ、それ? 知らないわよ。それにそんな国あったかしら」
私が驚いて首をふると、
「カンダーだったかしら」
「それを言うならガンダーラでしょ。そこの王子に声はかけられたけれど、色目なんて使われていないわよ」
私が否定すると、
「本当に、あなたはそう言う事に疎いのね!」
セッシーが白い目で私を見てくれたんだけど……
「そんな事なかったわよね、アリス」
私がむっとして侍女に話をふると
「いえ、確かにガンダーラの王子がお嬢様にそう言う意味で声かけてきました。お嬢様は鈍いので気づかれませんでしたけど」
アリスがとんでもないことを言うんだけど。
「アリス、ガンダーラ王子は初めての帝国で心細かっただけではないの?」
私が再度聞くと
「そんな訳無いでしょう。王子はお嬢様の美貌に惹かれたのか、あろう事か弱小国の王子風情がお嬢様を呼び寄せたのですよ。セシール様」
「まあ、第一皇子殿下の婚約者のエリを呼び寄せたの?」
「そうです。そして、お嬢様の気を引こうと色々話しかけたんですけど、お嬢様は全然気づかなくて」
「えっ、そうなの?」
私は全然気づかなかった。それで近衛達の態度が厳しかったんだ。彼らは私を大切に守ってくれているから。
「もう本当にエリは鈍いんだから」
「お嬢様はそういう点は天然ですから。それで、その王子があろう事か遅れていらっしゃったレオンハルト様の前でお嬢様を庭に連れて行こうとしたのです」
「ええええ! じゃあ、レオンハルト様は激怒されたわよね」
「お義兄様は怒っていたけれど、そこまでじゃなかったわよ」
私が否定したら、
「いえ、あと少しでこの世から消滅するところでした」
アリスがとんでもないことを言ってくれるんだけど……
「その王子が必死に土下座して謝って許してもらったそうですよ」
「そうなんだ。良かったわね。その王国の民も。
だけど、本当にその王子も馬鹿よね。今話題の第一皇子殿下の婚約者の顔も覚えずにこの帝国に来たのかしら?」
「本当ですよね。側近の方々も何をしていらっしゃったのやら。王子を見るだけで、その国のレベルが分かりますわ」
セッシーとアリスがめちゃくちゃ落としてくれるんだけど……
そこにお茶の用意が出来たとライーサがやって来た。
「ちょっと、二人共、ライーサの前でその話題はやめて」
私の言葉に二人はやっとお義兄様が激怒して滅ぼされたマブリー王国の元王女で、私の侍女になったライーサが居ることに気付いたのだ。
「皆様。私に気遣いは無用です。父は私を見殺しにしたのです。殺されるところをエリーゼ様のお慈悲で助けていただいたのです。母まで助けて頂いて、エリーゼ様には感謝しかございません」
ライーサは首を振って言ってくれたけれど、ライーサの父親はお義兄様の攻撃前に瞬殺されたのだ。
いくらその父に見捨てられたとはいえ、思うところもあると思うのだ。
二人は思わず顔を見合わせて、少し大人しくなった。
「なんでも、新入生の中にはチエナからの留学生もいて、あなたに熱視線を浴びせていた者もいたとか」
性懲りもなく、セッシーが言ってくれた。
「何言っているのよ。私は地味なんだからそんな訳ないでしょ」
私は首を振ったが、
「そう思っているのは脳天気なあなたくらいよ」
「少なくともレオンハルト様はお嬢様のことをとても大切にしていらっしゃるんですから、お嬢様も男の人と話す時は注意してくださいね。その国がレオンハルト様の怒りを買ったら例えチエナといえども滅ぼされてしまいますから」
「さすがのお義兄様もチエナをすぐには滅ぼせないわよ」
私は首を振ったが、
「チエナがどうしたって?」
そこに扉が開いて、お義兄様がいきなり入ってきた。
「お義兄様、淑女の部屋に入る時はノックくらいしてよ」
「悪い悪い、ついいつもの癖で」
お義兄様が形だけ謝ってくれたが、いつも守ってくれたことはないのだ。私がむっとすると
「もう、お二人共、完全に新婚気分なんですね」
セッシーが頓珍漢なことを言ってくれるんだけど。
「いやあ、まだそう言うことはないんだが」
お義兄様が嬉しそうに言ってくれるんだけど、
「何言っているのよ。そんな事ないわよ。まだ結婚していないし、部屋も変わっていないし」
私がムッとして全否定した。
「何言っているのよ。エリ。あなた、昔からレオンハルト様のお妃様の部屋に居るじゃない」
「えっ?」
私はセッシーの言葉に絶句した。
お義兄様のお妃様の部屋って、この部屋が?
「えっ、エリって知らないでこの部屋使っていたの? レオンハルト様の部屋と中扉で繋がっているし、どう見ても、レオンハルト様の正妃様のお部屋なんだけど……」
「嘘!」
私は知らなかった。私は何も知らずに使っていたのだ。
お母様がお義父様と結婚してこの宮廷に引っ越す時に、確か、お義兄様の傍の部屋が良いとダダを捏ねて強引にこの部屋にした記憶があった。
そう言えば両親も反対していた。
お母様が「エリは私の部屋とつなぎの部屋にしましょう」
と言い出して、何故かお義父様が
「まあ、子供が言うことだからいずれ部屋を移せばいいだろう」
と賛成に回ったんだった。
皆、そういう理由で反対していたんだ。私はやっと判った。
「あなた、本当に今まで知らなかったの?」
セッシーが完全に呆れて聞いてくるんだけど……
「だって誰も教えてくれなかったもの」
私がムッとして言った。
考えたらお母様のお部屋もお父様の部屋と中扉でつながっていたし、前世で読んだラノベでも、貴族の夫婦の部屋ってこんな感じで中で繋がっていたんだった。
「お義兄様、なんで教えてくれなかったのよ」
私が文句を言うと
「いや、変な奴と婚約するのは俺も嫌だったし、エリなら、元々剣聖の娘だし、構わないかなと」
「えっ!」
私は固まってしまった。
私はお義兄様の邪魔をしてはいけないと一時期身をひこうとしていたのに、自分が将来のお義兄様のお后様の部屋を使って邪魔をしていたなんて……
私は信じられなかった。
「そう言う事は教えてよ」
私は真っ赤になっていた。だって、この部屋が良いということは私がお義兄様の婚約者になりたいって言っていたことになるじゃない!
私は穴があったら入りたかった。
「赤くなったエリもかわいいな」
そう言うと、お義兄様が私を抱きしめてくれたんだけど……
ちょっと待ってよ!
皆見てるし……
でも、皆に赤くなった顔を見られるのが嫌で、お義兄様の胸に顔を隠してしまったのだ。
「オヤジたちからは将来のことも考えてエリの部屋を移すようにお前から諭せと言われたけれど、俺はその時から別に婚約者はエリで問題ないと思っていたから」
そうさらりと言われて私はもう恥ずかしくて何も言えなかった。
ただただ、真っ赤になってお義兄様の腕の中で固まっているしかなかったのだ……
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