大国王女視点 帝国の皇子を好きになり、邪魔してくれた小娘を属国の嫁に出すことにしました
ついに新章開始です。
よろしくお願いします
私は北の大国チエナ王国の王女ホンファ。
お父様やお母さまから「蝶よ花よ」と可愛がられて育てられた。
私は美人で有名なお母様の血を受け継いで、小さい時からきれいだった!
そして、大きくなるにつれて更に美しさに磨きがかかったのだ!
私の美しさは国内外に知られ、チエナの至宝とか呼ばれていた。
男達はそんな私を見ると寄って来た。チエナ国内だけでなく周辺諸国でも男は本当に選り取り見取りだった。
そんな中、私は母に言われて帝国に留学することになった。
わがチエナは古代文明発祥の地で五千年の歴史があると言われている。
多くの技術や魔術は我が国を発祥としているのだ。
我が国は文明先進国。
そう、世界は我が国を中心に回っているのだ。
そんな我が国の南に蛮族の作った帝国があった。
力が全てだと何事も暴力で解決するような野蛮な国だ。
その帝国が急激に力をつけてここ数十年、我が国と国境を接するようになっていたのだ。
そんな中、母が私に命じた。
「あなたの美しさをもって帝国の皇子の心を奪うのよ」
と。
私は野蛮な帝国などに行きたくなかったが、母の命ならば仕方がなかった。
その世界最大の版図をもつ帝国の皇后に私がなるのも良かろうと思って帝国に行ったのだ。
しかし、どれだけ野蛮人がいるのかと戦々恐々として帝国に行ったのだが、帝国は普通の人間の国だった。
まあ、帝国は野蛮な国と言うだけあって、数学とか物理とか下賤な商人が好きそうな科目が幅を効かせていた。チエナのように、昔の詩歌や文学など昔からの教養科目が蔑ろにされていた。
そんな国に仕方がなく留学した私だったが、入学式で同級生の帝国の第一皇子、レオンハルト様を見て驚いた。
レオンハルト様はとても凛々しい姿かたちでなおかつ、とても引き締まった体をしている。
チエナにはいない武闘派の貴公子だった。
そんな彼を見て私はひと目で恋に落ちたのだった。
野蛮国にこれほどの美形がいるとは想像だにしていなかった。
そのレオンハルト様に私達女はみんなで群がったのだ。
当然その中でも美しさでは私が一番だったが、さすが帝国は人口が多いだけに女生徒達も結構美人が揃っていて倍率は高そうだった。
まあ、私は負ける気はしなかったが……
何しろ私は大国チエナの王女なのだ。帝国の下位貴族などに負けるわけはなかった。
高位貴族は公爵令嬢と外務卿の娘しかいない。
その3人の中では私が一番の美人だ。
しかし、そんな私の思惑とは別に、なんとレオンハルト様は私達から逃げるようにして去っていったのだ。
なぜだ?
普通はこれだけの美人に囲まれると鼻の下を伸ばして喜ぶものなのに……
入学式の後や翌朝、レオンハルト様の周りに集まった私達は尽く避けられた。
レオンハルト様はそれからも私達女性陣から避けるように男子生徒達と一緒にいることが多くなったのだ。
私は他の女どもを蹴散らしてレオンハルト様に近付こうとしたが、なかなかうまくいかなかった。
我が国の外務を使って視察という名のデートに誘ってもなかなかうんと頷いてくれないのだ。
私ほどの美人は帝都をくまなく探してもなかなかいないのに、何故だ?
『氷のレオンハルト様』女たちに塩対応なレオンハルト様はみんなにそう呼ばれるようになった。
でも、その女に対する、氷漬けの塩対応のレオンハルト様のイメージが学園祭の時に崩れ去ったのだ。
「お義兄様!」
そこに現れた一人の小娘の出現によって。
その小娘は本当にガキだった。年も調べた所10歳だ。我々と6歳も違う。
どう見てもガキだ。私みたいに胸が出ているわけでもない。まだ、全然発育していないのだ。
たしかに10歳にしては可愛かったが、それだけだ。
抱きついてきたそのガキをレオンハルト様が邪険にするかと思ったのに、なんとレオンハルト様はその小娘を抱きしめられたのだ。
私達は唖然とした。
あの女に対して見たら逃げようとするレオンハルト様がその少女を抱きしめたのだ。
それも満面の笑みを浮かべて。
なおかつ、抱き上げたんだけど……
嘘ーーーー!
私には信じられなかった。
すわロリコンか?
私は思ったが、
「ふん、後妻の連れ子だそうですわ。レオンハルト様も子供には甘いですね」
けばけばしい、外務卿の娘のアガットが馬鹿にしたように言ってくれた。
確かにその小娘は本当に子供だった。
到底レオンハルト様に相応しいとは思えなかった。
「ねえ、お義兄様。次はあちらに行きたい」
「ああ良いぞ」
レオンハルト様はその小娘の我儘に付き合って次々に案内していく。
私達の唖然としている視線を全く無視してだ。
恋人に接すると言うよりはどちらかと言うと本当の妹に接するみたいだ。
まあ、この小娘は無視してもいいだろう。
私達は頷きあったのだ。
小さい子が可愛いのかと思って、クラスの他の女性徒がクラスに妹を連れてきたりしたが、レオンハルト様は全く興味を示さなかった。
一度、ブラント侯爵家のエドモンが妹のセシールを連れてきた時に、
「よお、セッシー、元気にしていたか?」
レオンハルト様が声を掛けたので、やはりロリコンかと私は思ったのだが、
「はい。エリーは元気にしていますか?」
「ああ、相変わらず元気にしているぞ」
どうやら、セッシーとやらはあの小娘の友達らしかった。
やっぱりレオンハルト様はどちらかと言うとシスコンらしい。
まあ、でも、妹に優しいだけなら、問題はない。
妹などさっさと嫁がせればいいだけだから。
私はそう、思っていたのだ。
しかしだ。静かにしていればそのままにしておこうと思ったのに、この小娘、私達の卒業パーティーでやってくれたのだ。
卒業パーティーはレオンハルト様と最後に踊れるチャンスだ。
私は教室でも、外交ルートも使ってパートナーになろうとしたのだが、なんとレオンハルト様は12歳になったその小娘をパートナーにするというのだ。
12歳の小娘を卒業パーティーのパートナーにするなんて聞いたことはない。
まあ、公爵令嬢や外務卿の娘に先を越されるよりはましだったが……。
私は二番目にレオンハルト様と踊ってもらおうと必死になったのだ。
そして、当日を迎えた。小娘は白い衣装に身を包んでいて、見た目は可愛い子供だった。
「まあ、エリーゼさんも、まだ、お子さまですのに、レオンハルト様に付き合わされて、大変ね」
私は小娘を労ってやったのだ。
なのにだ。小娘はきっとして、私を睨みつけてくれたのだ。
たかだか側室の連れ子のくせに、この大チエナ王国の王女の私を睨みつけてくれたのだ。
「お義兄様、私、ケーキが食べたい」
そう言うと、強引にレオンハルト様を連れて、ケーキの積んである一角にまで、連れて行って、ケーキを凄まじい勢いで食べ出したのだ。
やることがお子様ね、私はムッとしたことが馬鹿らしくなったが、
なんと小娘はレオンハルト様にケーキを食べさせ始めたのだ。
あ、あの小娘、何をしてくれるのよ!
「お義兄様、クリームがついているわ」
そう言って、レオンハルト様の口周りをハンカチで拭いて、甲斐甲斐しく世話をしてくれたのだ。
そして、勝ち誇ったように私を見てくれた。
そして、あろうことか踊る前にレオンハルト様が小娘のおでこにチュッとキスしてくれたのだ。
私は怒りのあまり、握りしめた手が震えていた。
その上、あろうことか小娘は、レオンハルト様と3回も踊ってくれたのだ。
次に踊ろうと待ち構えていた私達はとんだ恥さらしだった。
絶対にあの小娘に泣きを入れさせてやると私は心に決めたのだ。
私は国に帰るなり、帝国の外務卿の娘と組んで、周辺の属国の老王の後妻や、短気で難有りと思われる暴力王、チエナの下位貴族の子爵家や男爵家に命じて大量の釣書を帝国の小娘宛に送らせたのだ。
数打ちゃ当たる。大量の物量作戦で、なんとしてもあの小娘をレオンハルト様の側からいなくならせるようにしようとした。
その生意気な小娘が帝国の属国の婚約者に決まったと聞いた時は私は小躍りした。
ざまあみろ、小娘め。これで邪魔者はいなくなったと私は清々したのだった
ここまで読んで頂いて有難うございます
不定期更新ですが、頑張って更新して行こうと思います
ついに大国チエナが動き出します








