お義兄様視点 外務卿が暗躍してくれました
「な、なんだと!」
俺はミシェルの報告を聞いて、怒り狂っていた。
「エリにまた、婚約者をあてがうだと! それも、北の小国ラペルズ国王の後妻にするだ! 俺は絶対に許さんぞ!」
俺の怒り声と共に、室内が震えた。
「おい、レオン、落ち着け」
トマスが慌てて、声をかけてくるが、
「これが落ち着いていられるか!」
俺が叫んでいた。
「殿下、大丈夫ですか?」
俺の大声に驚いたのか、外にいた部下達が慌てて駆け込んできた。
外で見張りをしていた奴らも、窓から覗いてくるし、さすがの俺も少し、冷静になった。
目の前ではミシェルが固まっていた。
「いや、すまん。ミシェル、ちょっと切れてしまった」
「本当にレオンはエリーゼちゃんの事となると見境がなくなるからな」
トマスが呆れて言ってくれた。一応フォローしてくれたつもりなんだろう。
「いや、本当に、よく知らせてくれた」
俺はエリの友人のミシェルに感謝した。
こいつを外務に入れて本当に正解だった。まさか、外務の奴らがあれだけ俺が釘を刺したにも関わらず、こんな卑劣な手段を取ってくるとは思ってもいなかった。ミシェルが教えてくれなかったら大変なことになるところだった。俺はホッとした。
エリの友人は平民が多かったがとても優秀だった。それを帝国移住希望者には、各部署に配置したのだ。俺の名前を出すと、警戒されるかも知れなかったので、外務はあのサンタルの大使を使って、潜り込ませた。あの大使はあの一件以降、俺に従順だった。このまま、従順に仕事をこなしたら、もっと要職につかせてやろうか、と俺も考え出したところだ。
それにしても、おのれ、外務卿、俺の意思をここまで蔑ろにしてくれるとは、絶対に許さん! 外務の他の奴らもだ。俺の意向が、エリにあるのを知っていながら、このようなことを画策するとは、俺は許せなかった。
こうなったら、北極か南極にでも、外交事務所を開設して、送り込んでやろうか!
俺は真面目に考え出した。
「それで、どのような計画なのだ」
俺はミシェルに話の続きを促した。
「はい、奴らは、あ、申し訳ありません」
「いや、良い。奴らはどうしたのだ?」
「エリーゼ様を小太りのあの国王と一緒にボートに乗せてボートを転覆させて、濡れた衣装を乾かすという名目で別室に連れ込んで国王と既成事実をつく……」
「な、なんだと! 既成事実を作るだと?」
パリンッ
俺は手にあったグラスを握りつぶしていた。
手が血まみれになるが構ったものではなかった。
「も、申し訳ありません」
ミシェルがあわてて、頭を下げて来た。
「ミシェル、レオンの前ではエリーゼちゃんの話をする時は、もう少し、オブラートに包め」
トマスが注意していた。
何でも、知り合いのミシェルを使って、エリを呼び出して、ラペルズ国王と会わせて、何とかしてボートで漕ぎ出させて、そのボートを転覆させてエリを水浸しにして、着替えるという名目のもと密室で二人きりにして、エリをその国王が襲う計画らしい。
ラペルズ王国はどうやら滅ぼす必要があるらしい。
また、マルクスが仕事が増えたと文句を言うかもしれないが、それは仕方がなかろう。
「あのう、レオンハルト様。その事なんですが、実は、ラペルズ国王はエリーゼ様には興味が無くて、アガット侯爵令嬢に興味を持っているみたいで」
「それが、どうかしたのか?」
俺は氷の視線をミシェルにした。
「奴らがエリーゼ様に立てた計画を、アガット侯爵令嬢に変更すれば面白いかなと思いまして」
「ん? ラペルズ王国を滅ぼさずにか」
「はい、今回の件は元々アガット侯爵令嬢が計画したことです。それに、侯爵令嬢はラペルズ国王を嫌っているのです。レオンハルト様にも良い厄介払いになるかなと思うのですが」
「そうだな」
俺は考えた。
アガット親子にはこの前も釘を刺したにもかかわらず、このようなことをしてくれた。本来ならば一生涯、地下牢に入れても良いのだ。
まあ、しかし、そんな事をすればまた、エリが悲しむかもしれない。
アガットがラペルズ国王を嫌っているならば、それとくっつける事は、奴らにとって罰になるだろう。王妃にしてやるのだから、恨まれる筋合いもない。
「よし、それでいこう。そうすれば、このようなことを画策したアガットにも、侯爵にも仕返しが出来るか」
俺は俄然やる気になった。
まあ、ラペルズ王国などいつでも滅ぼせる。ここは国王に恩を売っても良かろう。俺は直ちに、ミシェル等と計画を練ったのだ。
そして、我々が、ラペルズの外務卿を味方に引きずり込んで、計画を画策した。
ラペルズ国王と、アガットを同じボートに乗せるの迄は上手くいった。後は、ボートをひっくり返すだけになった時だ。
何故か、エリがボートに乗って突っ込んで来たのだ。
日頃の怨みとばかりに盛大な水音をたてて、エリは二人を弾き飛ばしたのだ。
「おい、どうするんだ?」
「どうするもこうするも計画通りだ」
直ちに騎士達が飛び込んだのだが、アガットの派手なケバケバ衣装が水を吸って重くなり、中々上に上がらなくなったのだ。
泳ぎの得意な国王は、アガットの衣装を切りさいて、何とか、水面に浮かび上がってきたのだ。
水を飲んで気絶していたアガットを国王が口移しで蘇生をしていた。
これはもう完全に既成事実だ。それも俺の配下の多くの騎士がそれを見ていたのだ。
気がついたアガットが慌てたが、裸を見られて、口移しで蘇生まで受けたのだ。
もうどうしようもなかった。
侯爵は必死に無かったことにしようとしたが、第一皇子の俺が見ていたのだ。
無かったことには出来なかった。
アガットは泣く泣くラペルズ王国に嫁ぐ事になったのだった
ここまで読んで頂いて有難うございました
あと少しで完結です。
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