ボートの練習していたら貴人のボートにぶつかって相手を湖の中に放りだしてしまいました
「こうだっけ」
私はオールを少し動かしてみた。
でも、全然動かないのだ。
「何やっているのよ。オールはこうやって大きく動かすのよ」
セッシーが隣でやり方を見せてくれた。セッシーのボートが進んでいった。
私は昔はよくセッシーの家に遊びに来て、ボートを漕いでいたんだけど、一度湖に落ちて溺れそうになってから漕いでいなかったのだ。
あの時は本当に溺れ死するかと思った。
あの時は丁度お義兄様がいなくて、セドリックとアリスが必死になって私を助けあげてくれたのだ。
あの時は本当に大変だった。二人がかりでないと私を湖の上に引き上げることが出来なかったのだ。
本当にあと少しで溺れ死ぬところだった。
それ以来、考えたらボートは漕いでいなかった。
私は、あの時に初めてお義兄様のいない所で危険なことをしてはいけないと心から理解できたのだ。
お義兄様は私がたとえボートから落ちても即座に拾い上げてくれたし、魔物にちょっかいかけても、則座に退治してくれたし、お義兄様といる限り危険はなかったのだ。
お義兄様がボートでも漕ぐかと今回言ってくれたんだけど、考えたらしばらく漕いでいなかったので、今日は下見を兼ねて来てみた。
それに、いつまでもお義兄様におんぶにだっこではいけないと今日はそのまま、セッシーの指導の元、練習することにしたのだ。
最も私の体には救命胴衣が巻き付けてあったし、非常用の魔道具も持っていた。
万全の体制で挑んでいた。
そこまで万全の体制で準備して、私は一人用のボートに乗り込んで漕ぎ出したんだけど、中々前に進まない。
「エリー、何しているのよ。ほら、こうやって漕ぐのよ」
セッシーが楽しそうに漕いでくれるんだけど、
「えっ、でも真似しているのに、全然前に進まないわよ」
私が文句を言うと、
「だから言っているじゃない。ボートはレオンハルト様と乗るんでしょ。レオンハルト様に漕いでもらったら良いじゃない? あなたが漕げなくても何も問題ないわよ」
セッシーが言ってくれるんだけど、
「そういうわけにはいかないわよ」
私はいつまでもお義兄様におんぶに抱っこではいけないのだ。
「そうかな。レオンハルト様は頼られる方が絶対に喜ぶって!」
「だって、そんなことしてたらお義兄様は、私にかかりっきりになるじゃない。また、お義兄様の親衛隊から愚痴愚痴文句を言われるのよ」
私の言葉に
「親衛隊って、近衛騎士の連中は文句は言わないと思うわよ」
「そうじゃなくて、お義兄様狙いの女の子たちのことよ」
「ああ、あんたの言うファッションお化けたちの事ね。彼女らは別にどうでも良いんじゃないかな」
セッシーはそう言ってくれるけど、帝国の未来にとってそれは良くないだろう。
そうか、セッシーは自分の子供に帝国を継がせたいんだろうか?
確かに、このままお義兄様もローレンツお義兄様も結婚しなかったら、必然的にセッシーとマルクスお義兄様の子供が継ぐことになるのだ。
私はまじまじとセッシーを見た。
「エリー、あんた、また、どうせ碌でもない事を考えているでしょ」
セッシーに聞かれたけど、帝国を誰が継ぐのかは碌でもない事ではないだろう。
私がその旨を言うと
「はああああ」
セッシーに盛大に溜息をつかれてしまった。
「何言っているのよ。あんたとレオンハルト様の子供がこの帝国を継ぐのは決定しているのよ」
「えっ、お義兄様の子供が継ぐのは決まっているけれど、私の子供は関係ないじゃない」
私がそう言うとセッシーは頭を抱えてしまったんだけど……何で?
「あんたと話していると本当に疲れるわ。レオンハルト様が可哀想」
「ちょっとセッシー、あんたに疲れるなんて言われたくないわよ。私のほうが絶対に常識人なんだから」
「勝手に言っていれば」
そう言うと、セッシーは私を置いて漕ぎ出したんだけど
「ちょっとセッシー、待ってったら」
セッシーが置いていきそうになったので、私も必死に漕ぎ出したのだ。
必死になって漕ぎ出したら、昔漕いでいたことを体も思い出したみたいで、何とかスピードがつき出した。
「エリー、やれば出来るじゃない」
私はセッシーに言われて更に調子づいたのだ。
私の漕いでいく先に誰かのボートがあるなんて思ってもいなかったのだ。
「おい、危ない」
私は手前にいた護衛らしき者の声を聞いて、慌ててボートを止めようとしたのだ。
なんかボートに乗っている人は高価な衣装を着ているでっぷりと太った人で、なんとその前にはファッションお化けが乗っていたのだ。
ええええ! なんでファッションお化けがいるのよ!
私は悲鳴をあげそうになった。
その周りに騎士と思しき人も必死に漕いで、私のボートとそのボートの間に入って私のボートを止めようとしたのだが、勢いがついた私のボートはそれをすり抜けてしまったのだ。
そのままファッションお化けと偉い人の乗ったボートに真横から激突して、二人を湖の中に放りだしてしまったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ファッションお化けとエリーゼが呼ぶアガット・カルディ侯爵令嬢と一緒に乗っていた偉い人は誰なのか?
続きは明朝です。
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