サンタル国から来た三人と親友とで演劇で寝てしまった私を呆れてくれました
「何ですって! あの、『ナディ』様の傑作の『マルクとシール』で、寝てしまったですって」
私はセッシーに責められていたのだ。
「どうやったらあの演劇で寝れるのよ」
セッシーは何故かとても怒っていた。
変だ。普通はセッシーもだるいとか言って寝ていそうなのに。
そもそもあの演劇の題名が『マルクとシール』だなんて知らなかった。『マルクとシール』ってどこかで聞いた事がある名前だと思いながらセッシーに聞いていた。
「えっ、セッシー、あの演劇で寝なかったの?」
「寝れるわけないでしょ。だって『マルクとシール』ってまるでマルクス様と私みたいじゃない」
セッシーが言ってくれた。
ん、そう言えばそうだ。マルクはマルクスお義兄様でシールはセシールとそっくり、ちょっと待って、それってどこかで聞いたことあったのよね。
私が話し出そうとした時だ。
「お嬢様、サンタルの時のお友達のマガリー様が、シャロット様とナディ様を連れていらっしゃいましたけれど、いかがいたしますか」
部屋に入ってきたアリスが聞いて来た。
「えっ、あの子ら来たんだ! セッシーしかいないし通して良いわ」
「ちょっと、何よ。そのついでみたいな言い方、酷くない?」
何かセッシーが怒っているんだけど
「あなたは私の親友だから、私のサンタルの時の友達を紹介するわ」
シャロットの家は商会をしていて、セッシーを紹介したら喜ぶだろうと思ったのだ。
「うーん、何かついでみたいなのが許せないんですけど」
まだ、セッシーはぶつぶつ言っていた。
「エリーゼ様、お久しぶりでございます」
案内されて入って来たシャロット達はとても他人行儀だった。
「シャロット、元気にしていた」
私は関係なく、シャロットに抱きついたのだ。
「えっ、いや」
シャロットがまごついた。
「ナディも元気にしていた」
私はナディにも抱きついたのだ。
「は、はい」
「何、よそよそしいのよ」
「だって、私達、サンタルの王宮すら入ったこと無かったのにいきなり帝国の宮殿で、その大きさに驚いてしまって」
シャロットがおずおず言って来た。
「ま、大きいのは大きいけれど、そんなに堅苦しくはないはずよ。礼儀作法に煩いのはサンタルの方が大変だったのよ」
「えっ、あんな辺境の国なのに」
シャロットが自分の国を貶めて言ってくれるんだけど
「だってサンタルの方が歴史はあったから」
「で、エリー、いい加減に紹介してほしいんだけど」
後ろから少し不機嫌そうなセッシーが顔を出した。
「ああ、みんな、彼女はセシール・ブラント私の親友なの」
私が言うと
「ブラント侯爵令嬢様」
何故かシャロット達が固まってしまったんだけど。
「そんな固まることないわよ。セッシーはとても気さくなんだから」
私はそう言うと、
「セッシー、マガリーはこの前の夜会の時に少し紹介したわよね。こちらがシャロット・ランダル、お父様が商会をやっているわ。そして、横がナディ・イーグランド」
「ええええ! あなた、ナディ・イーグランド様よね」
私は順番に紹介していたのだけど、ナディの所でセッシーは叫びだしたのだ。
「そう紹介したけど?」
「違うわよ。作家のナディ・イーグランド先生よね」
「はい、物は書いておりますが」
「キャーーーー、こんなところでお会いできるなんて光栄です」
いきなり、セッシーが飛びつきそうな勢いで、ナディの前に飛んで行ったのだ。
そう言えば、ナディは小説を書くのが好きで今までいろいろ書いていたらしい。私達のクラスの演劇の脚本も結構好評だったので、私達はお店をやる傍ら、何冊か本として出版して、シャロットの紹介経由して売り出したりもしていたのだ。
そう言えば、セッシーの所にも送った記憶があった。
セッシーが読んでいるなんて思ってもいなかったけれど……
「何言っているのよ。だって本の題名が『マルクとシール』で、マルクス様と私みたいだったから。マルク様は王族でシールは庶民の娘で二人は親の命令で離れ離れになるんだけど、マルク様が刺客に襲われた時に、シールがさっそうと現れて刺客どもを叩きのめして二人は結ばれるのよ。シールって本当に私みたいで感激したのよ」
セッシーが言ってくれた。
「ご、ごめんなさい。セシール様の事はエリーからよく聞いていて」
「という事はこの本のヒロインって私なのね」
「申し訳ありません」
慌てて、ナディが謝ったけれど、
「全然問題ないわ。あの本、大好評なのよ。私の家で後援している劇団の支配人にも見せたら、是非とも演劇で公演したいっていって、あなたが見た演劇はそれなのよ」
「ええええ! あれってセッシーとマルクスお義兄様だったの?」
私は全然気付かなかった。
だって、セッシーがめちゃくちゃ貴族の清楚なお嬢様って感じでぜんぜん似ていなかったのだ。
それに、二人してなんか延々大仰に話しているし、飾り言葉を一杯使っているから何言っているか全然判らなかった。
「ええええ! あの演劇でエリー、寝たんですか?」
「さすがエリーね」
「信じられない」
3人には白い目で見られるんだけど。
「エリーはお子ちゃまだから。あの演劇の良さがわからないのよ」
「本当ですね」
「まあ、昔からですから」
「レオンハルト様も大変ですよね」
なんか皆好き勝手なことを言ってくれるんだけど……
「だって、セッシーはあんなおしとやかな令嬢じゃないわよ」
私の反論の言葉は全く無視されてしまったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
一応今週末で完結の予定です。
続きは今夜。
お義兄様の思いは果たしてエリーゼに伝わるのか








