お義兄様視点 布団の中でエリを抱きしめて寝てしまいました
扉を蹴破ったレッドと共に俺は大聖堂の中に飛び込んだ。
中はきれいなステンドグラスが衝撃で一部が割れて中に飛び散っていたが、そんなものは知ったことでは無かった。
「き、貴様」
「な、何奴だ」
教会騎士達がわらわら出て来たが、
「で、殿下」
俺を見て戸惑っていた。
俺に続いて外にいた俺の騎士達も入って来た。
トマスもいる。
「何事ですか? このような狼藉をして。殿下と言えども許されませんぞ」
そしてこの大聖堂の大司教のトーマス・シュナイダーが出て来た。
俺はこの偉そうなトーマスが大嫌いだった。
「それは俺のセリフだ。トーマス。貴様、我が帝国の剣聖の娘、エリーゼをこの教会に誘拐したそうだな」
俺はトーマスを睨みつけたのだ。
「な、何を根拠にそのような事をおっしゃるのですか?」
「このレッドが教えてくれたのだ」
「馬が? 何をたわごとをおっしゃっているのです」
馬鹿にしたようにトーマスが言うが、
「レッドは神馬だ。それも千里をかけると言われる赤兎馬だ。その魔力探知も優れている。この敷地内にエリーゼがいるのは明白だ」
俺は言いきった。
「何をおっしゃる。そもそも教会内は帝国軍と言えども、捜査権は無いはず」
「何を申しているのだ。そのようなたわごとは俺が知らん」
俺はトーマスを睨みつけた。そのような事などエリの為に俺が気にするわけは無いだろう。
「な、何ですと。教皇猊下と皇帝陛下の間で不介入の話が付いているはずです」
「ふんっ、戦時下においては俺は父より全権をもらっている。
ええい、騎士共直ちにこの大聖堂内の端から端まですべてを調べろ。この帝国第一皇子レオンハルト・ロアールが許す」
俺は騎士達に命じた。ついでに教会の悪事を暴くのも良かろう。
「な、何ですと。そのような事許しませんぞ」
「構わん。やれ。抵抗するものは拘束しろ」
俺の命に一軍の連中は即座に行動を開始した。
それに慌てて11軍の連中も追従する。
「殿下。これは、由々しき事態ですぞ。教会として陛下に抗議します」
「勝手にしろ。レッド、エリはどこにいる?」
俺の言葉にレッドは鼻息荒く、トーマスの後ろの扉を睨みつけていた。
「あそこか、行け!」
トーマス目掛けけてレッドが駆けだした。
「な、何を」
慌ててトーマスが飛びのいた。この動き、ただ者ではない。こいつがAAAの手の者であるのは判った。
そのまま、レッドは扉を蹴破ると、地下室への入り口だったみたいで神馬の攻撃前に床全体が抜け落ちていた。
そして、落ちた先で俺はセリーヌに襟首をつかまれたエリを見つけたのだ。
「そこのあばずれババア! 俺のエリに何を手をしている」
「ヒィィィぃ」
俺の声に思わず、セリーヌはエリを掴んでいた手を離して後ろにへたり込んでいた。
エリがそのまま地面に激突しそうになったので、慌てた俺がレッドから飛び降りたが、俺の手よりも先に起き上がったトーマスがエリを掴んでいた。
「動くな、レオンハルト殿下、何をしてくれるのです。この大聖堂をここまで壊してくれるとは! 教会には帝国は不介入のはず」
「ふんっ、よく言うな、トーマス! 貴様は俺の義妹はいないと言ったが、エリがいたではないか! それも後ろ手に縛られている。これはどういう事だ」
俺は怒り狂っていた。
「何を言う。それ以前に教会は不可侵の領域、それに対して勝手に入り込んだのはその方ではないか!」
「教会が不可侵の領域? 何をふざけたことを言っているのだ。それは教会の人間が質素倹約に励み、皆の者に奉仕している場合のみだ。
貴様らはあろうことか、民を下に見下し、今回は我が義妹の誘拐を図った。これは重罪だ。それも帝都の教会のトップがそれに加担しているとは。貴様がAAAのトップだったのだな、トーマス・シュナイダー」
「ふん、今頃気づいたのか。でも遅かったな」
トーマスが笑ってくれたのだ。
「ふん、自らでてくるとは貴様も馬鹿だな。俺はそのような奴は許さん。」
そう言うと俺は剣を引き抜いたのだ。
「動くな。動くとこの娘の命はないぞ」
トーマスは俺のエリにあろう事か剣をつけつけてくれたのだ。
許さない!
エリに障壁を張って、一撃すれば良かろう。多少の犠牲はやむをえまい。
俺がやろうとした時だ。
「お義兄様、ここは落ち着いてね」
エリが邪魔してくれた。こいつはいつもそうだ。極端に民の犠牲を気にする。でも、そんな事を言っている場合か!
「小娘、勝手に話すな。それよりも自分の心配をしたらどうなのだ」
そうだ。その通りだ。俺は違う意味でトーマスに同意したのだ。こんな奴一撃だ。
「お義兄様。私は大丈夫ですから。このトーマスとセリーヌは好きにしていいですから帝都を破壊することだけは止めて……」
「貴様、何を言出だすのだ。殺されたいのか」
トーマスはナイフをエリに突きつけやがったのだ。エリ、俺のエリから血が。
「エリ!」
俺はもう我慢できなかった。
「ふん、恐竜皇子のアキレス腱がなんとこんな貧相な女だったとはな。この女、貴様の眼の前でずたずたに切り裂いてやろうか」
トーマスが何かいまわの言葉をほざいている。
「あなた、馬鹿なの? お義兄様がそんなの許すわけ無いでしょ。やろうとした瞬間にあなたこの世から消えるわよ」
「煩い、黙らないと本当にやるぞ」
エリが俺にウィンクをしたのだ。
「えっ」
エリは何をやる気だ? エリがウィンクをするときなんて碌な事が無いのだ。
しかし、なんと、エリはバックキックでトーマスの股間を蹴り上げてくれたのだ。
「ギャーーーー」
叫んで股間を押さえて悶絶するトーマスに俺様の渾身のアッパーが炸裂したのだ。
トーマスは壁に突き刺さっていた。
本来燃やしたかったが、まあこれで再起不能だろう。
「エリ、大丈夫か!」
「お義兄様」
俺はエリを抱きしめたのだ。
その後、後ろ手に縛られたエリを解放しようとしているうちに俺は疲れがピークに来て寝てしまったらしい。
気付いたら俺の枕もとでエリが突っ伏して寝ていた。
その寝顔がとても可愛かった。
俺はそのままではエリの姿勢が苦しかろうと布団の中に入れてやったのだ。
そうしたら
「お義兄様」
と寝言を言いながらエリが俺にしがみついて来てくれたのだ。
俺はそんなエリをギュッと抱きしめた。
昔と一緒でエリは本当に暖かかった。
俺はやっとエリが俺の元に戻ってきたことを実感した。
俺はとても幸せだった。
そして、疲れ切っていた俺はそのままエリを抱きしめたまま寝てしまったのだ
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