宮廷舞踏会の最初にお義兄様にキスされて抗議しようとしたら強引に踊らされました
えっ、ええええ! お義兄様と、お義兄様とキスしている!
私の頭の中は一瞬、真っ白になった。
そ、それも、私のファーストキスなんだけど……
ええええ! 嘘!
私は何が何だか判らなかった……
「キャーー!」
「ええええ!」
「嘘!」
「レオンハルト様が……」
「レオンハルト様がキスされている!」
黄色い悲鳴が会場内に響き渡ったのだ。
皆、茫然として私達を見ていた。
もっとも、私自身も何が何だかわからなくて、唖然としていた。
それは本当に一瞬の事だった。
でも、私の唇にお義兄様の唇が触れたのだ! 私の唇にはお義兄様の唇の感触が残っていた。
な、何故、お義兄様がキスなんて私にしたの?
私の頭は完全にパニクっていた。
そして、真っ赤になったのだ。
欧米において、兄妹間で親愛のキスがあるのは前世では映画とかで見た事があるけれど、この世界でもそうなのだろうか? いや、絶対にそうに違いない!
私は無理やりそう思おうとしたのだ。
セッシーが両手を胸元に持ってきて、なんか喜んでこちらをみているんだけど……
アガットは驚きのあまり固まっているし、モイーズは涙目になっている……
「さあ、エリ、父上が呼んでいる」
お義兄様はそう言って私に微笑むと私の手を引いて歩きだしてくれたのだ。
いつもの優しいお義兄様だった。
全く私にキスなんてしなかったように振る舞って! でも私の頭はパニクっていた……
私はお義兄様に手を引かれて歩いている幼子みたいな感じだ!
私は動揺を隠すためにそう思おうとした。
何かみんなの視線が、特に令嬢達の視線が凍てつくように冷たい!
それとは別の視線はとても生暖かいんだけど……
皆の注目を浴びて、私は屠殺場の引かれて歩いている牛みたいな感じだった。
「おお、エリーゼ! 待っておったぞ!
一緒に入場しようと申したのに、さっさと行きおってからに!」
お義父様が会うなり文句を言って来た。
でも、それは無理! だって、私は王族ではないのだ。一緒に会場に入れるわけは無いじゃない!
「それと、レオンハルト、今のは何だ、今のは!」
お義父様がお義兄様に怒っていた。
やはり今のキスは絶対に変だよね!
親愛のキスなんて誰にもされた事は無いし、見たこともなかったのだ!
「何を言っているんです。父上。親愛のキスですよ」
しかし、お義兄様はそう言って笑ってくれたのだ。
えっ? やっぱり、あれって親愛のキスだったんだ。
この世界にも親愛のキスがあるの?
なら何も問題は無い?
私はホッとした。
「俺がどれだけエリを愛しているかを周りに知らしめるためのね」
その後お義兄様がなんか言ったような気がしたんだけど、私は頭が混乱しきっていてよく理解できなかった。そうだよね。お義兄様が私にキスなんてするわけはないんだし……
「どこに家族間で親愛でキスをする奴がおるのだ!」
お義父様が怒っている。
えっ、やっぱりおかしいんだ! そうだよね! 家族間の親愛のキスなんて聞いたことも無いし、やっぱりあのキスは変……
「まあ、良い、それよりは今はエリーゼの紹介だ」
お義父様が話を途中でやめてくれたんだけど……えっ、じゃあ、今のキスは何なの?
私の疑問は完全に宙ぶらりんになってしまった。
「皆の者、今日は忙しい中、ようこそ我が宮廷に集まってくれた」
お義父様が大きな声で話しだした。
皆一斉にお義父様を見ている。
「そして、今日は嬉しいことに、我が娘、エリーゼが大人の仲間入りをしてくれることになった」
お義父様は私を皆に紹介してくれたのだ。
私は皆の視線を浴びてたじろいだ。
思わず頭を下げようとして後ろからお義兄様に止められる。
「エリ笑顔だ」
後ろからお義兄様のアドヴァイスを受けて、私は愛想笑いをした。
でも、お義兄様。私は本来お父さまの娘ではなくて家臣の娘なのに!
「皆の者も知っているように、エリーゼは自らの命を犠牲にして帝国を救ってくれた剣聖バージルと、今は亡き皇后、エミリーの間に生まれた娘だ。成人するに当たってその父に授けた伯爵位をエリーゼは継いだ事も報告しておく」
私が伯爵になったことに皆一様に驚いて会場内がざわめいた。
「皆の者、何を驚いておる。元々、エリーゼは5歳の時から余の娘として王宮で過ごしておる。皇后の連れ子と一部蔑む向きもあるが、余はエリーゼをとても可愛がっておる。
それは残りの4兄弟も同じだ。一番下は実際に血の繋がりもあるが、残りの3人の溺愛ぶりも変わらないものがある。特に長男のレオンハルトの溺愛ぶりは先程、皆も見た通りだ。少し、溺愛ぶりが過ぎるところもあるが……」
「父上!」
お義父様の言葉にお義兄様が文句を言った。
「まあ、いずれは皆に嬉しい報告が出来るものと期待している。もっとも、レオンハルトはまだ全然相手にもされていないようだが……」
「父上!」
お義父様が何を言っているのかよく判らなかったけれど、お義兄様が怒っているのは判った。
「余に怒るのは筋違いだと思うが……まあ良い。次に移ろう!」
更に何か言いたそうなお義兄様をお父さまが押さえた。
「皆の者も既に知っておろうが、長年我が帝国を苦しめてくれた東方10カ国を、このレオンハルトが降してくれた」
お義父様はお義兄様を褒め称えた。
「素晴らしい」
「レオンハルト様」
「凄いです」
皆は口々に祝いの言葉を発し、一斉に拍手した。
「レオンハルトは何をトチ狂ったかその勢いのまま、エリーゼを貶めてくれたサンタルまで併合してくれた」
お義父様は苦笑いをしていた。
「我が帝国は喜ばしいことにその11カ国の臣民を新たに迎え入れることになった。新たに臣下になった者達も大変だが、その方達も新たな仲間を慈しんで、いろいろと困った事があれば教えてやってほしい。そして、その新たに我が帝国の一員となったマブリー王国からライーサ王女が今宵の宴に参加してくれた」
お義父様に紹介された女性は大きな栗色の瞳が特徴の大人っぽい黒髪の女性だった。
王女は皆にカテーシをした。
皆から拍手が起こった。
「彼女にも優しく接してくれることとを心より願う」
お義父様は一同を見回した。一同再度拍手した。
「では、皆の者今宵のこの会を楽しんでくれ」
お義父様の挨拶は終わったのだ。
そして、踊りの時間だ。
まずはお義父様と誰かが踊るはずだ。
お母様が亡くなってからはお義父様は私のお祖母様や高位貴族の未亡人の方々と踊っていたと聞いていた。今日は誰と踊るんだろう?
私がお義父様を見やると、
「エリーゼ!」
お義父様に呼ばれたんだけど……えっ、私と?
私が驚いた時だ。
いきなりお義兄様に手を捕まれたんだけど……
「おい、レオンハルト。お前は王女と踊る予定じゃないのか?」
慌てたお義父様が何か言っているが、
「父上、エリは誰にも渡しませんから」
お義兄様はそう言うと私を連れてどんどん広場の真ん中に連れて行ってくれたんだけど……
ええええ! こんな勝手な事して良いの?
「お義兄様。踊るならば私よりも他の方と踊った方が……」
私が更に言おうとした時だ。
私の口が再びお義兄様の唇で塞がれたのだ。
私は完全に固まってしまった。
ええええ! また、また、お義兄様にキスされている!
私はお義兄様から逃れようとしたが、私はお義兄様に抱き締められていて、逃れられ無かった。
「キャーー」
「嘘!」
「また、レオンハルト様があの娘とキスしているわ」
周りから非難轟々なんだけど、私が悪いんじゃない!
私がなんとかお義兄様から唇を離した時は私ははあはあ言っていた。
「な、なんでお義兄様!」
私が怒ってお義兄様を見上げると
「エリ、余計なことを言うからだ」
ムッとしてお義兄様が言うんだけど、ええええ! 私が悪いわけ? 絶対に違うと思うんだけど。
遠くから私達を見ていたお義父様が呆れていた。
「本当に仕方のないやつじゃ。ライーサ姫、余と踊ってくれるか?」
「仰せのままに」
王女はお義父様に頷いていた。
そして、音楽がいきなり鳴り出したのだ。
「エリ踊るぞ」
「えっ、でも……」
私が反論する間もなくお義兄様は踊りだしてくれた。それにつられて私も踊りださざるを得なかった。
そして、私はお義兄様と踊りなれていた。とても自然に踊っていたのだ!
息のピッタリ合ったパートナーとして私はお義兄様とのファーストダンスを踊っていたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
お義兄様とエリーゼの踊りはどうなるのか?
AAAの暗躍は如何に?
続きは明朝です
ブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾








