ファッションお化け令嬢に虐められている時にお義兄様が来てくれました
アガットは元々、衣装が派手なのだ。
髪の色は目の覚めるようなピンク。瞳はグレーの瞳で、衣装は目の覚めるようなショッキングブルーに金のモールを散らばめているんだけど、もう、何か前世の大晦日の歌番組の衣装大会のようなド派手な出で立ちなのだ。
その上、私に見せつけるように、そのドレスの胸元が大きく開いていて、胸の谷間が見えていた。
髪の毛がピンクなので青黄ピンクの3色の信号みたいだった。
お義兄様の卒業パーティーの時は私もよく知らなくて、「あのファッションショーのお化けみたいな人は誰?」
と大きな声でお義兄様に聞いてしまい、皆の大爆笑を買ったのだ。特に笑い出したお義兄様が笑い止まないので、アガットからはものすごく睨まれて大変だった。それ以来、ファッションお化け嬢、違ったアガットからは目の敵にされているのだ。
「まああああ、素晴らしい青色ですわ。それと目の覚めるような金色の帯、素晴らしい。アガット様は今日はどちらのドレス工房の宣伝にいらっしゃいましたの?」
言わなくてもいいのに、セッシーは言ってくれた。
「まあ、失礼な言い様ね。私はドレス工房の宣伝塔ではありませんわ」
そう口では言いながら、アガットは口調の割には満更でもなさそうだ。
そうだった。自信過剰なアガットにはその様な嫌味は絶対に通用しないのだ!
「まあ、これを作ってくれたのはあの有名なドレス工房の『リエド』なの」
案の定、アガットは自信満々に言ってくれたのだ。
「まあ、『リエド』をお使いですの。あの浮気工房の?」
「浮気工房って何なの?」
不思議そうにアガットはセッシーに聞いていた。
「ああら、アガット様は知られませんの。あの工房、エリーの衣装を作っていたにも関わらず、他のライバルの女の衣装まで作る浮気っぶりで、王家とロザンヌ公爵家から出禁を食らったのですわ。アガット様ともあろうお方が、そんな工房をお使いになってよろしかったのですか?」
更にセッシーは言い募ってくれたのだ。でも、絶対にそんな言い方ではアガットには響かないんじゃない?
「まあ、物は言いようね。私は『リエド』のオーナーからはこう聞いたわ。
『私の好みでない方の衣装は私は作りたくありませんの。でも、たまにどうしてもと頼まれて仕方無しに作りますけれど……中々満足できるものが出来なくて。
その点、アガット様なら素材が素晴らしいので、私の衣装にぴったりですわ』って言っていたわ。まあ、貴方じゃね」
あろう事かアガットは私の胸を見て微笑んでくれたのだ。そして、自分の胸を張って、強調してくれた。確かに『リエド』の衣装は大胆に開けており、アガットの豊かな胸の谷間を強調して見せてくれていた。私はそれがとても下品だと思ったんだけど、胸の無い物の僻みだと取られては元も子もないので言わなかったけれど……
私はムッとした。
セッシーの嫌味も図太いアガットには全く通用しなかったのだ。
さすがアガットというべきか。
「本当にエリーゼさんはまだ、子供ですもの。
レオンハルト様も義理で面倒見ておられるようですけれど、いい加減に解放して差し上げたらどうなのかしら。あなたのような邪魔な小姑がいたら、レオンハルト様もおいそれと妃にしようという令嬢方と付き合いも出来ないのではなくて。それは、他のご兄弟方もそうなのではないかしら、ねえ、モイーズさん」
アガットはその後ろにいたモイーズ・トローム伯爵令嬢を見たのだ。モイーズは確かローレンツお義兄様の婚約者のはずだ。私がサンタルに行ってからの婚約発表があったので、まだお話したことが殆どなかった。でも、この前ベアトリスに頬を張られた時にその後ろの取り巻きの一人としていたのを私は覚えていた。
「本当ですわ。私はローレンツ様が、『あの、エリーゼは本当に馬鹿だからな』とおっしゃっているのを聞きました。ローレンツ様はあなたが継母様の連れ子で、面倒を見させられて、とても嫌だったとおっしゃっていらっしゃいましたわ」
私はモイーズの一言に完全にぶち切れていた。
「な、なんですって、それ本当なの?」
私はぐいっとモイーズの前に身を乗り出して聞いていた。
「私が嘘を言ってどうするのよ」
モイーズははっきりとお義兄様が私に暴言を吐いたと言ってくれたのだ。
「セッシー聞いた! ローレンツお義兄様が私に暴言吐いたって今モイーズさんが言ってくれたわよね」
私は隣のセッシーに聞いていた。
「いや、エリー、言っているのはローレンツ様の婚約者のモイーズ嬢であってローレンツ様は何一つ仰っていらっしゃるっていう証拠はないわ」
冷静にセッシーは答えてくれたが、
「何言っているの。私はちゃんと聞いたわよ」
モイーズがはっきりと証言してくれたのだ。
「ローレンツお義兄様って信じられない。10歳の時にお義兄様がおねしょしたのを誤魔化すために、私がお義兄様のベッドの上で水をこぼしたことにしてあげたのに。その恩をこんな所で、婚約者に言わせて返してくれるなんて、最低!」
私の言葉に皆絶句しているんだけど、そんなの知ったことじゃない。
「レオンお義兄様の訓練に行くのが嫌だって散々駄々をこねて、頼むから私も来てくれって頼むから、私も行きたくないのに、無理やり何回も付き合ってあげたのに。なのに、そんな事をいうの! もう絶対に許さないんだから」
私は完全に切れていた。
「モイーズ良いの? あなた、エリーが怒ると手がつけられなくなるんだから、どうなっても知らないわよ」
セッシーが何か言っているんだけど、もうローレンツお義兄様は絶対に許さない。
私は決めたのだ。
「それよりも、ちょっと、エリーゼさん。さつきから気になっていたんだけど、あなた、そのドレスの文様、レオンハルト様の文様じゃないの?」
いきなりアゴットが話題を変えてきたのだ。
「まあ、本当ですわ」
「いくら、あなたがレオンハルト様の継母の連れ子だって言ってもその文様を勝手に使ったら行けないと思うわ」
「本当に!」
「なんてこの子は厚かましいんでしょう!」
「信じられないわ!」
アゴットの取り巻きたちが次々に言ってくれたけれど……
「えっ、鷹ってお義兄様の文様だったんだ。知らなかったわ」
私が言うと、
「まあ、なんて図々しい」
「勝手に王家の文様を使うなんて、許されないことよ」
「すぐに、その服から文様を取りなさいよ」
皆様が寄って集って私を攻めるんだけど、
「えっ、それはお義兄様に言ってよね」
私は当然のことを言ったのだ。
「まあ、この子、なんて厚かましいのかしら。勝手にレオンハルト様の文様を使っておきながらそんな事を言うなんて」
「本当よ。下手したら不敬罪よ」
「拘束は愚か処刑もありうるわ」
なんか取り巻きたちが好きに言ってくれるんだけど。
「だって、これ作るように指示したのお義兄様だし」
私が言うと
「何言っているのよ。レオンハルト様は今まで誰にもドレスを作って頂いたことはないのよ。いくら継母の連れ子だって、あなたにそこまでしてくださるわけないでしょ!」
「そうよ、直ちにその文様を取りなさいよ」
「そうよ」
皆私の衣装に群がって私の衣装から文様を取ろうとするんだけど。
「何をしている!」
そこに氷のように冷たいお義兄様の声が響いたのだ。
ここまで読んで頂いて有難ううございました
お義兄様の遅れての登場です。
続きは明朝。
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