お義兄様にパフェを食べに連れて行ってもらいました
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本当にありがとうございます。
これからますます面白くしていくよう頑張るので、最後までお付き合い頂けたたら嬉しいです!
工房に対して二度と使わないとはっきりと言い切ってお祖母様が帰った後に、私は自分の部屋に戻ろうとしたのだ。
そうしたら急にお義兄様に手を引かれたのだ。
「きゃっ、どうしたの? お義兄様」
私が驚いて聞くと
「いや、昨日といい、今日といい、エリに悪いことをしたからな。何だったらパフェでも食べに連れて……」
「行く! 絶対に行きたい!」
私はお義兄様の言葉を途中でぶった切って食いついたのだ。
カフェ・ギャオスのチョコレートパフェ、私のレストランで作ろうとしても、なかなかその味にできなかったのだ。
「お義兄様、少し待っていて、すぐに着替えてくるから」
「その服で行けるだろう」
そう言えばそうだった。お祖母様だからこんな質素な服でも良いかと思ったのだが、ひょっとして元々お義兄様はアリスに話しておいてくれたのかもしれない。
「じゃあ、行こうか!」
そう言うとお義兄様は私の手を引いてくれた。
アリスとセドリックがお義兄様になんか合図を送っているのは何なんだろう?
セドリックなんて力拳を作っているけれど……
まあ、食べに連れて行ってくれるから良いか、と思って私はお義兄様に手を繋がれて歩いて行った。
私達の傍を通る皆が私とお義兄様が手をつないでいるのを見て凝視してくるんだけど。
「お義兄様。別に手を繋いでくれなくても」
「何言っているんだ。迷子になるかもしれないだろう」
「それは小さい時の話じゃない。私は子供じゃないわよ」
私は文句を言ったが、でも、お義兄様は離してくれなかった。
前に外に出た時は、特殊な出口から出たんだけど、もう二人共成人したからか、お義兄様は大手を振って城門から出ようとするんだけど……
「ちょっと待て!」
「何だ?」
呼び止められてお義兄様はムツとしたみたいだ。
「身分証を……し、失礼しました」
近衛騎士がお義兄様の顔を見て、慌てて敬礼した。
この慌てぶりだと、既にお義兄様の洗礼を受けているみたいだ。
お義兄様の訓練は厳しいからなあ、と思っていたら
「あのう、お連れの方は」
その騎士が聞いてきたのだ。
「貴様、エリを知らんのか」
ムッとしてお義兄様がその騎士を見やると
「馬鹿、前皇后陛下の連れ子様だ」
横の騎士が慌てて注意したんだけど。
「違うぞ!」
「えっ」
お義兄様の声に騎士は驚いてお義兄様をみた。
「いや、半分しかあっていない。エリは剣聖バージルの娘だ」
「あ、あの帝国軍を逃すために犠牲になられた」
「そうだ。陛下が最優先で守るべきだと、ついこの前もおっしゃられたところだぞ。エリの顔くらい覚えておけ」
「はっ、殿下、判りました」
一同さっと敬礼してくれた。
いや、そんな事言わなくていいから……私は出来たらその場から逃げ出したかった。
お義兄様は城門を出ると辻馬車に私を載せてくれた。
周りの人がジロジロ私達を見てきた。
きれいな顔立ちのお義兄様とありふれた顔の私の組み合わせが面白いのだろうか?
でも、馬車が動き出したら私はもう周りの人たちは見ていなかった。
外の景色が珍しかったのだ。3年ぶりの街だ。
でも、その前2年間もお義兄様は忙しかったから私は殆ど外に出ていないのだ。実際は5年ぶりかもしれなかった。
「ねえ、お義兄様。あの赤い屋根の屋台は何を売っているの」
「あれはたこ焼きだ」
「嘘! たこ焼きなんてあるんだ」
私は知らなかった。前世日本のたこ焼きがこの帝都で売っているなんて!
「中にタコが入っていて、結構うまかったぞ」
「ずるいお義兄様だけ」
私がむっとして言うと
「まあ、そう言うな。また食べさせてやるから」
「本当よ。約束だからね」
それからも見えるものが懐かしいやら珍しいやらで、私はセッシー顔負けでいろんなものをお義兄様に聞いていたのだ。
久々に来たカフェギャオスは相も変わらず凄まじい人気だった。
列も結構長かった。
お義兄様はサングラスをして変装してくれているんだけど……
本当にどこかのやくざみたいな出で立ちだ。
皆、ちら、ちら、こちらを見てくる。
それもメチャクチャ、引いている。
さすが、恐竜皇子として名を馳せているだけあって、きれいな目元をサングラスで隠すと怖い感じだ。
でも、その横に、ありふれた顔の私がいるから、お義兄様の恐ろしさが中和されている気がする。
「うん? どうした?」
私が見つめていたからだろうか?
お義兄様が、私を見てきた。
「ううん、なんでもない」
私は慌てて、首を振った。
「エリの事だから、どこかのやくざの親分に見えるとか言うんだろう?」
お義兄様がきいてくるが、
「親分には見えないかな。若頭って感じ」
私が言うと、
「そんなに貫禄がないのか!」
お兄様ががっかりしてくるんだけど……
「若頭でも、十二分に貫禄があるって」
私が言ってあげた。
「おい、そこのお前、見慣れない顔だな」
そこへ通りかかった巡邏の騎士が声をかけてきた。
私は必死に横で手を振ってあげているのに、騎士は気付かなかった。
その横の騎士はどこかで見たことがある。
その騎士は私を見て、慌てて跪こうとしてくれたから、私が女神役をやった騎士なんだろう。
慌てて、手を振って、止めさせる。
「なんか、サングラスなどして、格好つけてくれやがって」
前の騎士は気付いていないみたいだ。お義兄様に絡んでいる。あのサンタルでも皆怖れていたお義兄様をだ。
私に跪こうとした騎士はお義兄様を見て、
「で、殿下」
驚いて呟いていた。
「おい、止めろ」
その騎士はそう叫ぶと、慌ててお義兄様に絡もうとした騎士を後ろから掴んで止めていた。
「何をする! 俺はやくざなんて怖く、えっ、で、でん」
男にさっと騎士が何か呟くと、男は青ざめていた。
「し、失礼しました!」
騎士たちは慌てて、逃げ去っていったんだけど……
「何だ? 最近の騎士はヤクザに弱いのか」
少し前の男が、大きな声で口に出して言ったのだ。
「ちょっと止めてよ、絡まれたら困るでしょ」
男は横にいた女に叩かれていたんだけど……
お義兄様はとても困惑した顔をしていた。
「お客様、こちらへどうぞ」
しばらくして私達はおっかなびっくりの店員の案内で中へ案内された。
「結構混んでいるんだな」
お義兄様がそう言うと、
「も、申し訳ありません」
もう、店員は恐怖で息も絶え絶えに謝ってくるんだけど……
「大丈夫よ。並ぶのは当たり前なんだから」
仕方がないので、私がフォローしてあげた。
「は、はい」
けれど、男の店員は慌てて、引っ込んでくれた……やっぱりどこかの怖い男が来ている感満載に警戒されている……
「お義兄様、やはりそのサングラスが怖いのよ。皆怖れているわ」
私が言うと
「しかし、これを外すと素顔になるからな。あっという間に俺の身分がバレるが……」
お義兄様の言うことも尤もだ。
お義兄様は、一部海外の軍関係者には恐竜皇子として怖れられているが、国内では見目麗しい第一皇子様として有名なのだ。こんな所でバレたら女どもが殺到しないとも限らない。
お義兄様はそのままでいたほうが良いだろう。
次に出てきたのはオーナーだった。
やはり、こわもて顔のお義兄様には店員は対応できなかったらしい。
「何になさいますか?」
オーナーはきいてくれた。
「エリはなにが食べたい?」
「うーん、私はこのカップル限定ビッグパフェがいい」
「それを一つ頼む」
「はい、承知致しました」
オーナーはそう言いながら私を見てきた。
「お嬢ちゃん、前は良く来てくれていたよね」
「はい。しばらくご無沙汰していたけれど、またお義兄様に食べに連れてきてもらえたの」
私が喜んで言うと、
「久しぶりだね。という事はその時のお兄ちゃんかい? ずいぶん立派になったもんだねえ」
オーナーがお義兄様を見て感慨深そうに言ってくれたのだ。
「はい、特製ビッグパフェだよ」
オーナーはでかい容器に山盛りのチョコレートパフェを持ってきてくれた。
真ん中にはラブラブハートの形のピンクのチョコレートが乗っているんだけど……
「うわーーー、凄い」
「このチョコレートは久々のお嬢ちゃんにサービスね」
「有難うおじさん」
私はハイテンションになった。
「いただきます」
私はスプーンでチョコアイスを大きくすくうと、ぱくりと食べたのだ。
「おいひい」
チョコが口の中に広がって、ものすごく美味しかった。
「凄い、このチョコレート本当にとろける」
私はご機嫌だった。
「本当にとろけるのか?」
お義兄様が不思議そうに言うので、
「本当よ」
そう言いつつ、仕方無しに、スプーンで同じところをすくってお義兄様の口の中に入れてあげた。
「本当だな」
お義兄様が笑ってくれた。
「きゃっ」
「あのイケメン笑った」
今までヤクザだの怖いだの、周りはボロクソ言っていたのに、お義兄様が笑った途端に、きゃあきゃあ言い出したんだけど……
お義兄様の笑顔はそれだけで破壊力満点なのだ。
それを見ていた私の口の中にお義兄様がチョコアイスをすくって入れてくれた。
「美味しい」
私も満面の笑みで答えると
「もう一つ」
お義兄様が更に食べさせてくれたのだ。
「はい、お義兄様も」
私はお義兄様の口の中にスプーンを入れたのだ。
「あっ、このチョコレートのこの部分うまいぞ」
「えっ、本当に。私も」
口を開けて待つ私の口の中にお義兄様はかじったチョコの棒を放り込んでくれた。
「本当に美味しい」
私は満面の笑みを浮かべたのだ。
私は大満足だった。
「キャー、またあの二人食べさせた」
「あれ、間接キスよ」
「凄い!」
「なんか甘すぎ……」
周りの黄色い声が何を叫んでいるのか、私は食べることに集中していて、全然聞いていなかったのだ。
相も変わらずのバカップルな二人でした……
次は宮殿の尖塔の上です。
ついにお義兄様の告白か?
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