AAAのトム視点 帝国の恐竜皇子の溺愛する小娘を攫う事にしました
俺の名前はトム。
ただトムと呼ばれている。
実の名前はもう忘れた。
必要なかったからだ。
今はこの秘密組織AAAの取りまとめをしている。
AAA、50年ほど前に出来た秘密組織だ。
やることは簡単に言うと帝国に対するテロ行為だ。
組織員は今は千名ほどおり、帝国各地で破壊工作などを行っていた。何とかここまで盛り返してきたのだ。
15年前に我々の組織は憎き帝国の皇帝の暗殺には失敗したが、皇后の暗殺には成功した。
快挙だった。
まさか帝国の皇后を殺せるとは思ってもいなかったのだ。
支援国からは多大な感謝をされたし、資金も大幅に増額された。
しかし、その後の帝国の捜査はし烈を極め過酷だった。その結果、多くの組織の拠点が帝国騎士の襲撃を受けて、同志の多くは殺されたのだ。
組織は壊滅的打撃を受けた。
その過程で当時の長も帝国に殺された。
辛うじて生き残った俺が組織を引き継いだのだ。
帝国内の捜査は苛烈を極め、組織は東方のテルナンの王都に拠点を移して何とか生き残った。
以来15年、組織は何とか当時の勢いを取り戻しつつあった。
本拠を再び帝国に構えようとしていた時だ。
また性懲りもなく帝国軍が東方10ヶ国に攻めてきたのだ。
帝国軍は今度はたったの1万人だった。
前回は10万人でも負けたにも関わらずだ。
本当に帝国の奴らは馬鹿だ。
でも、今回の帝国の指揮官の馬鹿は、馬鹿は馬鹿でも桁違いの馬鹿だった。
なんとたった一人で突撃してきたのだ。東方10カ国軍にも油断があったのだろう。
なんとあれよあれよと見ている間に敵の狂犬皇子は一人でテルナン国王の首をはねてくれたのだ。
俺はそれを近くで唖然とただ見ているしか出来なかった。
偵察任務の一部を我らも請け負っていたのだが、皇子が一人で突撃してくるなんて情報は入っては来なかった。
偵察からの情報よりも皇子の馬の足の速さが上回ったのだ。
完全に油断していた俺は、その後のあたり構わず魔術で攻撃しまくる皇子に恐怖を感じた。
こいつは本当に荒れ狂う恐竜だった。
連合軍は恐竜皇子の攻撃になすすべもなく壊乱し、潰走したのだ。
その後に帝国軍が殺到してきた。
もう目も当てられなかった。
連合軍は組織の体もなさずに、そのまま帝国軍に王都への侵入を許し、翌日にはテルナン王国はこの世から消滅したのだ。
本当に一瞬の出来事だった。
我がAAAの多くの者が10ヶ国連合軍に参加しており、多くの者が帝国の騎士に殺されたのだ。
あんなにあっけなく国が滅ぶならば、戦力を温存して後の破壊工作に割くべきだった。
「くっそう! あの恐竜皇子め。絶対に仕返ししてやる」
俺は心に決めたのだ。
しかし、皇子を標的にしたテロ行為は尽く失敗して、多くの工作員がまたしても殺されてしまった。
我らはその後はテロ行為を行うどころか、組織の崩壊を防ぐのに精一杯だった。
それから2年、帝国はなんと東方10カ国の大半を制圧してくれたのだ。
生き残った2国も帝国の属国と成り果ててしまった。
その間、我らは大打撃を受けた組織を崩壊することから守るのに精一杯だった。
なすすべもなかったのだ。
我々を援助してくれていた東方10か国が崩壊し、組織員の多くも殺された。
このままでは、組織は壊滅する。
そう危惧していた時だ。
そんな我らにチエナが力を貸してくれた。
多くの資金、場所、人材を提供してくれたのだ。
元々我々に資金も出してくれていたが、東方10カ国が滅んだ今となっては唯一の資金の提供元になった。我らは彼らの援助と滅んだ国々から新たな人材が集まってくれて、組織の復活を図ったのだ。
帝都内の組織も15年前ほどではないが、そこそこ活動できる体制は整った。
ただ、帝国は軍事国家で、恐竜皇子の第一皇子を筆頭に第二皇子、第三皇子もそこそこ剣術魔術に優れて中々暗殺するすべがなかったし、実際に実行しても尽く失敗に終わってしまったのだ。
八方塞がりだった俺に面白い情報を持ってきてくれたのは王宮に潜伏していたメアリーだった。
「恐竜皇子が大切にしている子がいるみたいよ」
「だれだ、それは?」
「前の皇后の連れ子よ」
「ああ、チエナの術師が殺してくれた前皇后の娘か」
俺は思い出していた。
チエナはいろんな術が流行っていて、その中で疫病にかからせられる術もあったのだ。
どうしたかは判らないが、王宮に医者として潜入したそのチエナの術者が、皇后を疫病にかからせたのだ。
本来は皇帝や皇子をターゲットにしたかったのだが、皇帝や皇子たちはびくともしなかったそうだ。
恐らく奴らに流れている野蛮な血が疫病をも寄せ付けなかったのだ。
唯一かかった皇后は死んでくれたが、その術者まで病気にかかって死んでしまったのは笑い事にも出来なかったが……
「確か、この前、サンタルで婚約破棄されたところではなかったか?」
「そうなのよ。その娘を第一皇子が溺愛しているそうよ」
「本当なのか?」
俺は期待に胸が膨らんだ。
その小娘が本当に恐竜皇子に溺愛されているならば、その娘さえ攫ってこちらに人質にすれば皇子を好きに繰れるようになる。
人質に出来ずとも最悪、その娘を殺せば皇子には大打撃を与えられるはずだ。
「よし、直ちにその娘について調べろ」
俺はメアリーに指示を出したのだ。
「ふふふふ、もし攫って来れたら、私にもその娘を甚振らせておくれ。帝国軍に殺されたあの人の仇を討たない事には気が済まないよ」
「俺もだ。泣き叫ぶ娘を恐竜皇子の前で犯してやるのも良い」
部下たちが笑って言ってくれた。
「そうだな。恐竜皇子にそんな弱点があるなんて知らなかったぜ。あの恐竜皇子が自分の大切な者が攫われて慌てふためく様が見られるなんて本当に楽しみだ」
俺達は今まで散々ひどい目に合わされてきた恐竜皇子にやっと仕返しが出来るチャンスが巡ってきたことに沸き立っていた。
ここまで読んで頂いて有難うございました
エリーゼの運命や如何に?
続きは今夜です。
続きが気になる方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾








