私の大切な人形が破壊されていて、戦ったお義父様とお義兄様にプッツン切れました
その後、私はお義父様とお義兄様と一緒に宮殿の中の皇族の住まいの一角に連れて行かれた。
というか、元々私が生活していた場所だ。
でも、私は一応、家臣の娘だからと遠慮しようとしたのだ。
「何を言っている、エリーゼ、そんな事を言って父を見捨てるのか」
お義父さまが騒ぎ出すし、
「そうじゃ、エリーゼは我が公爵家に帰ってくるべきだ」
そこに何故か、祖父のロザンヌ公爵までいて、ますますややこしくしてくれて……
「何だったらエリは俺の部屋に来れば良い」
と、お義兄様が爆弾発言迄してくれて、ますます、二人は煩くなったのだ。
「儂は、まだ、エリーゼとレオンが付き合うのを認めたわけではないからな」
お祖父様がとんでもないことを言い出すんだけど……
「お祖父様、私とお義兄様は兄妹なんです。付き合うわけがないでしょ」
私は当然のことを言ったのだ。
「「「えっ?」」」
でも、3人共驚いた顔をするのは何故?
お義兄様なんか死刑宣告を受けた虜囚みたいな顔をしているんだけど……
全く訳が判らなかった。
世間一般の常識を言っただけなのに、なんでみんなこんな反応するの?
遠くにいるアリスとセドリックは頭を押さえているし、シスはお義兄様を見て笑っているんだけど……
うーん、良く判らない。
「そうか、そうだな。エリーゼとレオンハルトは兄妹であったな」
お義父様がとても喜んで言うんだけど、
「何言ってるのよお義父様。あたり前のことでしょ」
私が言うとお義兄様は益々、青い顔をするんだけど。
「そうじゃな、すっかり忘れておったわ」
お義父様はそう言うと隣のお義兄様を憐れんだ視線で見るんただけど、何故に?
私には全然判らなかった。
「まあ、レオンも戦闘に関しては多少は一人前になったようだが、女に関してはからきしなのだな」
お祖父様まで理由のわからないことを言ってくれるし……
「本当に。お義兄様も頑張って」
シスはやることがたくさんあるからか、早急に自分の部屋に帰って行った。
姉としては少し悲しかった。
まあ、五日間一緒にいたから良いかなとは思ったが……
それにお義父様にもちゃんと話さないといけないことがあったし、弟の前ではなかなか話し辛かったので、いなくなってくれてほっとした面もあった。
「あのお義父様」
私は姿勢を正して話しかけたのだ。
「ど、どうしたのだ、エリーゼ? 改まって儂に話すなど」
お義父様が驚いて私を見てきた。
「この度のサンタル王国の王子との婚約破棄の件、大変申し訳ありませんでした」
そう言うと私は頭を下げたのだ。
「何だ、その件か」
お義父様がほっとして言ってくるんだけど、私にとっては大事件なんだけど……
「いや、本当にこちらの方こそ、あんな婚約を認めて悪いことをしたな。元々格下からの申し出だったので、断ってよかったのだ。それをエミリーの母だからと儂もほだされてしまった」
「本当じゃ。儂の大切なエリーゼをコケにしおってからに」
お義父様の横からお爺様も怒って言うんだけど……
「どうしようもない王子は処刑したのだったな」
お義父様がお義兄様にギョッとすることを言うんだけど。
「エリを貶める発言をしましたので、ついかっとしてしまいまして」
お義兄様が私の方を申し訳なさそうに見ながら言ってくれた。
「良い良い。ついでにエリーゼをないがしろにした貴族どもは全員領地取り上げの上、追放してきたのだな」
お義父様がとんでもないことをお義兄様に言うんだけど……
私が縋るようにお義兄様を見ると、
「エリが嫌がりますのでそこまではしておりません」
お義兄様が言ってくれたので私はホッとした。
「なんと、何の処罰もせんとおめおめと戻って来たのか」
お義父様の機嫌が急に悪くなった。
「お義父様。私が無理やりあの国にお邪魔したのが悪かったのです。これ以上の惨劇はやりたくありません」
私はそう言ったのだ。
「しかし、それでは示しがつくまい」
お義父様が言うんだが
「父上、締め付けるだけが政治ではありますまい。奴らはエリーゼの処置に感激しておりましたぞ」
お義兄様が私を庇って言ってくれた。
「しかし、貴族どもは甘やかすとつけあがるぞ」
「まあ、陛下、殿下が温情を示されるなど素晴らしい事ではございませんか。あの恐竜皇子と呼ばれ怖れられている殿下が示された温情なのです。あの国の者共も二度と帝国に逆らったりしますまい」
「まあ、それならば良いが」
おじいさまがうまくフォローしてくれたので私はホッとした。
それに、恐竜お義兄様に逆らうような勇気を持った貴族たちがいるとも思えなかったし……
「エリ、長旅で疲れただろう。自分の部屋で少し休んだらどうだ」
お義兄様が言ってくれた。
確かに、極上の馬車だったけれど、五日間の旅は疲れた。それまでも色々あったし。
私はお義兄様の言葉に素直に従ったのだ。
「何、三年ぶりに会ったのに、もういなくなるのか!」
おじいさまが機嫌を悪くするが、
「まあ、公爵、すぐに夜会もある。その場で会えばよかろう」
お義父様がとんでもないことを言ってくれるんだけど……
「えっ、私も出るんですか」
思わず聞き返していた。
私は未成年だったから、王宮の夜会なんてほとんど出たことは無かったのだ。
「エリーゼも成人したのだ。当然出てもらう必要がある。それに、貴族の面々にもエリーゼが帰って来てくれたお披露目もあるしな」
お義父様が楽しそうに話してくれた。
「そうか、それならば仕方があるまい」
おじいさまも納得してくれたから良かったんだけど、私はとても気分が重くなった。
そんな私を連れてお義兄様が部屋を出てくれた。
「はああああ」
「どうした、溜息をついて」
お義兄様が聞いてくれた。
「えっ、夜会の事が気になって」
「夜会なら、気にすることは無い。俺がエスコートするからな」
「えっ、でも、お義兄様も誰か他の人をエスコートした方が良いんじゃないの?」
そうだ。何しろお義兄様はこの国の跡継ぎなのだ。
そろそろしかるべき人を決めてしていくべきだと私は思ったのだが、
「誰か一人をエスコートしてみろ、他の奴らが黙っていない」
お義兄様が言うんだけど、そろそろ誰か好きな人が出来ても良い頃なのに。
私がいない間に誰かいると思ったんだけど、お義兄様にはまだ相手がいないみたいだ。
何でだろう?
お義兄様は顔もよし、背も高いし、体も鍛えている。
その上、次の皇帝なのだ。絶対に人気があると思うのだけど……
人気があり過ぎて競争が大変なんだろうか?
そのあたりを聞こうとした時だ。丁度自分の部屋の前に来たんだけど、
「あれ、傷がついている」
そう、扉に燃えたような跡があった。
「えっ、何か残っていたか」
お義兄様が慌てだしたんだけど……
私は慌てて部屋の中に駆け込んだのだ。
部屋の中は別に元のまま……何か変だ。
そして、私は部屋の片隅に置いてある親友のセッシーからもらった手作り人形に目がいった。
私がとても大切にしていた物なのだ。サンタルに持って行って壊してはいけないと思って、この部屋に残していった私の宝物だ。
でも、何か変なのだ。
「ギャーーーー」
次の瞬間私の悲鳴が宮殿内に響き渡ったのだ。
何と人形の手と足が逆についていたのだった!
ここまで読んで頂いて有難うございます。
お義父様とお義兄様の戦いの後でした……
続きは今夜です
お楽しみに








