お義父様とお義兄様が親ばか兄バカ全開で私を庇ってくれるんですけど
今回は少し長いです。
お義兄様だけでも、大変なのに、もう一人大変なのが現れた。
もう私は絶望したんだけど……
でも、騎士たちは陛下達の出現を喜んだのだ。
そこにベアトリスの父の公爵もいたからだろう。
助けてもらえると思ったみたいだ。あり得ないのに!
「これは父上。近衛が考え違いをしておりましたので、指導していたまでです」
お義兄様がさらりと言ってくれた。
「レオンハルト! その方が何故ここにいるのだ。サンタル王国の制圧はどうした?」
お義父様が怒り出した。
やっぱりお義兄様は制圧を放りだしてきたのだ。だから注意してあげたのに!
「制圧はとっくに済みましたよ。何でしたらシャルルに確認下さい」
お義兄様は余裕の表情で言ってくれた。
「また、そのような嘘には引っかからんぞ」
お義父様が言うが、
「嘘かどうかは確認して頂ければ済む話です」
「なんだと」
二人は睨み合うんだけど……今にも喧嘩が始まりそうだ。
「それよりも、貴様が後ろに抱えているものは何だ」
お義父様が私に気付いたのだ。
「えっ、いや、エリですが」
お義兄様は誤魔化せば良いものを私を父の前に出したのだ。
「エリーゼ、エリーゼではないか? 戻ってきたのなら、何故すぐに顔をみせん!
と言うか、その顔が腫れているのは何故だ」
お義父様は目ざとく私の顔が腫れているのを見つけつのだ。
「レオンハルトに殴られたのか?」
お義父様がとんでもないことを言ってくれるんだけど……
「いえ……」
私が否定しようとしたのに、その前にお義兄様がぶち切れていた。
「はああああ! 父上、何を言うのです。私が今までエリに手を上げたことがありましたか?」
「恐竜皇子の貴様ならばやりかねん」
「恐竜って、実の父がそれを言うな! ごうつくばり親父が!」
「お二人共止めて!」
私は止めようとしたのだ。
「だれがごうつくばりだ!」
「東方も南方も全て制圧しろと言ったのは親父だろうが! そんな直ぐに出来るか! そもそも東方だけやってやれば十分だろうが。それ以上求めるなんてごうつくばりと言わずしてなんというのだ!」
「皆が見ていますから、このあたりで」
私の言う事は二人共全く、聞いてくれなかった。
「言葉にして言うだけならば、ただだろうが! そもそも、貴様一人で東方全てを制圧出来るなど思ってもおらなんだわ。1国でも突き崩すきっかけになれれば、それで良いと思っていたのだ。
それをただ一人で東方10カ国の大軍に突撃しよってからに! それを凶暴無謀の恐竜皇子として言わずしてなんという」
「親父が東方10カ国を制圧したらエリのことを考えてやると言ったからだろうが」
「二人共いい加減にしなさい!」
私の怒鳴り声に二人はやっと喧嘩を止めた。
本当にこの二人は喧嘩し始めるとこうでもしないと止まらないのだ。
二人共気まずそうな顔をしている。
「おおすまなんだの、エリーゼ、恐竜皇子が煩くての」
「すまん、エリ。ごうつく親父がつい煩くて」
「誰が恐竜だ!」
「誰がごうつくだ!」
「二人共止めて!」
また言い出しそうな二人を私は止めたのだ。
周りが私を唖然と見ているなんて全く私は知らなかった。
この二人を止めないと本当に宮殿を壊しかねないのだ。
母が生きている時は二人共大人しくしていたのだが、お義兄様が18を超えてから急に仲が悪くなりだしたのだ。
お義父様は皇帝だから、基本は崇高な唯一無二の人間なのだが、お義兄様は家の中では関係なしに食ってかかっていたのだ。それを止めていたのは私だ。
私の言うことだけは何とか二人は聞いてくれた。
でも、外では喧嘩していなかったと思ったのに、今はお構いなしだった。最近宮廷内でも喧嘩しているのだろうか?
「で、エリーゼは何故、顔を腫らしているのだ」
お義父様が聞いてきた。
「いえ、私は誤って顔を当ててしまいまして」
私は必死に誤魔化そうとしたのだ。
「誤ってレオンハルトの手があたったのか?」
「何を言うクソ親父、俺ではない。ベアトリスの手だ」
お義兄様は言わなくていいのに、バラしてくれていた。
適当に笑って誤魔化せると思ったのに!
「ベアトリスじゃと!」
「陛下、申し訳ありません。娘としても悪気があったわけではなく」
クラパレード公爵が謝ろうとした。
「悪気がなくてどうしてエリーゼの頬を引っ叩いたのだ。それもまだこんなに小さい子供なのに」
お義父様の氷のような声がするんだけど……
「あの陛下、私は小さい子供ではございません」
「だ、誰が陛下だ」
私が言うと、今度はお義父様が怒り出したんだけど、怒るのそこじゃないよね! 公の場だから当然陛下でしょうが!
それに、私はお義父様と血が繋がつているわけでもないのに!
「えっ、じゃあ、皇帝陛下?」
私は一応言い換えてみた。
「違う! だからあんなサンタルなどという田舎に行かしたくなかったのだ」
帝国を辺境の野蛮人と言っていたサンタルの人が聞いたら怒りまくることを平然とお義父様は言い出したんだけど……
「昔のようにお父さまと呼んでくれ」
「はい?」
「お父さまと呼んでくれ」
「いや、しかし、このような公の場で」
私は一応抵抗したのだ。
「エリーゼ、レオンハルトの事はお兄様と呼んでいるという話ではないか!」
「親父とは信頼度が違うのだ」
お義兄様がまた、余計なことを言ってくれた。
下手したらこのお義父様は泣きかねないのだ。
それが世界に冠するロアール帝国皇帝のすることかと思いながら、
「お義父様」
仕方無しに私はそう呼んだのだ。
「そうだ。それでよいのだ。思えばエリーゼは、小さい時から儂のことはお父さまお父さまと呼んで儂の膝の上に乗ってきたものじゃったな」
このお義父様は昔の黒歴史を話すなと私は必死に心の中で願ったのだが、無理だった。
「それにこの恐竜に対してはいきなり馬になれと命じていたからの。扱いが違うわ」
ああああ! 私が絶対に触れてほしくなかった黒歴史をこのクソ義父は語ってくれたのだ。
皆に生意気だと知られたくなかったのに!
騎士たちが唖然と私を見ていた。
普通は狂犬皇子とその頃から怖れられていたお義兄様に馬になれなんて言う命知らずはいないのだ。
「レオンハルトはその当時から生意気で有名だったのに、エリーゼは3歳児とは思えん気品ある態度で乗りこなしたのじゃったな」
嬉しそうにお義父様が言うんだけど、
「ふんっ、まあ、そうなのです。エリーゼは私に馬になってほしいと言ったのです。父上ではなく、私にね!」
お義兄様は何故か自慢して言うんだけど……そこ、自慢するところじゃないから。
「父上はエリの馬になった経験はおありではないでしょうが、私はありますからね」
今度はこのクソ義兄がお義父様を挑発するんだけど……
「な、なんと。そうじゃな、その点が儂が恐竜に負けている点か」
またお義父様は余計なことを考え出したみたいで、
「エリーゼ、今から儂が馬をやるから乗ってくれ」
とんでもないことを言い出したんだけど、
「お義父様。そう言う事は居間でお話しましょう」
私はもう恥ずかしくなりすぎてお義兄様とお義父様を連れて去ろうとしたのだが、
「そうしたいのは山々じゃが、小奴らの処分が残っているのだろうが」
「そうです。父上、近衛共の処分が」
「なんじゃと、ヴェリエ、貴様、近衛の騎士共がエリーゼに怪我をさせたのか? そのようなものは即座に処刑じゃ」
お義父様はお義兄様よりも過激なことを言い出したのだ。
「いえ、これはベアトリスに張られたもので」
「クラパレード公爵事実なのか」
お義兄様の声にお義父様はベアトリスの父に聞いていた。
「いえ、そのような事は。ベアトリス。どうなのだ?」
公爵が改めて聞いていた。
「いえ、私はエリーゼさんを引っ叩こうとしたのではなく」
「では誰を引っ叩こうとしたのだ」
公爵の質問にベアトリスは黙ってしまった。
「第四王子を引っ叩こうとしたみたいですよ」
お義兄様が言わなくてもいいのに、言ってしまった。
「なんじゃと、エミリーの忘れ形見にか」
「それを近衛も庇わなかったのです。母上が身分が低かったから、みたいですよ。近衛にはそう言う雰囲気が蔓延しているとか」
「そうなのか、ヴェリエ」
「そんな滅相もございません。この者たちはごく一部でして」
「閣下そんな」
近衛騎士たちは慌てだした。
「だまれ! 事実だろうが。わしは一切手を抜けなどと言っておらんぞ」
「手を抜いた奴らは騎士の身分剥奪の上、追放かの」
お義父様が何か言っている。
もう騎士たちは真っ青だった。
「まあ、父上、私も鬼ではありません。こやつらは我が一軍で一から鍛え直そうかと」
「そのような恩情をかけてやる必要があるのか? 別に不敬罪で処刑でも良いのではないか?」
「父上、不敬罪で処刑はありません」
お義兄様は否定してくれた。
「ヴェリエ、レオンハルトはそう申してくれておるが」
「はっ、有り難き幸せにございます」
もう近衛騎士団長はそううなずくしかなかった。
「しかし、ヴェリエ、次は無いぞ」
お義父様が、釘を刺していた。
「近衛の怠慢、他からも上がっておる」
「はっ、綱紀を粛正致します」
「なんでしたら、私が訓練致しましょうか」
「そうじゃな、レオンハルトがやってくれるならそれに越したことはあるまい」
その瞬間、他の近衛達の顔が青くなった。
お義兄様の訓練は厳しいので有名なのだ。やった私が言うから事実なのだ。
「公爵、それで、その方の娘は皇子に手を上げたそうじゃが、どう責任を取らせるのじゃ?」
「直ちに謹慎させまする」
「そうじゃな。亡き皇后の親族じゃと思っておった儂が甘かったか」
「申し訳ありません」
お義父様の声に公爵は頭を下げた。
「そんな、陛下。何故その小娘ばかり贔屓にされるのですか?」
「これ、ベアトリス」
ベアトリスの言葉に公爵が青くなったが、
「エリーゼは今は亡き剣聖の忘れ形見じゃ。剣聖が儂の身代わりとなって死ぬ時に儂は約束したのじゃ。どんな事があっても必ず娘の面倒は見ると。じゃからエリーゼの身は何をもっても優先する。判ったな、ヴェリエ」
お義父様が更にとんでもないことを言い出しているんだけど。
「はっ、肝に銘じましてございます」
近衛騎士団長が頷いた。
「近衛騎士共にも徹底させよ。出来ぬものは一軍で一からレオンハルトが鍛え直してくれよう」
お義父様は言うんだけど。
「だからレオンハルト様もエリーゼを大事にされるのですか」
ベアトリスが悔しそうに聞いてきた。
「俺は前皇后様に約束したのだ。エリの事は一生涯、俺が面倒を見るとな」
お義兄様は当然のように言ってくれるんだけど、何か言い方が違うように私は思った。
それではあたかも終生結婚して面倒をみるように聞こえるではないか!
周りのみんなも唖然と私とお義兄様を見ているし。
「そ、そんな」
その言葉にベアトリスはとてもショックを受けていたのだ。
結局、ベアトリスは1ヶ月の謹慎処分となったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
お義兄様の心、妹には伝わらずです。
続きは明朝。
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