公爵令嬢視点 従兄妹が好きだったのにポッと出のガキに取られてしまいました
私はベアトリス・クラパレード、クラパレード公爵家の令嬢だ。
そう、この大陸一強力なロアール帝国の中でも力のある公爵家の娘なのだ。
私は小さい時から父や母にとても大切に育てられた。
そして、叔母にも可愛がられたのだ。
なんと、叔母はこの国の皇后様だった。
私は即ち、皇后様の親戚だったので、よく、王宮に叔母様を訪ねる両親について遊びに行ったのだ。
王宮のお菓子も当然美味しかったが、私の目当ては別にあった。
そう、そこには見目麗しい、王子様がいたのだ。
従兄弟の第一皇子のレオンハルトだ。
従兄弟は本当に見目麗しくて、きれいだった。
男にきれいと言ってよいかどうかは判らなかったが。
小さい頃は、偶に一緒に遊んだ。
もっともレオンハルトはどちらかと言うとやんちゃで、私の相手はなかなかしてくれなかったが。
私は一緒にいられるだけ幸せだった。
私は出来たら将来は叔母のようにレオンハルトの横で皇后様になりたいと思っていた。
母には「レオンハルト様はあなたには、ちょっと血が濃すぎるんじゃないかしら」
とあまりいい顔はしなかったが、他国の王族ではいとこ同士の結婚もよくあることなので私はぜひともレオンハルトと一緒になりたかった。
でも、そんな叔母が私が9歳の時に死んだのだ。
原因は東方10カ国のテロの攻撃だったと聞いた。その頃は帝国軍も東方十か国に大敗して、帝都も暗雲が立ち込めていた。
しばらく情勢が安定しないからと私は王宮にも連れて行ってもらえなかった。
出来たらショックを受けているレオンハルトを慰めに行きたかったのに、母は危険だからと許してくれなかったのだ。
でも、その間にあの娘がレオンハルトの隣りにいるようになったのだ。
私が11歳の時に皇帝陛下が再婚されたのだ。その女は元剣聖の妻だった女で、どこぞの属国の子爵家の出身だそうで、とても身分の低い女だった。
「皇帝陛下の夜のお世話と王子殿下達の乳母代わりだ」
と父は言っていたが、私は意味がその当時はあまり良く判らなかった。
久々にレオンハルトに会いに行くと、レオンハルトは今は忙しいから相手ができないとあっさりと断られたのだ。子供心にショックだった。
でも、ふと、中庭を見るとそのレオンハルトが小さな娘の手を引いているではないか。
「お義兄様。抱っこ」
その娘が言うと、レオンハルトは
「エリ、もう少し歩くんだ」
と言って怒られていた。私はいい気味だと思ったのだ。
でも、その娘は
「ああん、疲れた。お義兄様の抱っこが良い」
と再度言うとなんとレオンハルトは
「エリは仕方がないな」
と言ってその娘を抱っこしたのだ。
私は唖然とした。
今まで私といる時はどこか冷たい感じがしたのに、そのガキといる時は満面の笑みを浮かべているのだ。
「小さな子供が珍しくて可愛がっているだけよ」
お母様はそう言って笑ってくれたが、私にはそうは思えなかったのだ。
だってあんなに楽しそうなレオンハルトは初めて見たのだ。
私はとても悔しかった。でも、その娘は所詮側室の連れ子だ。到底、レオンハルトの隣に立つことは出来まい。
今だけレオンハルトの横にいて甘えればいいんだわ。
私は黒い笑みを浮かべて笑ったのだ。
私はそれからは淑女教育を未来の皇后様になるべく必死に頑張ったのだ。
何しろ私とレオンハルトは同い年で、15歳になれば一緒に学園に通う事になるのだ。そして、学園時代に二人の仲を深めればよいのだ。その時の為に、今から自分を磨いたのだ。
そして、待ちに待った学園時代がやってきた。私とレオンハルトは同学年で3年間一緒に学べるのだ。
思った通り、私はレオンハルトとは同じクラスだった。私は早速レオンハルトに近付こうとした。幼馴染として。
しかしだ。同じクラスには隣国チエナ王国のホンファ王女もいたし、外務卿で侯爵家のアガットもいた。そして、その他の伯爵令嬢達も私と同じことを考えていたのだ。
休み時間になると皆でレオンハルトを巡って取り合いになった。女の戦いは凄惨だ。私はレオンハルトに近付く奴を脅したり、他のものに言って虐めたりして手を引かそうとした。
しかし、レオンハルトは女たちが寄ってくるのに嫌気が差したのか、休み時間等はその側近の方と過ごすのが多くなり、私達は近づけなくなったのだ。
私は帝国内では最高位の公爵家令嬢だから、王女を除けば身分は一番高く、多くの令嬢たちと仲良くはなった。でも、レオンハルトとは、なかなか一緒になる機会がなかった。
年に一回の卒業パーティーでレオンハルトと踊れるかと期待したのだが、レオンハルトを狙う令嬢は多く、レオンハルトはその令嬢たちから逃げ回っていたのだ。
お父様にお願いして、レオンハルトと会おうとしても、レオンハルトも公務に忙しいみたいで、中々会えなかった。
そして、三年生になって、最後の卒業パーティーの時が来た。
私はレオンハルトのパートナーになれるようにお父様にお願いしたのだ。
最悪、親戚扱いなら何とかなると思ったのだ。
婚約者がいない者は、親兄弟や親戚の者がパートナーを務めるのだ。
それなら王女や侯爵令嬢にも言い訳が付くと私は思ったのだ。
「義理の妹のエリーゼをパートナーにするそうだ」
父の返答に私は戸惑った。
だってあの娘はまだ12歳のはずなのだ。そんな小娘をパートナーにするなんて考えられなかったのだ。
「まあ、ベアトリス、今回はあきらめろ。チエナの王女もカルディの所も陛下に頼みに行ったそうだ。陛下としても一人を立てるとほかに角が立つ。その点エリーゼならば、義理の妹だし、子供という事で周りも納得するだろうとおっしゃられたら、どうしようもない。まあ、その後踊ってもらえばよいだろう」
私は父の言葉に納得するしかなかった。
当日、出て来た小娘はやはりまだお子ちゃまだった。出るところも出ていないし、童顔だ。私はホッとしたのだ。
衣装もデビュタント用の白い衣装で本当に子供っぽかった。
胸は私の方が圧倒的に大きいし、顔も圧倒的に私の方がきれいだった。
それに娘は少し嫌味を言ってやったら、怒って、軽食コーナーに行っていきなり食べだしたのだ。
本当にお子ちゃまだった。
しかしだ。
いきなりその小娘がレオンハルトにケーキを食べさせたのだ。
「キャーー」
「あの子、レオンハルト様に食べさせたわ」
周りはキャーキャー騒ぎだしだが、私は完全に切れていた。
あのガキ、何をしてくれるのだ。
それも私達に見せつけるようにやってくれるんだけど……
完全に計画的な犯行だ。
私は腸が煮えくり返る思いだった。
そして、ダンスの時がきた。
所詮お子様もここまでだ。ダンスになったら圧倒的に女の魅力が勝る私のものだ。
私は王女とアガットに先に越されないように出来るだけレオンハルトに近付いたのだ。
レオンハルトのダンスを初めて見たが、とてもうまかった。
それも、小娘をうまくリードしている。
レオンハルトが小娘の下手さ加減をカバーしていた。
私は曲が終わるのをまだかまだかと待ったのだ。
次にレオンハルトと踊れることを期待して。
しかしだ。なんと二人は二曲目もそのまま踊ってくれたのだ。
そして、3曲目も……
結局私は一曲も踊れなかったのだ。
もう絶対に許せなかった。
私は絶対にこの小娘を排除してやると決めたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きは今夜。
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