弟を庇って、公爵令嬢に頬を張られました
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私は弟と一緒の馬車で、帝都に向かったのだ。
帝都内の交通は道が馬車が走りやすいように、石畳で出来ており、馬車はある程度のスピードで走れるのだ。
この馬車はシスがいるので、皇族の専用車でスピードも速かった。
帝都まで普通は一週間かかるのが、5日で走れた。
馬車の中では、シスの最近の状況を、聞かせてもらった。
シスは勉強も捗っていて、順調に皇族への道を歩いているらしい。
私はそれが嬉しかった。お母様もきっと天国で喜んでいるはずだ。
「剣術と魔術の訓練はどうなの?」
私が話題に出なかった2つについて聞くと、シスは、今まで元気に話していたのが急に静かになって、
「それよりも、姉上、このお菓子は美味しいよ」
と、誤魔化しだしたのだ。
「シス、いきなり話題を変えないの!」
私は注意した。
「うーん、魔術はまあまあなんだけど、剣術がちょっと」
「剣術がちょっとじゃないでしょ。あなたは、武門の生まれなのよ。ちゃんとやらないと」
私が注意すると、
「なに言っているんだよ、姉上。武門の生まれは公爵家でしょ! 僕は違うよ」
シスが反論してきた。
「えっ? そうだっけ?」
私はシスとは父が違うのを忘れていた。
「そうだよ」
プンプンと怒って、シスが言うんだけど、その様子も、何か、可愛い!
いやいや、弟で癒されていてはいけない。ここはちゃんと叱らないと。
「シス、公爵家って言ってもパウル兄上は違うからね。それに、そもそも皇帝家も武門の出だから、初代皇帝陛下を始め、皆様、騎士でもあるのよ。剣術は避けては通れないわよ」
「それはそうだけど、苦手なものは仕方がないじゃないか……だって、パウルも剣術はからきしだって言う話だし」
「何を言っているの! パウルお兄様も騎士の資格は持っているわよ! 確か、剣術も結構な腕前よ。皇子たるものある程度は出来ないと。ローレンツお義兄様も、マルクスお義兄様も出来るのよ。あなただけが出来ないって、ダメでしょ。あなたも第4皇子なんだから」
私が言うと、
「そうは言っても姉上、不得意なものは仕方がないよ」
シスが不貞腐れて言ってくれるんだけれど、
「なんだったら、レオンお義兄様に頼んであげようか?」
「止めてよ、姉上! そんなことしたら殺されてしまうよ」
「はああああ! お義兄様がそんなことするわけないでしょ!」
私が言うと
「絶対に殺されるから止めて!」
何かシスは必死に言ってくるんだけど、なんでだろう?
見た目は厳しいかもしれないけれど、お義兄様は優しく教えてくれるはずだ。
私も多少の剣術をお義兄様に教えてもらったのだ。
私はお義兄様が帰ってきたら相談しようと思ったのだ。
そのまま、私達は王宮に入った。
私はシスと並んで王宮の廊下を歩いた。
しかし、たかが平民の臣下が、皇子殿下と並んで歩いていて良いのだろうか?
私はシスの後ろを歩くと言ったのだが、シスは許してくれなかったのだ。
考えたら、私はお義父様とは血も繋がっていないし、本来はこの王宮に来るべきではないのかもしれない。公爵家のお祖母様の所にお世話になったほうが良いのではなかろうか?
そう思わないでもなかった。
そんな時だ。私は前から華やかな令嬢の一団が来るのを見たのだ。
それは着飾った令嬢たちの一団で、王宮内を我が物顔で闊歩していた。
私がいる頃は、王宮内を女性の集団が歩いているのはなかなかなかったんだけど。私がいない間に変わったのだろう。
一団はこちらに向かって歩いてくる。
先頭はあれは確か、ベアトリス・クラパレード公爵令嬢だ。お義兄様の卒業パーティーで会った事がある。
そうだ。お義兄様の従兄妹で、確かお義兄様の婚約者候補の一人だ。
お義兄様達の母上がこの公爵家の出身で、従兄妹ということもあり、血が近すぎるのではないかという意見もあって、婚約の話は進まなかったと聞いているが、本人はいたく乗り気でパーティーの時も私は結構絡まれたのだ。
令嬢たちはどんどん歩いてきた。
一応、シスは第四とはいえ皇子なのだ。普通は向こうが避けるはずなのに?
どんどんこちらに迫ってくるのだ。
不味いと私は思った。
仕方無しに、私は前に出た。
「ああら、あなたは確か、属国の王子から婚約破棄された方ではなかったかしら」
ベアトリスが大きな声で言ってくれた。
「な、何だと」
シスがいきり立ったが、私はシスを押し留めた。ベアトリスの言うのは事実なのだ。
「これはクラパレード公爵令嬢様。ご機嫌麗しゅう」
私は挨拶した。
「ふんっ、たかだか、属国の王子なんかに婚約破棄されたあなたが、よくもおめおめこの王宮に帰って来れたものね」
「本当ですわ」
「私ならば恥ずかしくて、この帝国の地に二度と帰ってこれませんでしたわ」
後ろの取り巻き令嬢たちが話してくれた。皆伯爵家以上の身分のご令嬢だ。
「陛下にご報告しなければなりませんので」
私は至極まともな事を答えたのだ。
臣たるもの、たとえ失敗しても、皇帝陛下からの命令で婚約したのだから、それが失敗したのなら陛下に報告しなければならない。
「まあ、そうなの。それはご苦労なことだこと。でも、一度婚約破棄で傷物になった令嬢は大変よね。次の嫁ぎ先も中々見つからないのではなくて」
「本当ですわ」
「せいぜい、年老いた老人の後妻といったところかしら」
私としては、アルナス子爵と言ってもお義兄様が占拠しに行った国の子爵家だ。
今は無爵位と言っても良いのだ。そんな私が反論するのもまずかろうと思って黙っていたんだけど。
でも、そんな私を気にしたのか、ずいっとシスが前に出てくれたのだ。
「ねえねえ、お姉様。僕、侍女たちが噂していたのを聞いていたんだけど、お兄様に全然相手にされないのに、追いかけているうちに婚期を逃してしまった令嬢がいるって聞いたんだけど、本当?」
「えっ」
私は唖然とした。
シスが今話した令嬢って、絶対に目の前のベアトリスを指している。私は目が点になった。
さすがのベアトリスもそれに気付いたみたいだった。
「なんですって」
そう叫ぶと憤怒の形相をして、シスを平手で張ろうとしたのだ。
そんな弟を守るために私は前に出たのだ。
パシーン
次の瞬間、私の頬が大きな音を立てて張られていた。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
お義兄様狙いの公爵令嬢の登場です。
頬を張られたエリーゼの運命やいかに?
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