弟が迎えに来て私に抱きついてきて、お義兄様は義父の命令でサンタル王国を制圧しに行かされました
私はお兄様の膝の上で寝てしまったのだ。
そして、昔の夢を見ていた。
私がまだ5歳くらいの頃だ。
「お義兄ちゃま、膝に乗って良い?」
「ええ、またか!」
私の頼みに一瞬お義兄様は嫌そうに文句は言ってくれたが、決して断ることはなかったのだ。
「お願い!」
私が上目遣いにお願いすると、確実だった。
「仕方ないな。でも、エリ、膝の上に乗せるのは将来のお嫁さんだけなんだぞ」
お義兄様は言ってくれた。
「えっ、じゃあ、私がお義兄ちゃまのお嫁さんになってあげる」
私は何も知らずに平気でそんな事を言っていたのだ。
「じゃあ約束だからな」
私達は指切りげんまんしたのだった。
なんか、本当に懐かしい思い出ですっかり忘れていたけれど、そう言えば指切りまでしたんだった。
まあ、子供の頃の笑い話だと私は思っていた。
しかし、場面が代わって
「エリ、子供の時の約束だから結婚しよう」
と、大きくなったお義兄様に跪かれているんだけど……
なんでそうなる?
あの子供の約束は、どう見ても何も知らない子供の世迷言で、笑い話なのだ。
お義兄様は帝国の第一皇子で当然その婚約者はお義兄様に相応しい人がいるはずだ。私みたいな者がなって良い訳はない。
でも、お義兄様は私にグイグイ迫ってくるのだ。
「お義兄様!」
叫んで驚いた私はハッとして目を覚ました。
馬車は止まっていた。
私はまだお義兄様の上にいた。完全に寝入ってしまったらしい。
「起きたか?」
私を見下ろしてお義兄様が聞いてきた。
私が頷いた時だ。いきなり扉が開いてたのだ。
「姉上! お会いしたかったです」
そこには私の弟のシスが飛び込んできたのだ。
「えっ?」
「おいこら、急に飛びついてくるな」
注意するお義兄様の手をかいくぐってシスは私に抱きついてきた。
私はあっという間に目が覚めた。
「シス!」
私も思わずシスを抱き締めていた。
「元気にしていた?」
「はい。本当に姉上にお会いしたかったです」
もう一度シスが抱きついてきたので、私は再度、思いっきりシスを抱き締めていた。
「おい、お前ら俺の上で抱きつくな」
お義兄様の怒った声がして
「ああああ! 兄上、何をしているんですか。姉上を膝抱っこなんてお父さまが聞いたら切れますよ」
シスはそう言うと私を立たせて、馬車から強引に降ろしたんだけど……
「シス、俺とエリの間を邪魔するな!」
「何言っているんですか、兄上! 婚約していない男女が何しているんですか! 姉上。このような野蛮な兄上に近づいてはいけません」
「な、何だと」
お義兄様の機嫌が急降下するが、
「姉上。兄上が怖いです」
私にシスがすがりついてきた。
「お義兄様!」
私がお義兄様を睨みつけた。何しろまだシスは12歳と子供なのだ。子供相手にお義兄様も何を言っているのだ。
「シス、貴様、俺とエリの間を邪魔する気か」
「邪魔するも何も、兄上と姉上は血は繋がっていませんからね。血が繋がっているのは兄弟の中で私だけですから。当然姉上に抱きついて良いのは私だけなのです。兄上は姉上と血が全く繋がっていないんですから、本来姉上に触れてはいけません。姉上もいくら、兄上に助けられたからって節度は守ってもらわないと」
シスが理論整然と私にまで注意して来るんだけど。
「シス、お前少し会わないうちに、屁理屈だけつけるようになったな」
お義兄様が目を吊り上げて更に切れているんだけど、
「お義兄様!。シスはまだ12歳なんですから」
私は再度お義兄様に注意しなければならなかった。お義兄様もこんな子供相手に何を本気になっているのだ!
「そうそう、僕はまだ子供なんです。だからお姉様。お会いしたかったです」
シスが再度私にだきついてきたのだ。
まだシスは完全におとなになっていなくて、身長も私の胸くらいだった。でも、それでも帝国を出た時は9歳だったから、それから比べればとても背が伸びていたのだ。
私の胸に顔を擦り寄せてくるんだけど、私はそのシスが可愛くて再度ぎゅっと抱き締めていた。
なんか私達を見るお義兄様の視線が怖いんだけど……なんで?
「ごめんね。シス、さみしい思いをさせて」
私が謝ると
「本当ですよ、姉上。これからは僕が姉上の面倒を一生涯見ますから」
「何言っているのよ。シス、あなたもいずれ結婚するんだから、あなたにそんな迷惑をかけるわけには行かないわ」
「そうだ。シス、エリの面倒は俺が一生涯見る」
「何言っているのよ。お義兄様。お義兄様の方こそ、お后候補が一杯いらっしゃるではないですか」
私はそう言ったが、その言葉に更にお義兄様の機嫌が急降下するんだけど……
「わーい。姉上に叱られてる」
「煩い。貴様も一緒だろうが」
シスとお義兄様が言い合っていた。本当にこの二人はいつも仲が悪いのだ。
仲が悪く見えるほど実際は仲が良いということもあるけれど、この二人はどうだろう?
「そうだ。兄上。お父さまから軍令書を預かってきました」
「軍令書だと」
お義兄様は弟の出した紙を広げた。
「はああああ! もう一度戻ってサンタル王国を制圧しろだと! 何故俺ばかり働かなくてはならんのだ」
お義兄様は切れたが
「殿下、申し訳ありません。サンタル王国の事をよく知っている御仁を遣わして欲しいと陛下にお願いしたら殿下を推薦されまして」
「伯父様」
私は驚いてその男を見た。公爵家の嫡男で帝国第5軍の総司令官のシャルル・ロザンヌがいたのだ。
歴戦の勇士で実のお父さまの兄だ。お義兄様が頭の上がらない数少ない人間だ。お義兄様も行軍の仕方から野営の仕方まで、伯父様に徹底的に鍛えられたらしい。
「親父め、俺を嵌めたな」
なんかお義兄様は呟いている。
「エリーゼ、また立派になって帰ってきたな」
伯父が私を見て褒めてくれた。
「でも、伯父様、婚姻はうまくいきませんでした」
私が残念そうに言うと
「まあ、その方が良い時もある。ねえ、殿下」
「ああ、まあな」
伯父様がお義兄様を見るとお義兄様は頷いたんだけど。やっぱりお義兄様は私の婚約を良く思っていなかったのだ。
私なりに努力したのに……
「いや、エリ、俺としてはだな」
お義兄様は私の少しムッとした視線を浴びて、慌てて言い訳しだしたんだけど……
「殿下、そう言う事は、サンタルの事を終わらせてからじっくりされればよろしいかと」
横で伯父が理由のわからないことを言うんだけど……
どういう事なんだろう?
「エリ、絶対にさっさと終わらせてくるからな。そうしたら言いたいことがあるから」
「言いたいこと?」
「だから待っていてくれ」
「さあ、殿下、急ぎましょう」
お義兄様はそう言うと伯父様に連れらて行かれた。
お義兄様は私に何が言いたいんだろう?
「さあ、姉上、僕たちも帝都に帰りましょう」
私はかわいい顔をした弟と馬車に乗って帝都に向かったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
実はお姉様大好きなシスコンの弟の登場です。
可愛い顔して実の弟もいろいろ悪巧みしているかも……
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