やって来た王子は私を貶める発言をしたので、お義兄様がプッツン切れて王子たちを蒸発させました
「敵の数は?」
「見える限り、騎兵部隊が300騎くらいかと」
お義兄様の言葉にトマスさんが答えてくれた。
「たった300か」
お義兄様が残念そうに言うんだけど、こちらは10騎しかいないから私の感覚からしたら敵の方が圧倒的に多いのだ。それをたった300って絶対におかしい!
「他にも隠れている可能性もありますが」
「まあ、1万いても同じだけどな」
お義兄様は笑って言った。
本当にお義兄様は胆がすわり過ぎている。1万って、本当に大軍なのに!
それに、本来はお義兄様は帝国の第一皇子なんだから、敵の倍以上の戦力で敵に対処すればよいのだ。
格好つけて少数で大軍に当たるなど愚の骨頂だ。
帝国はそれだけ戦力の余裕があるはずなのに!
それを一人で1万、いや、この前は10万に一人で突撃するなど、異常だ。
本当に止めて欲しい!
数の理論に則ればここは当然逃げるところなのだ。
だから、逃げたら良いのに!
レッドがいるんだから、私とお義兄様だけで逃げても逃げきれるのだ。
そもそも、私に過保護なお義父様の事だ。すでにこちらに一軍を向かわせていると思うんだけど……そこまで逃げれば良いだけなのに!
言っても絶対に聞かないと思うから言わないけれど……
トマスさん等ももっとちゃんと注意するべきだ。
でも、もう遅い……私はむっと膨れた。
お義兄様は馬車を止めさせて、前に進み出てくれた。
私も地面に降り立つ。隣にはトマスさんとアリスが立ってくれた。
アリスも基本は戦えるはずだ。
私の侍女兼護衛だから。
お義兄様の横には少し下がって左右に二人ずつ、私の後ろにも五人が後方を警戒して配置についてくれた。
これで、余程の事がない限り、大丈夫なはずだ。
でも、戦うよりも逃げたほうが良いのに……
お義兄様は逃げるのを極端に嫌うのだ。本当に馬鹿だ。命あっての物種なのに!
騎馬の群れの一団が大きくなってきた。
先頭の群れの中に、私はアンドレを見付けた。
こいつは馬鹿なのか?
折角、幽閉だけで済んでいたのに!
お義兄様に頼んでそうしてもらったのに!
私の努力が水の泡だ。どいつもこいつも本当にムカつく。
その横には公爵がいる。
本当に、公爵は私にも散々嫌味を言ってくれただけでなくて、出来たら、こういう時にはアンドレを止めて欲しかったのに!
三百騎は私達の前で止まった。
そして、アンドレが前に出て来たのだ。
「帝国の恐竜皇子に告ぐ。直ちに降伏せよ。そうすれば命の保証はしてやる」
アンドレは平然と言ってきたのだ。数の理論から言えば当然、アンドレの言う通りなんだけど……
「あっはっはっはっは」
お義兄様が大声で笑い出したのだ。
「な、何がおかしい!」
アンドレが色を成して文句を言ってきた。
「サンタル王国の王子は面白いことを言う」
「どこが面白いのだ」
「300騎風情で俺に勝てると本気で思っているのか」
お義兄様は馬鹿にしたようにアンドレを見た。
「俺のほうが貴様らに降伏勧告してやろう。今降伏するなら、命だけは助けてやろう」
お兄様が宣言してくれたのだ。
「何を言うのだ。馬鹿なことは休み休み言え。そちらこそたかだか10騎くらいで何が出来るのだ」
「これだから辺境の王国は疎いのだ。貴様ら聞いていないのか? 俺が何故恐竜皇子と呼ばれているかを」
「見た目が恐竜のように見えたからではないのか」
アンドレは言うんだけど。アンドレは絶対に勘違いしている。
「そうだ。俺は恐竜のように10万の大軍をただ一人で殲滅したのだ。貴様の引き連れてきた300など殺されにきたようなものだぞ」
「ふん、そのような世迷い言、信じられるか。あくまで抵抗するというのならば、攻撃するのみだ」
お義兄様の言葉にアンドレは反論した。
「そうか。判った。あの場で貴様を見逃してやったのはエリが助けてやってくれと頼んだからだ。わざわざ助けてやった命を粗末にするなど本当に愚か者よな」
お義兄様が嘲り笑ってくれたんだけど。
「ふん、減らず口もそこまでだ。貴様が死んでも、エリーゼは俺が側室にでもして、かわいがってやるから安心しろ」
アンドレが何か言ってくれた。人を勝手に側室にするな。そんなのは死んでも嫌だ。
でも、私が切れる前にお義兄様が完璧に切れたのだ。
ピキピキピキ、堪忍袋の緒が切れる音がしたのだ。
私はアンドレが言ってはいけない言葉を話したのを理解した。
「貴様! 許さん」
「お、お義兄様!」
私は慌ててお義兄様を止めようとしたが、その前にアリスとトマスさんが私の上から覆い被さってくれた。
「目をつぶって」
トマスさんの言うように目をつぶったが、それでも次の瞬間、眼の前が明るくなった。
ピカ
凄まじい閃光が走ったと思うと
ズカーーーーン
巨大な爆発音がすぐ傍でした。そして、爆発に伴う爆風が頭の上を通り過ぎていった。
二人が乗ってくれていなかったら、私は吹き飛ばされていたかもしれなかった。
爆風が過ぎ去り、少しして、二人が退いてくれた。
薄れゆく粉塵の前に、騎馬300機は跡形も残っていなかった。
その代わりに私達の眼の前には巨大なクレーターの穴が開いていたのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
トラの尾を踏んだ結果、お義兄様の怒りの一撃の前にアンドレ等は殲滅されました。
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