王都から帰路追手が迫って来ました
久々のランクインに舞い上がっています。
この話読んで頂いて本当に有難うございます
私はお兄様の腕の中で安心してまた寝てしまったのだ。
次に起きた時はもう太陽は結構な高さまで登っていた。
私は慌てて飛び起きた。
寝間着は変なスケスケ寝間着でなくて普通の寝間着になっていた。
アリスが着替えさせてくれたのだろう。
「起きられましたか?」
アリスが部屋に入って来てくれた。
「あ、アリス、着替えさせてくれてありがとう。でも、アリスも初めからこの寝間着があるなら、これにしてくれたらよかったのに!」
私が文句を言うと
「あの寝間着にされたのはお嬢様ではないですか。私は止めた方が良いとお止めいたしましたのに」
アリスにそう言われると私は返す言葉もなかった。
まあ、お義兄様が少しは喜んでくれたから良いか……いや、あれは喜んでいたと言うよりも狼狽していたと言った方がよいけれど、私の裸なんて昔は見慣れていたはずなのに……まあ、それは小さい時だったけれど、あの慌てようは何なんだったんだろう?
そう思わないわけではなかった。
私は遅めの朝食を食べていたら、お義兄様が慌てて入ってきた。
「すまん、寝過ごした」
お義兄様が謝ってきた。
「ううん、だってお義兄様は私と違って、ずうーっと起きていてくれたんでしょ。その後の処理とかも大変だったと思うし、もっと寝ていても良いのに」
私がそう言うと、
「サンタル王国の動きがわからん。できるだけ早めにここを出て、帝国に向かいたい」
王子を断罪したから、しばらくはサンタル王国も動けないんじゃないかと私は思っていた。国王夫妻も帝国だし。
でも、お義兄様が言うのだ。それに従うしか無い。
まあ、お義兄様は野生の勘が働くから、その言う事は聞いたほうが良いのだ。
昔兄弟で冒険ごっこした時に、お兄様の示した道じゃない道を行くことにしたら、魔物が次々に出てきて、本当に大変だった。そんな時でもお義兄様は余裕で魔物を退治して、なおかつ私を守ってくれたけれど……それ以来こういう時はお義兄様の意見に従うことにしているのだ。
「執事さん、今まで酷いことをされたと疑っていてごめんなさいね。叔父様があんな変質者だとは思ってもいなかったわ」
私は執事さんに謝ったのだ。
「いえ、御主人様。私がもっとちゃんとした証拠を前もって掴んでいれば、きちんとお話出来たのです。私の力不足で大変ご迷惑をおかけいたしました」
執事さんが謝ってくれたんだけど、
「何言っているのよ。あのアパート教えてくれたのも執事さんなんでしょ。本当に何から何まで有難う」
「いえ、私は御主人様のためにしただけですから」
執事さんは謙虚に言ってくれたんだけど。
「今回は世話になったな。もし、何か困ったことがあれば俺を頼ってくれ。力になるから」
お義兄様も言ってくれた。まあ、問題があればお義兄様がなんとかしてくれるだろう。
「まあ、私のことよりも、お二人の方こそ、お気をつけられた方が良いかと。貴族たちが蠢動している気配があります」
執事さんが忠告してくれた。
「まあ、奴らが束になったとて、何か出来るものではないとは思うが。例え、仕掛けてきても俺がいる限り問題はない」
お義兄様が自信を持って言ってくれた。
「まあ、そうとは存じますが、気をつけるに越したことはないかと」
「そうだな。気をつけていこう」
お義兄様は執事にお礼を言って私達は子爵家のタウンハウスを出たのだ。
馬車が走り出した。
これで、サンタル王国の王都ともしばらくお別れだ。
私は感無量だった。結局3年間、アンドレと仲良くなろうとした、私の努力は何一つ実らなかったが、平民の友達はたくさん出来た。王都でレストランも出来たし、まあ、三年間で出きることを私なりにやり尽くしたのだ。
「エリとしては、アンドレと上手く行かなくて、残念だったな」
お義兄様が、慰めてくれた。
「ううん、元々アンドレとは無理だったのよ。王太后様とお婆様が無理やり私とアンドレの仲を取り持っただけで、アンドレは最初から、セリーヌの事が好きだったみたい」
「しかし、この話を持ってきたのはサンタル側だぞ。そんなのは元々、サンタル国内できちんとした後でエリの元に持ってくるのが基本だろうが!」
お義兄様がそう怒って言ってくれたけど、それは私もそう思わないでも無かった。
「まあ、もう終わった事だから仕方がないわよ。次は代理でなくて、必ず本人から意向を聞くから」
私が反省して言うと、
「まだ、他の奴から話を聞くつもりなのか?」
お義兄様が不機嫌そうに言ってくれるんだけど……何をそんなに不機嫌になる必要があるんだろう?
私にはよく判らなかった。
「だって、私もいつまでもお義父様に迷惑はかけられないし」
「俺が面倒をみてやるって言ってるだろう」
お兄様が言ってくれたが、
「お義兄様は私には甘いから、そう言ってくれるかもしれないけれど、私はお義兄様の奥様ににらまれたくないもの」
「俺の嫁の事などお前が気にする必要はない」
私がそう言うと、お義兄様は更にへそを曲げてくれたのだ。
こうなるとお義兄様は頑なだ。
私は不味いと思った。
馬車の中は残りはアリスしかいないし、アリスは空気と化しているのだ。
仕方がない。私は最後の武器を出した。
執事さんが、私に帰りの馬車の中ででも、お食べくださいと私の好きな焼き菓子をくれたのだ。
さすが執事さん。よく私の好みが判ったなと不思議だったけれど。
この味はお義兄様も好きなはずだ。
私はそれを取り出すと、まだ、なにか文句を言いそうなお義兄様の口の中に放り込んだのだ。
「そもそもだな、ウグッ」
お義兄様は驚いた顔をしたが、その菓子を食べてくれた。
「どう、美味しい?」
私はお義兄様の顔を見た。絶対にこの味はお義兄様の好きな味のはずだ。
「まあまあだ」
お義兄様はまだ不満そうに言ってくれた。
「じゃあこれはどう?」
私は別のお菓子を口の中に放り込んだのだ。
これで駄目ならもう一つ入れればよいと思ったのだが、
「まあまあだ」
そう言うお義兄様が私の口にお菓子を放り込んでくれた。
「美味しい」
そのお菓子はめちゃくちゃ美味しかった。
「ほら、もう一つ」
「うーん、これも美味しい」
私はお義兄様に食べさせてもらってご機嫌だった。
この店のお菓子は本当に美味しいのだ。
「はい、お義兄様」
私は今度はお義兄様の口の中に放り込んだ。
こうして食べさせあいしたら、機嫌の悪いお義兄様の機嫌も直るのだ。
やっぱり甘いものはお義兄様にも通用するのだ。
私がいつかアリスにそう言ったら、
「それが通用するのはお嬢様の前だけですから」
とアリスは言ってくれるんだけど、お義兄様は私の前ではお菓子をとても嬉しそうに食べてくれるから、絶対にそんな事はないと思う。
機嫌の直ったお義兄様と食べさせ合っていた時だ。
馬車の窓がノックされた。
「いちゃついている所悪いな」
トマスさんが顔をのぞかせた。
「いちゃついている?」
私はその言葉に固まってしまったんだけど、お義兄様といちゃついてなどしていないんだけど……
しかし、それどころではなかった。
「レオン、後ろから騎馬の群れが来るぞ」
「来たか」
お義兄様は頷くと
「直ちに戦闘配置だ」
お義兄様の合図に騎馬が一団となって後方から来る敵と思われる軍団に対処を始めた。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
誰が追ってきたのか?
続きは明日です。
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