お母様の出身の子爵家に行くと親切な叔父が歓待してくれました
王子が拘束された後、当然パーティーはお開きになった。
「皆、ごめんね。大切なパーティーを台無しにしてしまって」
私はクラスメイト達に謝った。
私のせいで、まあ、責任の大半は婚約者の私を蔑ろにした王子にあると思うけれど、皆の楽しみにしていた卒業パーティーを台無しにしてしまったのだ。
「何言っているのよ。めったにお目にかかれない、恐竜皇子様と皇帝様の叱られる所を見られて私は大満足よ」
友人のナディが言ってくれるんだけど。恐竜皇子って言ったところでお義兄様の眉がピクリと動いたんだけど……私がきっと睨みつけたら直していた。
「エリーゼは帝国に帰るのよね?」
シャロットが聞いてきた。
「お義父様が煩いからそうなると思うわ」
「そうなったらなかなかこの国には来れないわよね」
「そんな事無いわよ。また来れると思うわ」
「まあ、あなたが来れなかっても、私達が帝国にお邪魔するわ」
シャロットが言ってくれた。
「きっとよ」
「身分の高いエリーゼ様は会ってくれないかもしれないけれど」
シャロットがおどけて言ってくれたが、
「そんな事はないわよ。絶対に会うから」
私はシャロットに会うことを約束したのだ。
「エリ、そろそろ帰ろうか」
お義兄様が言ってきた。
「判ったわ、お義兄様。じゃあ皆またね」
私はみんなに手を振ったのだ。
私がクラスの仲間とお別れして学園の馬車止まりに行こうとした時だ。
「え、エリーゼ様」
「「「エリーゼ様!」」」
遠巻きにしていた貴族たちが私に話しかけようとしてきたのだ。
「悪いが俺達は帰る。話があるのならば帝国の大使館を通してくれ」
お兄様がそう言うとトマスさんを先頭に貴族の囲みを掻き分けてくれたのだ。
みんな何か言いたそうだったが、お義兄様たちが怖くて話せなかったみたいだ。
まあ、話されたところでどうなるものでもない。
もうお義父様も知ってしまったのだ。
この国があとはどうなるかはお義父様の気持ち次第だ。
まあ、できる限り存続の方向で持っていこうとは思うが、私だけの判断ではもうどうしようもなかったのだ。
私達はアパートに帰った。
そのまま寝て翌日くらいに帝国への帰途につくのかと思いきや、お義兄様はそのまますぐに帝国への帰路に着きたいと言い出したのだ。
着替え終えて、リビングに出たらお兄様からそう告げられた。
「えっ、そうなの?ならお義兄様。出来たらアルナス子爵家の叔父様に挨拶したいんだけど」
「はああああ! 何を言っているんだ、エリ! その叔父にタウンハウスを追い出されたんだろう」
お義兄様が言ってきたんだけど、
「えっ、叔父様からは直接そのようには言われていないわ。執事さんからは出ていったほうが良いと言われたけれど……」
そう、叔父からは直接は言われていないのだ。
執事さんが言いにくそうに、出来たら屋敷を出られたほうが良いと忠告されただけだ。
叔父さんはそもそも子爵家の遠縁の親戚で、母が帝国に出ていったので、子爵家を継ぐ為に養子に入っていたのだ。なのに、いきなりポッと出の私が子爵になって、思うところも色々あったに違いない。
一言謝っておきたかった。まあ、ゲームには出てこなかったけれど、おそらく、当然のように私が乗り込んできて叔父様の位置にふんぞり返って、叔父様を散々こき使っていたんだと思う。挙句の果てには私が処刑されたら、おそらく子爵家は断絶お取り潰しで悪ければ処刑、良くてこの国から追放だったと思う。
叔父様はゲームの中では本当に私以上に大変な役回りだったのだ。
まあ、私の断罪は回避されたけれど、これからこの国がどうなるか判らない。私は一言謝って、出来たら子爵の地位は叔父様に返したいと思っていたのだ。
私が頼んだらお義父様はそれくらい許してくれると思うのだ。
「少しだけだぞ」
お義兄様は良い顔はしなかったが、叔父様の所に挨拶に行くのを許してくれたのだ。
私達はそのまま子爵家のタウンハウスへ向かった。
「これはエリーゼじゃないか! 久しぶりだね。エリーゼが3年前に、この屋敷をいきなり出て行って、私はとても心配したんだよ。やはり私の態度が良くなかったのだろうか?」
おじさんは本当に心配して聞いてくれた。
そうだ。基本はおじさんは良い人なのだ。
「ごめんなさいね。おじさん。色々あって」
私は一応謝った。執事さんから出て行けと言われたとは口が避けても言えない。執事さんは結構厳しい人だった。
執事さんも今は遠くから私達の方を睨みつけていた。なんかとても怖いから私は少し横に移ってお義兄様の陰に隠れたのだ。
「それに、本来ならば私が持っているこの子爵位も叔父さんのものだったのに。私が横取りしてしまった形になって!」
私が謝ると、
「何を言っているんだ。そもそもこの子爵位は、エリーゼが正当な後継者じゃないか。お前が継ぐのがお義母様の望みだったんだから。お前が気にすることじゃ無いよ」
叔父さんは何のてらいもなくそう言ってくれたのだ。
本当になんの欲もない良い人なのだ。
そんな人から子爵位を奪うことになって、私はとても心苦しかった。
帰ったら子爵位を叔父さんが継げるようにお義父様に頼んでみよう。
私は心に誓ったのだ。
すぐに旅立つと言った私達に、叔父さんは
「今からでは夜道になるではないか。危険だよ。お供の方々も是非ともお泊まり下さい」
親切にも言ってくれたのだ。
お義兄様もトマスさんも
「まあ、そこまで言ってくれるならば」
と叔父さんの好意を受けることにしたのだ。
本当に叔父さんはいい人だ。
私は信頼しきっていた。
それなのにこの後あんな事が起こるなんて私は想像だにしていなかったのだ
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
何が起こるのかは明日のお楽しみ。
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