お義兄様視点8 久々に会った妹はとてもきれいになっていて俺は妹をデートに誘いました
エリと王子が上手くいっていないかもしれない!
俺はこれを聞いてホッとした。
本来ならば義妹の事を思えば、ここは憤ってしかるべきだ。確かに俺も心の底ではたかだか辺鄙な所にある属国風情が帝国の剣聖の娘で俺の義妹を蔑ろにしやがってと憤っていた。
だが、それ以上にそのボケナス王子とエリが上手くいっていないのならば、まだ、ワンチャンス、俺にもあるのではないかと、俺は未来に明るい一筋の希望が持てたのだ。
今までは俺の未来は暗黒でドロドロしていて、もういつ死んでも良いと思っていたのだ。
それが未来がバラ色に見えてきた。
空は冬のどんよりした空で、平原の草木は全て枯れ果てていたが、俺には世界がとても輝いて見えたのだ。
俺が詩でも書けたなら、この素晴らしい想いを書いていただろう。
レッドもオレの心が乗り移ったのか凄まじい速度で駆けてくれたのだ。
さすが汗血馬というだけのことはある。
俺は寝る時以外は殆どをレッドの馬上で過ごした。
普通は20日かかるルートを、なんとレッドは7日で駆けてくれたのだ。
俺はサンタル王国の王都に入るやいなや、一路エリの家があるアルナス子爵家のタウンハウスへ向かったのだ。
しかし、タウンハウスはおかしかった。
俺がエリに会いたいと言うと
「エリとはどなたですか?」
と門に出てきた執事に聞かれたのだ。
「何を言っている。エリーゼ・アルナスだ」
そう言うと
「ああ、エリーゼ様ですね。今はこちらにはいらっしゃいませんが」
俺はこの執事が何を言っているのか良く判らなかった。当主がタウンハウスにいずに、どこにいるのだ? と思ったが、
「じゃあ何処にいるんだ?」
「貴方様はどちら様で?」
こいつは宗主国の第一皇子も知らないのか? それも当主のエリの義兄なのに!
と思わないでも無かったが、こんな辺境の地なら、知らないのも無理はないかと思ってやった。
帝国で俺のことをそう言うやつがいれば即座に首だ。
まあ、エリもいろいろ苦労しているのかもしれない。
それに兄の皇子だと名乗ればこの執事も仰天するかもしれないし、俺は取り敢えず、エリの兄から頼まれたレオンだと答えた。
「レオン様でございますか」
男は俺の頭の上から足先まで見てくれた。
無礼なやつだが、エリの事を心配してくれているのかもしれないと俺は良い方に考えてやったのだ。
執事は何か書いていたが、それは地図のようだった。
「おそらくこちらにいらっしゃるかと」
執事は地図をくれた。
「判った」
実は良く判っていなかったが、エリに会えるならそれで良いだろう。
俺はそのまま、その地に向かったのだ。
「ここか」
その地図が指していたのは、流行っているレストランだった。
入るのに皆、並んでいるのだ。
エリくらいの年の可愛い格好をした女が案内していたので、聞こうとしたのだが、
「お客様、こちらが、列の最後尾です」
と聞く前に並ばされたのだ。
なんともおっちょこちょいの店員だな、と思いつつ、足の少し出ているスカートと派手な色のブラウスの制服とおぼしき格好をしている女の言うとおり、取り敢えず並んでみようと思ったのだ。
そういえば、昔、エリと街を歩いている時にこんな格好がしたいとか言っていたな、と思い出した。俺はエリに、そんなはしたない格好は駄目だと言って膨れられたのだが……
まあ、エリのそんな格好を見てみたいという気もあったが、兄としての常識が勝ったのだ。
俺は、そんな格好のエリを実際に見られることになるとは思ってもいなかった。
列は思ったよりは早く進んだ。
「こちらでございます」
女の子が、席に案内してくれようとした時だ。
向こうから、帝国貴族を名乗る男の叫び声が聞こえた。
俺はため息をつくと、近くに寄ったのだ。帝国の威を借るボケ貴族が偶にいるのだ。東方10カ国でやってくれた時には貴族の爵位を没収平民に落としてやったのだ。
その男はなんと、女の子に手をあげようとしていたのだ。
俺はうんざりしつつ、振り上げた男の手を止めた。
「貴様、何をするのだ!」
俺はその貴族とおぼしき男に注意していた。
「邪魔をするな! 俺は帝国の貴族だぞ」
男は俺を見て、言い放ってくれたのだ。おいおい、狂犬皇子だとか恐竜皇子だとか、散々言われて怖れている俺の顔を帝国貴族が知らないのか?
俺は唖然とした。
「それがどうした?」
帝都でこんなことをしたら、即座に降爵だぞ。俺はまじまじと男を見てやった。
「あなた、この方の制服は帝国の士官の制服よ」
連れの女が慌てて言った。
おい、この女も俺の事を知らないのか?
俺は自分の知名度に疑問を感じだした。
ひょっとして軍関係以外は俺の知名度は低いのか?
「何だと」
男は改めて俺を見てくれたが、
「これ以上事を荒立てると憲兵に突き出すが」
俺はムッとして男に忠告した。
「くそっ、覚えておけよ」
男は俺らに言い放つと慌てて出て行ったのだ。女が慌てて後からついて行く。
俺に覚えておけとは良く言ってくれた。絶対に覚えておいてやる。
降爵、いや、不敬罪で処刑か?
「憲兵に突き出した方が良かったか」
俺は一人呟いていた。
「皆さん。帝国の人間がお騒がせした。お詫びとして今日の料理代金は全て私が持つ。好きなだけ飲み食いしてくれ」
俺の言葉に歓声がわく。
俺は帝国のボケナス貴族のせいで、余計な出費になった。後で倍にしてあの男に請求してやる。
そう考えつつ、俺は女を見て、
「大丈夫か…………お前、エリじゃないか!」
見事に固まっていた。
嘘だろう!そこにはなんとはしたない格好をしたエリがいたのだ。
でも、めちゃくちゃ可愛くなっている!
俺は目を見開いていた。
「お義兄様!」
エリは驚いて、俺を見た。
俺は後ろで頭を振っているアリスとセドリックを睨み付けた。
「ちょっと来い!」
俺は強引にエリをレストランの柱の陰に連れて行った。
エリは慌てて、周りに指示して、俺を個室に案内してくれた。ここではエリは指導的な立場であるらしい。
「で、どういう事だ、エリ!」
俺はエリに聞き出そうとしたが、エリはニコリと笑ってくれたのだ。
思わず俺も笑いそうになったが、いかん、誤魔化されては。俺はニヤけた顔を改めてエリを見た。
「笑ってごまかせるとでも」
俺は平静を装って聞いていた。ニヤけた顔も直ったはずだ。
「嫌だわ。お義兄様。これも社会勉強のうちなんです」
笑顔でエリが誤魔化してくれた。
何が社会勉強だ。
エリは自分が本来ならば爵位なしの平民だと言い始めたのだ。だから手に職をつけるために働いていると。俺は何をエリが言っているのか判らなかった。王子に振られたら俺と結婚すれば良い話だ。
それに爵位なら東方10カ国を降ろしたからいくらでもあるのだ。多くの騎士の女神をしているエリに1つくらい渡しても全然問題はない。
まあ、今はそれはどうでも良い。
それよりもこの国の王子のエリに対する態度だ。俺は父に報告すると言ったのだ。
そうしたらエリが反対してきた。
エリとしてはなんとしてもこの国を存続させたいらしい。
俺としてはエリをさんざん蔑ろにしてくれた王子を、この国の王家に命じて直ちに断罪して処刑してやりたい気分満々だったのだが、エリがなんとかしてこの国を存続させたいと言い張ったのだ。
まあ、俺としてはこんな吹けば飛ぶような国どうでも良かったので、エリが頼み込むなら考えないでもなかった。
俺の最優先はエリを取り敢えず、無事に帝国に連れ帰って、最終的に俺と婚約させることだった。
でも、エリは全然俺を異性と見てくれないし、このままではまずい。
そうだ。俺は良いことを考えたのだ。
俺はエリをデートに誘うことにしたのだ。デートに行けば少しは俺を異性として意識してくれるはずだ。
「明日1日俺を連れてこの王都を案内してほしいんだ」
「本当に! 私、一度で良いから行ってみたいお店があるの。でもそこはカップル限定だから私一人では行けなくて。お義兄様お願い。そこに連れて行って!」
俺はデートにエリを誘おうとして、エリはなんと俺にカップル限定喫茶に連れて行けと、言ってくれたのだ。もうそれは完全にデートだろう。
よし、そこでいい雰囲気になれば告白しよう。
俺はそう決めたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
果たしてエリはお義兄様を異性として意識してくれるのか?
続きは明日です。
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