お義兄様視点7 妹が苦労していると聞いていても立ってもいられなくなって全てを弟たちに任せて妹のもとに飛んでいきました
テルナン王国を占拠した後、俺はトマス達に一人で飛び出したことを散々怒られた。
「お前は判っているのか? お前に追いつくために皆めちゃくちゃ無理したんだぞ! 指揮官が一人で飛び出すバカが何処に居るんだよ」
「ああ、すまん、すまん、ここにいるよ」
俺はエリに振られて半分やけだったから、何も考えなかったが、俺が飛びだすのを見て慌ててついて行こうとしてくれた部下たちは大変だったと思う。
何しろその行軍の途中で半数が落伍したのだ。部下たちがいかに慌てたか想像できた。何しろ我軍は帝国の中でも一二を誇る訓練の厳しさなのだ。その半数が落伍したということはその行軍がいかに凄まじいものだったかを明確に物語っていた。
「敵が攻めてこなかったから良かったものの、後ろから襲われていたら半数が死んだんだぞ」
トマスの言う事はもっともなので、俺は言わせるだけ言わせることにしたのだ。
まあすべては俺が悪いのだ。
どのみちならば、エリの父のバージルみたいに皆のために戦死すれば、エリは少しは俺のことを思って泣いてくれたんだろうか?
やさぐれた俺は叱られながらそんな事を考えていた。
死ぬ気満々の俺が総指揮官を取っている帝国も帝国だったが、その帝国に負けるテルナンもテルナンだった。
余程油断していたのだろう。
本来ならば俺が一人で突っ込んでくる段階で俺を捕まえるなり何なりすればよかったのだ。
何しろ俺は一人だったのだから。
最もそうなっても俺は死力を尽くして一人でも多く道連れにしたと思うが……
一人と思って侮ったか、偵察をちゃんとしていなかったのか、俺を偵察だと見誤ったのか。
テルナンの王族の多くは捕まえた。
これから尋問して俺の母の暗殺に加わったものは処刑だろう。
それ以外は監禁されて一生を過ごすか、平民に落とすかだ。まあ、そのような事は全て父に任せれば良いだろう。
と言うか、本来俺は侵略だけをやるという約束だ。この地の占領統治は前線基地にいる俺のすぐ下の弟のローレンツが第2軍を率いて来るはずだ。
そして、1年くらいして庶民が帝国に慣れれば最後にその下のマルクスが文民と第3軍を率いて乗り込んでくるはずだ。
今、一番下の弟は与えられた第3軍の訓練に余念がないはずだ。
それ以外に国境の地に2個軍団が待機していた。
俺が父から授けられたのはこの5個軍団5万人の兵士を使って良いとのことだった。
しかし、俺は国境の2個軍団は使う気がなかった。この二個はチエナに対しての押さえだ。
チエナに残してきた文官たちからはチエナの不穏な動きは知らせてこなかったが、俺がテルナンを落としたことでこれから変わっていくはずだ。
十二分にチエナの動きは注意するように国境の2軍団には伝えてある。
まあ、俺はもう人生なんてどうなっても良いんだから、別にチエナ相手に怯えることもない。
いざとなったら華々しく1大決戦やって死んでも良いのだ。
その時はチエナの軍10万くらいは道連れにするつもり満々だった。
しかし、俺のやる気を知ったからか、そうか、主戦派のテルナンが早々に占拠されたからか、次の占領予定国のピエラとリセールから講和の使者が送られてきたのだ。
俺はそんな講和の使者なんかハナから信じていなかったが。
案の定、二国の講和は見かけだけで、俺は1年かけてその2カ国を落とした。この3国が一番大きかったのだ。残りはくずに等しかった。
残り7カ国は恐慌を来して全軍を集結してきた。何とか7万の軍勢をかき集めてきたみたいだ。
俺はこれに対して主力の3個軍団と、現地で調達訓練した3万の計6万で当たったのだ。
後に東方最後の決戦と呼ばれる戦いだ。
戦いは一瞬でついたのだ。
俺の一軍が俺の指揮のもと突出、中央突破をしてのけたのだ。
それで敵軍は四散してしまったのだ。
大勝だった。
後は掃討戦だ。
そんな時だ。俺の元にエリ付きの侍女のアリスから手紙が来たのだ。
帝都経由だからかやたら時間が経っていた。
日付を見ると半年以上前の日付けになっていた。
その手紙には、請われてエリが来たにもかかわらず、サンタル王国から蔑ろにされている事がつらつらと書かれていたのだ。
「エリが蔑ろにされているだと!」
俺は信じられなかった。
俺は一回目のエリの手紙が婚約者のアンドレがいかにエリを大切にしてくれるか書かれていたので、それ以降は一切エリからの手紙に目を通していなかったのだ。
宮殿の文官に適当に当たり障りのないことを書いて返事するようにと指示を出していたことを思い出した。
俺は直ちにエリの手紙を送るように文官に指示を出した。
そう言えばそろそろエリは卒業だ。
そして、俺は10カ国の大半を降ろしていたのだ。
こうなったらエリの所にすぐに行って確かめよう。それに上手くいっていなのならば俺がプロポーズしても良いはずだ。
俺は直ちに敵の敗戦処理をすることにしたのだ。ちまちました掃討戦などやってられない。
残りは五国、三国には俺を含めて兄弟をそれぞれ充てて占拠に向かわせた。
俺はその王宮占拠でまた一人先行、トマスらが止める間もなく、王宮に乗り込み爆裂魔術を所かまわず発射、城門を逆から破壊して、一気に占拠させたのだ。
まだ抵抗を続けている国には属国になることで許してやる旨の書簡を文官に持たせた。
これに反するなら、父親の皇帝に判断を仰ぐが、皇后を殺された皇帝の恨みは強く、どうなっても知らないからなという旨の脅しをつけてやったのだ。
そうしつつ、弟たちにまだ落ちないのかと督促した。弟たちには現地軍もつけているのだ。
二国は即座に属国になることを首肯してきた。弟たちは降伏しなければ俺を差し向けるとかとんでもない書面を籠城している城兵に送り付けてあっさり落としてくれたそうだ。まあ、良い。落ちればよいのだ。
俺は後の雑用は全て弟たちに丸投げして、というか、二人が俺が出奔するのを気づく前にサンタル王国に向けて出発したのだった。
レッドは俺の気持ちを察してくれたのか通常なら20日以上かかる道のりを一週間で駆け通してくれたのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
エリと出会う前のお義兄様でした。
後一話だけお義兄様視点をあげてエリーゼ視点に戻す予定です。
話しはまだまだ続きます。
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