お義兄様視点4 騎士の叙任式で何も知らない女神役の妹にプロポーズしました
日間異世界転生恋愛連載ランキング第3位すべてが6位
連載は恋愛も5位、総合も12位となりました。
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翌朝、俺はまだ暗い間にエリの部屋からエリを起こさないようにそっと出てきた。
エリも少しは母上が死んだショックが和らいだはずだと信じたい。
外では目を吊り上げたエリ付きの侍女のアリスがいた。
「レオンハルト様。今日だけですからね」
アリスが言ってきた。
俺はそのアリスに了解の合図で手を掲げた。
「でも、本当に有難うございました」
頭を下げてくるアリスに俺は首を振った。
別にアリスのためにやったわけではない。自分がしたいからやったのだ。
小さいときからそうだったが、エリは本当に暖かかった。俺はそのぬくもりを絶対に手放さないと心に決めたのだ。
「おはようございます」
翌日の朝食の場に出てきたエリは元気いっぱいだった。
「シス、昨日は寝れた?」
「うん、なんとか」
エリの質問に眠い目をこすりながら一番下のシスが答えていた。
シスはスプーンを動かして食べていたが、すぐにスプーンを置いた。まあ、母が死んだショックからまだ立ち直っていないのだろう。何しろまだ6歳だ。
「どうしたの? シス」
エリが聞くと
「あんまりお腹が減っていない」
「だめよ、もう少し食べないと」
「うーん、でも……」
「だめよ。今日から剣術の訓練再開するんでしょ。食べておかないと。食べさせてあげるから」
そう言うとエリはシスのスプーンを手にとってヨーグルトをすくうとシスの口の中に入れた。
「判った。お姉様が食べさせてくれるなら頑張る」
「そう、頑張って」
そう言うとエリはシスの口の中にすくったヨーグルトを入れた。
俺は食べさせてもらっているシスが少し羨ましかった。そう言えば俺は母にもそんな事をしてもらった記憶はなかった。俺もスプーンを置いて口を開けてみようかと馬鹿なことを考えた時だ。
エリの横のマルクスが同じことをしているのを見て俺はぎょっとした。
「マルクス、お前は何をしているのだ」
俺の横の父が呆れて注意した。
「すみません」
父に叱られて慌ててマルクスは食べだした。
俺も馬鹿なことをせずに良かったとホッとしたのだ。
その時からエリはシスの手前もあるのか、とても元気になった。俺から見れば、エリは無理して元気なふりをしているように見えたのだが、母上が亡くなった悲しみを忘れるためにはその方が良いのかもしれないと思ったのだ。
「レオンハルト、その方もそろそろ騎士の叙任を受けるのだな」
父が改まって聞いてきた。
俺は学園を卒業したので、騎士の叙任を受けることになっていたのだが、今年は疫病が流行ったのと母上の葬儀で遅れていたのだ。
「そうです。疫病も収束しましたからそろそろかと。今年はその女神役はどうされるのですか?」
俺は父に聞いてみた。
「今まではエミリーがやっていたが亡くなったからな。今回はロザンヌ公爵夫人に頼もうかなと思っている」
「エリでは駄目なのですか」
父の言葉に俺は提案していた。
「えっ、私ですか?」
いきなり話を振られてエリは驚いていた。
「確かに、エリーゼは剣聖バージルとエミリーの娘だから資格的に問題はないと思う。しかし、エリーゼはまだ12歳だぞ。12歳の子供にはまだ無理なのではないか」
父はこう言ってきたが、俺としては落ち込んでいるエリに何かさせたかった。母上がやっていたことをエリが引き継げば、エリも喜んでやるのではないかと思ったのだ。
「あの、お義父様。出来たら私、やりたいです。お母様がやっていた事で私でお役に立つのならば」
エリが自ら進んで頷いてくれたのだ。
「しかし、騎士の叙任の女神役は大変な役なんだぞ」
「俺も横で見守ります。それなら問題ないのでは」
「大変なのも判っていますが、私もお母様の代わりが出来たらとても嬉しいです。母も私がやれば喜ぶかと」
俺とエリが頼むと、父は気難しそうな顔でエリを見ていたが、最終的には承諾するしか無かった。
母上のことを出されたら父としては頷くしか無かったのだ。
でも、騎士の叙任式の女神役は大変な役なのだ。
エリはまだ何が大変かは理解していないと思うが、何しろ騎士の叙任を受けるものは帝国中から集まってくるのだ。その数は何千人になる。その一人ひとりに対応しなければいけないのだ。この叙任式ばかりは母上も終わった後は、本当に疲れ切った顔をして、下手したら数日寝込んでいたのだ。
その事をエリは知らなかったのだ。
後でなんで教えてくなかったのよお義兄様と怒ってきたが、頷いたのはエリだ。
でもエリの体力なら大丈夫だろう。何しろ小さいときからわんぱく盛りの俺に付いて走り回っていたのだ。
それに何より、俺がエリに誓いたかったのだ。
そして、式の当日がやってきた。
宮殿の大広間で騎士の叙任の儀は行われる。
中央の壇上にエリが立ち、その後ろには祖母の公爵夫人が椅子に座っていた。
エリの横には父の皇帝が立っていた。父は母上がやる時以外は普段はいないのだが、今日はエリが心配で様子を見に来たのだ。
後は大将軍でエリの祖父のロザンヌ公爵もいるし、帝都にいる各軍の責任者もいた。
中央のエリは母が亡くなったところなので黒いドレスを着ていた。
今日は病で亡くなった母の代わりに小さいエリがやるのだ。
軍の中では、その話で持ちきりだった。何しろエリは帝国軍が全滅するのを自らの命を犠牲にして防いだ剣聖バージルの遺児だ。
そして、亡くなった皇后の娘でもある。
その小さなエリが亡き母に代わって父のような立派な騎士にみんなが育ってくれるように女神役を自ら志願したと。それを聞いて騎士の卵たちの中には感激に咽び泣くものまでいたらしい。
そんなみんなの見守る中、まず俺がエリの前に歩み出たのだ。
エリは少し不安そうな顔をしていたが、俺が頷くと微笑んできた。
まあ、俺は何回もエリの練習に付き合ってやったのだ。俺相手にやるのは慣れているはずだ。
それにこいつは初めて会った時に俺様に向かって馬になれと言い放った女だ。度胸は座っていた。
俺はエリの前に跪いたのだ。
「我、レオンハルト・ロアールは女神の騎士となりて終生わが女神エリーゼ・ロザンヌの為にこの身を捧げ護ることを誓います」
俺の言葉に一瞬エリは目を見開いた。俺が練習とは違う言葉を誓ったからだ。
父や祖母は驚いて俺を睨みつけてきたし、将軍たちも驚いたのだが、神聖な場では何も話せなかった。
戸惑ったエリだが、手に持っていた宝剣で俺の肩を叩いてくれた。
そして、
「あなたの誓い許します」
俺の誓いを許してくれたのだ。
俺は思わず手元で軽くガッツポーズをした。
そう、俺が言った誓いの言葉は、最近、騎士が好きな女性にプロポーズする時の言葉だったのだ。
それを何も知らないエリは認めてくれたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
続きは明朝です。あと少しお義兄様視点が続きます。
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