サンタル王国王子視点2 地味女の兄と称する男もあまりに目に余る事をしてくれるので地味女と一緒に断罪することにしました
昨日なろうのメンテナンスが伸びた影響で前話が深夜更新になってしまいました。
まだの方は前話お読みになってからお読みください。
「これは殿下、ようこそ、我が屋敷に」
俺はセリーヌを迎えにモンテロー公爵家に行ったところでその父の公爵に迎えられたのだ。
「これは公爵。久しいな。国境沿いの領地は結構大変か」
「いえいえ、最近は帝国の連中が魔物を狩ってくれておりますからな。結構助かっております。帝国としては余程エリーゼ様が大切なのだと思いますぞ」
「まさか、皇族の妾の連れ子にそこまで固執はしまい」
俺は、公爵の言葉を否定した。
「左様でございますか? エリーゼ様は帝国では結構大切にされていたと聞いたことがあるのですが……」
「そのような事はあるまい。帝国の大使が所詮妾の連れ子だと馬鹿にしておったぞ」
「左様でございますか。私の勘違いならよろしいのですが。
帝国の皇帝陛下がそれほど大切にしているエリーゼ様の代わりに、殿下が我が娘をエスコートなどして頂いてもよろしいのかと少し不安に思っておりましたので」
公爵が多少不安そうに言ってくれた。
「そこは大丈夫だ。皇帝としても今は亡き皇族の妾の娘をこの国に厄介払いできて清々しているそうだと、帝国の大使が申しておったからの」
「そうですか。それを聞いて臣も安心いたしました」
心の底から安心したように公爵が申してくれた。
「アンドレ様」
そこへ、真っ赤な衣装に身を包んだセリーヌが現れた。
セリーヌは本当に赤いバラのように可憐できれいだった。
「セリーヌ、今日もきれいだ」
俺はそんなセリーヌに微笑みかけたのだ。
「ありがとうございます。アンドレ様もとても素敵です」
俺達は寄り添うように馬車に乗ったのだ。
やはりセリーヌのほうが、あの野暮ったいエリーゼより余程俺には相応しい。
そんな可憐なセリーヌを守るためにも、俺は予定通り、エリーゼを婚約破棄して断罪するつもりでいた。
そのために今日は近衛騎士をいつもの倍の20人も引き連れて来たのだ。例え破落戸のような兄がいても二十人の近衛騎士の前には手も足も出まい。
しかし、俺の考えが甘かったのは、学園に着いた時に判った。
馬車が王立学園に着いた時だ。
いきなり馬車が止まったのだ。
俺は前の椅子に投げ出されていた。
「大丈夫か?」
一緒に投げ出されたセリーヌを抱き起こすと顔を椅子にぶつけたみたいで、赤くなっていた。
「何をしているのだ」
俺が馬車ののぞき窓から御者を怒鳴りつけると
「それが殿下、いつもの場所に別の馬車が止まっておりまして」
動揺した御者が言う。
俺が慌てて、外を見ると俺の騎士が揉めていた。
扉を開けて外を見ると、その前には帝国の騎士がいた。
「貴様ら、どういうつもりだ。ここはアンドレ殿下の馬車の位置だぞ」
「何を言う。当然ここは、皇帝陛下の代理人たるエリーゼ様の馬車の位置だ」
我が方の騎士に生意気にも帝国の騎士が反論してきたのだ。それもあの地味なエリーゼが俺よりも上だと帝国の騎士が叫んでいるのだ。
何という事を言っているのだ。何故、皇族の妾の娘がこの由緒正しきサンタル王国の世継ぎたる俺よりも上になるのだ。これも、ヤクザなエリーゼの兄の入れ知恵か!
俺は怒りのあまり頭が沸騰しそうになった。
いかん、いかん、大事の前の小事だ。ここで騒ぎを起こすわけにはいくまい。俺は深呼吸をした。
ふんっ、帝国の騎士も所詮田舎者だ。俺が一言話せば恐れ入って馬車をどけるだろうと俺は思ったのだ。
「帝国の騎士とやら、私はこの国の第一王子だ。そこを空けてもらえないか、降りられないのだが」
俺は尊大な態度で言ってやったのだ。
「左様でございますか。横にでも止めて降りられれば宜しかろう」
なんと生意気なことに騎士風情がこの国の跡継ぎの俺様に平然と反論してきたのだ。俺には信じられなかった。さすがの俺様も切れた。
「な、何だと、貴様。騎士風情がこの国の第一王子の俺に反論するのか」
「申し訳ないが、これは皇帝陛下の直命である。文句があるのならばそちらの国王から陛下に奏上されれば宜しかろう」
なのにだ。この騎士は傲然と俺様に反論してきたのだ。我が国の騎士ならばその言動だけで処刑ものだ。こいつらはそこまで我が国を馬鹿にしてくれるのか!
「な、何だと、貴様、第一王子殿下に逆らうのか」
平然と言い返してきた騎士達に我が方の騎士たちがいきり立った。
「ほううう、やるのか。我らに手を出すのは帝国への反逆と取るがそれでよいのだな」
一人の騎士がそう言うと剣の柄に手を当てたのだ。
残りの3人の騎士もそれに続いたのだ。
この騎士四人にこちらの騎士は20人。勝てないことは無いが、ここで、問題を起こすと、さすがに、後の断罪に響く。ここは我慢することにしたのだ。なあに、会場には騎士を連れて入れないはずだ。エリーゼを断罪収監するのは容易かろう。下手に騒ぎを起こしてエリーゼに逃げられたらたまったものではない。俺はここは我慢することにしたのだ。
「止めよ」
俺は騎士たちを抑えた。
そうしながら俺は屈辱を耐えていた。
おのれ、エリーゼめ。帝国の威を借りやがって、もう許せん。こうなったら絶対に断罪してやる。俺は心に誓ったのだ。
「殿下、よろしいのですか」
セリーヌが驚いて言ってくるが、
「ここは、我慢するのだ。この借りは後で必ず返す」
俺はセリーヌに説明してやった。
俺は馬車を帝国の馬車の後ろに止めさせたのだ。
そして、俺達は会場内に入った。
普通は王子の俺が入ると全員立ち上がって迎えてくれるはずなのだ。
なのに、貴族たちは立ち上がってくれたのだが、真ん中の連中が全く立ち上がろうとしないのだ。
温厚な俺も流石にムッとした。
周りの騎士たちはオロオロしている。
中心にはいかにも威張った男がエリーゼを横にして談笑していた。
そして、その後ろには屈強な感じの帝国の騎士を6人も引き連れていたのだ。
何処の誰だ。帝国の騎士を学園内に入れるのを許可したのは!
これでは事はすぐに起こせないではないか!
俺はブチギレた。
「貴公等何故立ってお出迎えしない」
傍の伯爵令息がやっと言ってくれた。
「何を言う。本来王子ならば、皇帝陛下の代理であるエリーゼ様をお出迎えせねばならぬ立場であろうが。それが遅れてくるなど言語道断。この事を陛下が知られれば激怒されることであろうよ」
騎士の一人が大声で叫んでくれたのだ。
貴族たちはぎょっとした顔をしているが、何故、エリーゼが帝国の皇帝の代理などになれるのだ。
俺は余程言い返してやろうかと思った。
「まあ、そう言うな、トマス。第一王子としてもいろいろと予定があったのだろう」
俺はその兄とやらを睨みつけた。こいつ、この国の王子の俺を敬語なしで語ってくれた。この国の王子たる俺を!
「婚約者のエリーゼ様をほっておいてですか」
その騎士は生意気にも更に言ってくれたのだ。
「まあ、その言い訳は後できっちりとつけてくれるだろう」
傍若無人な男が笑ってこちらを見てくれた。俺はその鋭い視線に一瞬ヒヤリとした。
それほどの威圧感だったのだ。
しかし、その思いも次の瞬間には飛んでいた。
「学園長。遅れてきたやつが揃ったのなら、さっさと早く始めてくれ」
男は傍若無人にも言い放ってくれたのだ。
俺はこの国の第一王子だ。こんな失礼な対応をされたのは生まれて初めてだった。
さすがの俺も怒りで怒鳴りつけそうになった。
「殿下」
横にいたレトラが押さえてくれた。
そうだ。今日は断罪にレトラも加わってくれるのだ。
もう良い。こうなったら、エリーゼもろともこの伯爵を騙った詐欺男も断罪してやる。
俺は決断したのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
怒り狂った王子の前にエリーゼの運命や如何に?
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