表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/142

鑑定の神はおばあちゃん?(10)

 実際のスキルの授受は、ただ手をかざせば済む。

 だが、明らかにミズイはタカトに恩を着せる気満々で、必要以上に大げさな演出をしていた。

「はぁぁぁあ!」

 という大声とともに、ミズイは両手をバンッとタカトの目前に突き出す。

 その勢いに、タカトは思わず両腕で頭をガードしてしまった。

 ──何か来る!? 来るぞ!?

 だが、ミズイのしなびた手の先から発せられたのは、神の力ではなかった。

 ふわりと漂ってきたのは、酸っぱくて線香のようで……何とも言えない、あの独特なニオイ。

「くっさ!!」

 目を閉じて、動けなくなったタカト。

 もうこれは神の恩恵でも加護でもない。ただの老人の加齢臭である。

 

 ……無音の時間。


 何の変化も感じられないまま、タカトは恐る恐る目を開けた。

 ――あれ……もしかして、もう終わった?


 頭をかばっていた両腕を、ゆっくり、ゆっくりと下ろしていく。

 ――でも……なにも変わってないような……気がするんですけど……?


 とりあえず、横にいたビン子にそれとなく聞いてみる。

「ビン子、俺、何か変わった?」


「ううん」

 ビン子は首を振った。

 だって、そこに立っているのは、どう見ても――いつも通り頼りなさそうなタカトだったからだ。


 一方、両手を突き出したままのミズイも、不思議そうに首をかしげていた。

 ――あれ?


 本来であれば、この段階でタカトは金色の光に包まれ、神の恩恵が発動するはずだった。

 だが、彼のまわりにあるのは……イカ臭いニオイだけ。


 ――おかしいのぉ……まさか、こやつ、すでに『鑑定』より上位のスキルを持っておるというのか?


 * * *


 スキルとは、人が持つ“技能”のようなものである。

 たとえば、足が速い、文章がうまい、数に強い──といった、現実でもおなじみの才能。

 だがこの世界には、人を操る「誘惑」や、未来を見通す「鑑定」といった、いかにも“スキルっぽい”能力も存在する。

 さらには、時間を飛び越えたり、運命を無理やりねじ曲げたりする、チートじみたスキルまで……。

 とはいえ、たいていの人間は、生まれつき何かしらのスキルを“経験スキル”として持っている。

 ただし、その種類やレベルは人それぞれ。

 ただ、持ちうるスキルのレベルが人それぞれなのだ。

 ……思い出してみてほしい。小学生の頃のことを。


 足の速いやつ、遅いやつ。

 絵が上手いやつ、音感の鋭いやつ。

 そして、やたら先生の顔色だけ読むのが異様にうまい、謎の才能のやつ。


 そんなふうに、この世界のスキルも本当にバラバラなのだ。

 ただし、ひとつだけすごい仕様がある。

 ──上位のスキルで、下位のスキルを“上書き”できる!

 たとえば、足が遅くても「俊足スキル」をもらえば、ちゃんと速くなれる。

 ……いいなぁ〜。


 * * *


 とはいえ、そんな都合よくスキルがもらえるわけじゃない。

 スキルの源は“神の恩恵”。

 つまり、神が自らの生気──命を削って相手に力を分け与える、超リスキーな行為なのだ。

 確かに、融合国を支配する神・スザクのように、国中の神民から生気を吸い上げられる存在なら話は別。

 ほぼ無限にスキルをばらまくことができる。だからこそ、融合国内では誰もが「融合加工」の恩恵を受けられるわけだが……

 ミズイのように、神民を持たない“ノラガミ”にとっては、話が違う。

 失った生気を簡単には補給できないのだ。

 つまり、神の恩恵を無理に与えれば、生気が枯れ、やがて“荒神”と化す。

 最悪の場合、荒神爆発を起こして消滅……それは、神にとっての“死”を意味する。

 だからこそ。

 死ぬとわかっていながら、「はいどうぞ〜」とスキルをホイホイ与えるようなバカな神など、いるはずがないのだ。

 

 ミズイは顔をぐっと近づけ、タカトの瞳を覗き込んだ。

 鑑定の神たるその視線に反応するように、タカトのステータスが瞳の奥に浮かび上がる。


 対応戦力等級……1。


 ――この小僧、電気ネズミ(制圧指標3)よりも弱いではないか。

 そう、鑑定の神であるミズイは、相手の目を見るだけで、その者のスキルや能力、果ては内面まで見通すことができるのだ。


 だが、そんなミズイの眉間に、ここへ来て深いしわが寄っていた。

「お主、すでに上位の経験スキルを持っておるなら、早く言わんか!」

 声には思わず苛立ちも混じる。

「これ以上、スキルは与えられんというのに……!」


 経験スキルとは、本来──

 “一つの命に一つだけ”与えられる、魂に刻まれた才能のようなもの。

 例外など、あるはずがなかった。


「しかも……多重スキル、だと?」

 ミズイの声に、驚きと困惑がにじんだ。


 タカトには、なぜか“経験スキル”が二つある。

 本来、これはあり得ないことだった。

 もちろん、神民や騎士であれば、所属に応じて『神民スキル』『騎士スキル』といった“身分スキル”を別途持つことはある。

 その上に、自分だけの“経験スキル”が一つ。つまり、スキルを二つ、三つと持つこと自体は珍しくはない。

 だが、それは“種類”が違うだけの話。

 同じカテゴリ──たとえば“経験スキル”が二つある、というのは話が別だ。

 これは、本来なら絶対に起こりえない現象。

 ……まあ、ここまで読んできた勘の鋭い読者の方なら、もうピンときているかもしれないが。


 ――やはり、あの時の感触は間違っていなかったようじゃ……

 ミズイは初めてタカトと出会った日の違和感を、鮮明に思い返していた。


 あの時、コンビニの前で倒れこんだ自分に、タカトは命の石を握らせた。

 その瞬間、ミズイの瞳に映ったのは――光り輝く少年の姿だった。

 生気に満ちあふれたその姿。

 ――人間か?

 いや……どこか違う……神でもない。

 言うならば、神と人の“混血”か……

 なぜ、そんな存在がいるというのだ……


 ――やはり、こいつには何かがある……

 今まさに、タカトの多重スキルの鑑定を終えたミズイの疑念は、確信へと変わっていた。

 ――コイツなら……もしかしたら、妹のアリューシャやマリアナを探し出してくれるかもしれん……

 そんな淡い期待を胸に、ミズイは再びタカトの瞳の深淵を覗き込む。


 ……ダレダ……ワレ……ヲ……ヌスミミル……ヤカラハ……


 その刹那、ミズイの背筋を無数の蛇が這い回るような、重く冷たい恐怖が駆け抜けた。

 ――ひぃい!

 思わずその場から飛びのき、目を押さえて震えだす。

 神であるミズイでさえ、覗いてはいけないものを見てしまったような気がしたのだ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ