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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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鑑定の神はおばあちゃん?(8)

 そう、驚くべきはその重量だ。

 ほろ苦い食材がぎっしり詰め込まれたこのパイは、なんと一個あたり約500グラム。

 参考までに、直径18センチのミートパイが約800グラムだから、その半分以上の重さがあるということになる。


 しかも、「パイパイ」という名の通り、タカトの弁当箱には当然のように二個入り。

 合計1キロ――重い、重すぎる!

 これはもう、「思いでぽろぽろ」どころか「腕がぷるぷる」になるレベルの重さだ。


 むっちりと顔をのぞかせる二つのパイは、まるでEカップのオッパイが生えているかのように見えた。

 ちなみにEカップのバスト重量は片側約500グラムとも言われている。

 なるほど……これなら、ぶら下げている方も泣きたくなるのは当然かもしれない。


 ──と、その時だ。

 ビン子が首の付け根を押さえ、肩をぐるぐると回しているのに気づいた。

「いやぁ~確かに重いわ……これ……」

 そう言われてみれば、今日のビン子の胸、なんだかほんの少しだけ膨らんでいるような?


 うーん、おそらく……Bサイズ!

 え? Bサイズ?

 かつて“無乳のビン子”と呼ばれた彼女が、Bサイズとは!?

 ……まさか──

 ビン子さん、その胸に詰まっているのは、あの『思いでぽろぽろほろにがパイパイ』そのものだったりしません⁉


 そんなビン子を相手にすることもなく、タカトは弁当箱からパイの包み焼き──『思いでぽろぽろほろにがパイパイ』を一つつかむと、母犬の鼻先にそっと置いた。

 だが、母犬はそれをくわえると、今度は子犬の前に丁寧に置き直したではないか。


 呆れたタカト。


 仕方なく、弁当箱に残っていた最後の一個──もうひとつの『思いでぽろぽろほろにがパイパイ』も母犬の前に置いてやる。

「お前もちゃんと食べろよ……」

 ……って、おい。

 お前、まさか……ただ食べたくなかっただけなんじゃないのか?

 悪魔のデバフ付きだからって敬遠してんじゃねえよ!

 ――アホか! ウ○コが大きくなるだけで、食えないわけじゃねえんだぞ!これ!


 そんな様子を傍らで見ていたヨークは、ふと足元の子犬に目を落とした。

 両手にすっぽり収まるほど小さな体。

 だが──その額には、ほんのわずかに角が生えていた。


 ──この子犬……まさか、半魔か。


 半魔とは、動物と魔物の混血種のことだ。

 混血ゆえに人魔症にかかることがなく、古くから重宝されてきた。

 さらに、魔物の特性を一部受け継いでいるため、普通の生き物より特異な能力を持つことも多い。

 実際、今ヨークが乗っている軍馬も半魔である。


 だが──問題は見た目だ。

 尖った耳、六本の脚……その姿はどうしても魔物を連想させ、忌み嫌われてしまう。


 ヨークは、子犬に餌をやるタカトを見つめながら尋ねた。

「お前、変わってるなあ……半魔にエサなんかやって、何かいいことでもあるのかよ」

「別に特別なことはないよ。でも、母犬が死んだら、この子も生きていけないかもしれないからな……」


 ヨークは肩をすくめ、あきれたように言う。

「今だけエサをやったって、何も解決しないだろ。そういうのを自己満足って言うんだぜ」

「……そうだな」


 だがタカトは、『思いでぽろぽろほろにがパイパイ』を嬉しそうにむさぼる母犬と子犬を、どこか満ち足りた表情で見つめていた。


「そうさ……ただの自己満足だ」

 ヨークはふと視線を遠くへ向ける。

 まるで、自分の口から出た言葉をそのまま自分自身に返しているかのように。

 ──そう……メルアも半魔女……人間と魔物との混血だった。


 タカトは夢中でパイにかぶりつく子犬の頭を撫でようと手を伸ばす。

 だが、子犬はパイを取られると思ったのか、小さく唸り声を上げて威嚇した。

「取らないよ……」

 タカトは苦笑し、少し手を引っ込める。

「でも、お前……ちっちゃいのに、すごいな。母さんを守ろうとするなんて……俺には……」


 タカトは、母を思い必死で戦おうとする子犬の姿を思い返す。

 まだ小さなその牙を見つめながら、自分に問いかける。

 ――俺はどうなんだろう。

 母の仇である獅子の顔を持つ魔人の姿を思い出すだけで、心が震える。

「仇をうつぞ!」と頭の中で叫んでいても、心は萎縮し、言い訳を重ねて逃げ回っているだけだ。

 ――俺って……何をしているんだろう……


 そんな時、ビン子が犬たちに優しく語りかける。

「ここじゃ怖い人にいじめられるから、あっちの森へ行きなさい。森には食べ物がたくさんあるからね」

 そう言いながら、自分たちが暮らしていた森の方角を指さした。


『思いでぽろぽろほろにがパイパイ』を食べ終えた子犬は、口の周りにたくさんのパイのくずをつけながらビン子の顔をなめまくる。

「きゃあ、くすぐったいよ」

 しっぽはちぎれんばかりにぐるぐる回っている。

 まるで、空腹を満たしてもらった感謝のように。


 だが、パイをくれたのはビン子じゃなくてタカト。

 なのに子犬はタカトにはまったく見向きもしない。

 ――コイツめ!

 タカトは少しムッとした。

 それでも子犬の体がさっきより大きくなっているように見えた。

 食べた直後なのに? もう?

 ――いや、気のせいだろう。


 そんな文句をぶつぶつ言いながらうずくまって餌をやるタカトの背後に、ひとつの人影がひそりと忍び寄る。

 まるで闇から現れたかのように、気配をまったく感じさせないその影に、ヨークをはじめ誰も気づかなかった。


 黒いローブを頭からかぶった老婆の姿。

 老婆はタカトの肩越しに犬たちの様子をのぞき込む。

「また、こんな汚いものを助けておるのか……お主も、相当もの好きじゃの……」


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