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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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第六の騎士の門(11)

 いまだ興奮冷めやらぬ子供たちの声が、門前広場の奥で響いている──。

 そこには、神民街と一般街とを隔てる巨大な城壁がそびえていた。


 その城壁の入り口の陰に、かれんな少女と屈強な男が身を潜めている。

 少女の名は真音子(まねこ)。第七の騎士 一之祐の神民、金蔵勤三(かねくらきんぞう)の娘だ。


 付き従う男はイサク。

 その身体はボディービルダーのように逞しく、腕には無数の傷跡が走っている。

 だが背中は無傷で、まるで敵に背を見せたことのない歴戦の勇者のようだった。


 ……が。なにより目を引いたのは、彼の異様な格好だ。

 紙袋を頭からすっぽりかぶり、上半身は裸──

 その上に、フリル付きのピンクのエプロン一枚。


 すなわち! 紙袋が! 裸エプロン! なのである!


 意味がわからない……。

 わからないよね……。

 作者だってわからないww

 ツョッカーの怪人よりも、もはや断然、不審者。

 誰もが気味悪がり、自然と距離を取るのも無理はなかった。

 

 一方、可憐な少女・真音子は十六歳ほど。

 金髪のボブにメガネ──どこにでもいそうな、ごく普通の女の子……に見える。

 いや、正確には。

 隣に立つ“紙袋裸エプロン”の存在感が強烈すぎて、

 彼女が「普通」に“見えている”だけかもしれない。

 というのも、彼女もまた──男に劣らぬ、いやそれ以上の立派な胸の持ち主だ。

 そう、いわゆる「巨乳」である。

 もしビン子がこの場にいたなら、即・天敵認定だったに違いない。

 それほどの圧倒的な存在感を放っていた。


挿絵(By みてみん)


 そんな真音子の背後で、イサクがつまらなさそうに声をかける。

「お嬢、今日はもう引き上げませんか?」


「まあ、何を仰っているのですか?」

 お嬢と呼ばれた真音子(まねこ)は、タカトから一瞬たりとも目を逸らさず、そっけなく答えた。


 その様子に、イサクの声は自然と大きくなる。

 両手をあれこれ動かしながら説得を試みる。

「毎日毎日こんなことばっかりして……もっと他にやることあるでしょう!」


 真音子は小さくため息をつく。

「またですの」──そう言いながらも、視線は依然、タカトに釘付けだ。

「本日の業務はすべて滞りなく完了しております。今は、わたくしの自由時間でございます」

「そ、それはまあ、そうなんですが……」

 イサクの口ごもる様子に、真音子の声音にはうっすらと苛立ちがにじんでいた。

「もしご不満があるのでしたら、お帰りになってくださっても結構ですわ。わたくし、一人でも差し支えございませんもの」

「でもそれじゃ、俺がアネサンに怒られちゃいますって……」

 イサクは両手をバタバタと振り回しながら、慌てて食い下がる。


「でしたら、黙って控えていらっしゃいませ!」


 イサクは大きなため息をつき、近くの壁に頬杖をついてもたれた。

「でもまあ……あの男のどこがいいんですかねぇ。器も小さけりゃ、肝も小さい。てことは当然、アレも小さいじゃないんですかねwww」

 その冗談が、本人にはよほどツボだったのか──

 イサクは腹を抱えて突然、爆笑し始めた。

 紙袋がガサガサと揺れ、ひときわ大きな音を立てる。


 ──そのとき。

 真音子が、スッと振り向いた。

 まるで空気が一線を越えたように、静かで鋭い動きだった。


 そして、そこからの!


「あん! なんじゃワレ! 言いたいことはそれだけか! イてこますぞ! コラァッ!」


 あの上品だった少女はもういない。

 眉は吊り上がり、口元は鬼のように歪み、目にはギラついた光が宿っている。

 気品なんて微塵も残っていない。そこにいるのは、完全にキレ散らかしたレディースの総長そのもの。

 いや、その迫力……もはや、ヤンキーと言うより極道と言った方が適当だろう。


挿絵(By みてみん)


 その殺気じみたプレッシャーに、イサクは一瞬で表情を変え──

(まぁ、紙袋をかぶっているため見えないんだけどねwww)

 電光石火の勢いで地面に手をついた。

「も、申し訳ございませんでしたァッ! お嬢ッ!」


 実はこの二人、借金取りである。

 そして今しがた、一つ仕事を片付けてきたばかりなのだ。


 少しばかり時をさかのぼる。

 はい、ここで早戻し──ストップ! ストップ! ストーップ‼


 時はちょうど、ビン子が土手の上で幼女たちの歌に聞き惚れていたあの頃。

 そして、あのセントウインが「ヤバッ! 集合時間すぎてるじゃん⁉」と気づいて、慌てて家を飛び出した──まさにその時刻である。


 紙袋をかぶったイサクと、可憐な少女・真音子は、一軒の家にいた。

 ……とはいえ、家と呼ぶにはあまりにも粗末だった。


 壁はひび割れ、ところどころ土台が剥き出し。

 ちゃぶ台の脚はガムテープで補強され、床板の隙間からは風が吹き込む。

 天井からは蜘蛛の巣が垂れ、部屋全体がほこりっぽい。

 “貧乏”を通り越して、“もうすぐ崩壊”といった風情の空間だった。


 そんな中、真音子は、ミシミシと音を立てる椅子に静かに腰かけていた。

 その隣には、無言のまま仁王立ちするイサク。


 そして、二人の視線の先──

 薄汚れたシンデレラのようなドレスをまとった男が、深く頭を垂れて土下座していた。

 つい先ほど、オカマバーから帰ってきたばかりの男だ。

 その姿がどれだけ滑稽に映ろうとも、いまは誰も笑わなかった。


 やがて、真音子が口を開く。

 その声音はあくまで柔らかく、だが容赦はなかった。


「……ハゲ太様。ご返済日は、確か本日でいらっしゃいましたわね?」


 その静かな一言が、ひどく寒々しく響いた。

 傾いた家の空気が、ひときわ冷たく感じられるほどに──


 ハゲ太は床に頭をこすりつけ、懇願していた。

「あと一日……あと一日だけ待ってください」


 どうやら彼は、この二人から借金の取り立てを受けているらしい。

 というのも、彼が務めるオカマバーは、埃まみれのステージに古びた汗とたばこの臭いが漂い、店内のライトは半分しか点かず、時折「カチカチ」と乾いた音を立てて点滅している。

 まるで幽霊屋敷のように客は来ず、閑古鳥が鳴きっぱなしだった。

 火の車どころか、もはや完全に炎上寸前の状態である。

 とてもハゲ子の学費どころではなく、ハゲ太自身も満足に食べるものすらままならない有様だったのだ。

 だからこそ、本日の返済金は、少しどころかまったく足りておらず――まさに今、その責め苦に苛まれているのだった。

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