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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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第六の騎士の門(9)

「一緒に召し上がりませんか」

 ビン子は小さな皿を、そっと権蔵の前に差し出した。


 権蔵は、はっと息を呑んだ。

 ……だが、手は動かない。

 神から施しを受けるなど──

 たとえそれが、自分が供えたものであろうとも、神に捧げたものを自らの口に運ぶなど、罰当たりにもほどがある。

 皿の上には、干し肉と芋がひと切れずつ。

 それだけのものが、権蔵の全身を縫いとめていた。


「俺、これもらい!」

 タカトがひょいと横から干し肉をつまんだ。

 遠慮も畏れもない、なんとも無神経な手つきだった。


 だがビン子は、それを咎めることもなく、むしろどこか嬉しそうにタカトを見つめていた。

 ──それが、権蔵には不思議で……どこか眩しかった。


 ビン子は静かに皿を置くと、両手で芋を一つ包み上げ、再び差し出した。


 権蔵は戸惑った。

 手が震えた。


 ──神の施しを……この手で、受け取ってよいのか……。

 迷いながらもゆっくりと、手を差し出す。


 そのとき。


「それいらないなら、俺、もらい!」

 再びタカトが手を伸ばす。

 だが──


「このどアホ! それはワシのじゃ!」

 バシッと、鋭い音。

 権蔵が、迷いなくその手をはたいた。


「いてっ……」

 タカトが、さも大げさに手を振る。


 だが、もう彼の姿は権蔵の目には映っていなかった。

 芋を、ビン子の両手からそっと受け取る。

 まるで神の温もりを、掌にすくい上げるように。


 ──そうか……この子も……寂しかったんじゃな。

 掌の上にある、小さな芋。

 ただ見つめながら、権蔵の心が静かに震えていた。


 ――なのに……わしは、腫物にでも触るように避けていた……

 ……それが、どれほどこの子を傷つけていたことか……。


 何かを決めたように、芋をそっと包む。


 ──ならば、するべきことは決まっておる。


 顔を上げたとき、権蔵の表情には、穏やかな笑みが浮かんでいた。


「これからは、家族みんなで……一緒に食べるかのぉ」

 芋を半分に割り、ビン子に差し出す。

「ハイ!」

 ビン子は、それを両手で受け取り、満面の笑みを咲かせた。


   * * *


 第六の門前広場で、昔の思い出に浸っていたビン子。

 ──私は、もう一人じゃない……

 いつしか、空を見上げる目に、涙が溜まっていた。

 ──私の心は空っぽじゃない……だって、もう……タカトも……じいちゃんも……家族なんだもん…………


 風が、そっとビン子の髪を撫でる。

 頬を伝って落ちていく涙。

 まるで、かつての孤独を洗い流すかのように──


「巨乳! 巨乳ーっ!」


 しかしその感傷は、けたたましいタカトの叫び声にぶち壊された。


「ビン子! ビン子! 巨乳だぞ! スゲー巨乳がいたぁぁぁぁぁ!」

 

 宿舎の入り口から、勢いよく飛び出してくるタカト。

 そしてビン子の元へ駆け寄り、めちゃくちゃ嬉しそうに叫ぶ。


「めちゃくちゃ美人の巨乳! もう、この世のものとは思えない巨乳だった!」


 ビン子は慌てて頬の涙をこする。

 ──もう……せっかくの、いい思い出が……台無しじゃない……


 ビン子は、これ以上なく冷たい目でタカトを見下ろした。

「あっ、そう。よかったわね」


「スゲーよ。あの巨乳」

 タカトは自分の胸の前で、見えないボールをニギニギしてみせる。


 もうビン子は、目も合わせようとしない。

 荷馬車の上で頬杖をつきながら、つぶやく。

「……で? どこに運ぶのよ」


 ニギニギしていた手が、ピタッと止まる。

「へっ?」


 ビン子は無言で、宿舎を指差した。


「もう一度行ってきまーす!」

 タカトは、舌をペロッと出しながら、バタバタと駆け戻っていった。


 その直後、宿舎の入り口から一人の女性が飛び出してくる。

「タカトくーん!」

 長い金髪をなびかせた、スラリとした女性。

 優しい笑顔で、手招きしている。

 どうやら、搬入先も確認せずに飛び出したタカトを、わざわざ呼びに来たらしい。

 ……もしかして、この人、騎士?

 女性の前に立っていた守備兵たちは、すぐに脇へ控え、道を開けた。


 タカトは貧乏で、一般国民とはいえ、その扱いはほとんど奴隷に近い。

 小汚くて、オタク丸出しのタカトに、騎士が気さくに声をかけるなど──

 いや、普通は、ありえない。

 だが、ここ第六の門の騎士・エメラルダは、違っていた。

 彼女は威張ることもなく、見下すこともなく。

 ただ、一人の人間として、タカトに接していた。

 たとえそれが、奴隷であったとしても──

 変わらないのだろう。

 その在り方は、まるで──


 誇り高き騎士ではなく。

 真の、「聖女」のようだった。


「ちっ……! 本当にできた巨乳ね!」

 エメラルダを見つめるビン子は、悔しそうに爪を噛んだ。

「あれは間違いなく敵よ! 敵! 巨乳はみんな全て敵なのよ! ……この世界の敵なのよっ!」

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