表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/142

第六の騎士の門(1)

 ケーキの甘い香りが、広場に漂っていた。


 ここは神民街の第六の騎士の門──城壁の前に、門だけがぽつんと鎮座している。

 昇りきらぬ朝日が城壁を照らし出し、石畳に濃い影を落としていた。


 そんな門前広場には、先ほどから神民街へと続く入り口を通り、人々がひっきりなしに出入りしている。

 だが、神民街から広場へと出てくる流れに比べ、広場から入ろうとする側は混雑していた。

 入り口に立つ守備兵が、怪しい者を神民街に入れぬよう、念入りにチェックしているからだ。


 その人の流れが滞る入り口のすぐ横に──ピンク色をした、おもちゃのような可愛らしい店が建っていた。

 そう、これが最近できたばかりのケーキ屋さん、その名も……「ムッシュウ・ムラムラ」www


 おすすめは、濃厚な生乳クリームをふんだんに使ったイチゴショートである。


 そのケーキをすぐに味わえるよう、店の横には腰ほどの高さの生垣で囲まれた小庭が整備されていた。

 緑の芝生が広がるその庭に備え付けられた円卓には、すでに女性客がぎっしり。

 入りきれない女子学生たちは、店の前に列をなし、キャッキャッと笑いながら順番を待っていた。


「ねぇねぇ、ケーキ10個食べたら福引券くれるんだって!」

「福引券ってなに?」

「知らないの? 一等は『二名同室・閉ざされた神秘! 医療の国への美容エステツアー』のペアチケットよ!」

「いいわね〜! 私も行ってみたいなぁ……よ〜し、食べて食べて食べまくるぞぉ〜!」


「それより聞いた? 今朝、第八の騎士の門の近くで、魔物と人魔が出たんだって」

「聞いた聞いた〜」

「第八って、セレスティーノ様が守護してる場所でしょ?」

「あ〜、だから今日、セレスティーノ様遅刻なさったのね」

「しかも、あんなにおやつれになって……きっとセレスティーノ様が手こずるほどのスゴイ魔物だったのよ」


 スゴイ魔物……?


 いやいや、それはもう──魔物を超えるスゴイ存在だったのだよ、チミたち!

 ピンクのオッサンと、オットセイ……いや、お登勢さん。

 この二匹の化け物を相手にして、生還したセレスティーノは、確かにスゴイ!!


 その広場の女子学生たちの様子を、向かいに止めた荷馬車の上から、タカトがにやにやと見つめていた。

 ──おぉ、これはちょうどいい女の子たちがいるじゃあ〜りませんか♪


 そして、おもむろにカバンの中から、一本のウチワを取り出した。

 ぱっと見は、竹の柄に紙が貼られただけの、普通のウチワ。

 だが、扇部には巨乳アイドル・アイナちゃんのパンチら写真が、誇らしげに貼り付けられていたのだった。


 そのウチワを見て、御者台に並んで座るビン子は、残念そうにため息をつく。


「はぁ……もしかして……昨日の夜、一生懸命作ってたのって、これだったりする?」


 そう、昨夜──タカトの部屋で、ビン子はベッドの上から作業台の彼を静かに見守っていた。

 ──頑張ってね。


 無心に作業するタカトを邪魔しないよう、ビン子は静かに恋愛小説を読みふけっていた。

 夜明け前、そっとベッドを降りたとき、彼は作業台に突っ伏して、静かな寝息を立てていた。

 その肩に、そっと毛布がかけられる。

 ──ご苦労様。


 あれほど応援していたのに……

 あれほど見守っていたのに……


 なのに、出来上がったのが……


 アイナのパンチらウチワかよ! コラ(╬ಠ益ಠ)‼


 だが、その写真──どこか、おかしい。

 いやらしく二の腕に押し潰されるような谷間、男を地獄の底に引きずり込むかのような深いクレバス。

 だが、そのあふれんばかりの脂肪のボリュームが、どうにもアイナの公式サイズと合っていないような……?

 それは、ほんの髪の毛一本分ほどの違和感。

 だが、貧乳なビン子にとっては──その一本が大きな差だった。


 じっと目を細め、写真を凝視する。


 ──これは……ムフフな本から切り抜いた他人の体に、アイナの顔を貼り付けたものでは……?

 って、アイナのアイコラかい……コラ(−_−)!

 

「聞いておどろけ!」

 タカトはビン子の呆れ顔などお構いなしに、勝手にしゃべり始めた。

「これは、魔鳥コカコッコーの羽とウチワを──融合加工したものだッ!」

 と、誰に頼まれたわけでもないのに、解説モードは全開。

 そして──ためにためてからの~!

 ウチワを頭上に突き上げ、大シャウト!


「これこそ! 名づけてぇ~『スカートまくりま(せん)』だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ――スカートまくりま扇……って、あんた……コラ(_ _|||)……


 ビン子は手のひらで顔を覆い、ガクッと頭を落とす。

「また、あほなものを作ってからに……」

 その呆れようは、先ほどよりもさらに深かった。

 ――なんか私って……バカみたい……(T_T)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ