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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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緑髪の公女(7)

 ハゲ太は、若くして最愛の妻を亡くしていた。

 それ以来、たった一人で娘・ハゲ子を育ててきた。オカマバーで働きながら、男手ひとつで――いや、オカマ手ひとつで。

 父の苦労を知ってか、ハゲ子は必死で勉学に励んだ。

 そして、ついに模試でトップの成績を収め、神民学校の特待生として合格したのだった。

 入学金は免除。授業料もタダ。さらには奨学金まで支給されるという破格の待遇――

 二人は、夢でも見ているかのように抱き合って喜んだ。


 神民学校を卒業すれば、国家公務員の道は約束されている。

 さらに運がよければ、どこかの騎士の神民として仕えることも夢ではない。

 そんな未来を思い描きながら、ハゲ太は娘を誇らしく見つめていた。


 だが、世の中は、そう甘くはなかった……


 ハゲ子が神民学校へ通うようになってから、彼女は次第に塞ぎ込むようになった。

 かつてあんなに明るかった笑顔が、すっかり消えてしまったのだ。


 いつからか、四六時中ニット帽を目深にかぶるようになった。

 部屋でも、食事中でも、寝るときですら――その帽子は決して脱がれなかった。


「いい加減にしろ、ハゲ子! 家では帽子を取りなさい!」


 堪えきれず、ハゲ太は彼女の帽子を引きはがした。

 その瞬間、ハゲ子は頭を手で覆い、膝を抱えてうずくまる。


 そして、ハゲ太は目を疑った。


「ハゲ子……それは……」


 あれほど美しかったハゲ子の髪が、見るも無残に抜け落ち、まだら模様を浮かび上がらせていたのだ。


 涙ぐみながら、ハゲ子は震える声をしぼり出す。


「お医者さんが言ってた……ストレス性の脱毛症、だって……」


 言葉を失うハゲ太。


「成績が落ちると……特待生の資格も、奨学金も……全部なくなるの……」

「でも、そんなになるまで……」


 ハゲ太の声が震える。


「……だって、うち貧乏じゃない。成績が落ちるとね……奨学金も、授業料免除もなくなるんだって……」

「だったらやめたらいいじゃないか、なぁ、ハゲ子……」

 ハゲ太の声が震える……


「……だって、うち貧乏じゃない。授業料払えなかったら、神民学校をやめないといけなくなる……」


「だったらやめたらいいじゃないか、なぁ、ハゲ子……」


 ハゲ子は涙をぬぐいながら、しかし目をそらさずに言った。


「でも……私は、お父さんに楽をさせてあげたいの。ずっとオカマ姿で、馬鹿にされながら働いて……私のために、ここまでしてくれたじゃない……」


 ――ハゲ子……


 涙腺が崩壊したハゲ太は、彼女をギュッと抱きしめた。

「ハゲ子……ありがとうな……でもな、お父さんは、ハゲ子が笑っててくれたら、それだけでいいんだ……本当に、それだけでいいんだ……」

「うん……うん……ごめんね、お父さん……」


 ハゲ子は顔を上げ、少しだけ笑って言った。


「お父さん、もうちょっとだけ頑張ってみるよ。それでもダメだったら……そのときは、ごめんね」

  彼女の頭に、ハゲ太の大きな手がそっと置かれた。

「バカだなぁ、ハゲ子! いざとなったら、お父さんが何とかしてやる!」


「なに言ってるの……毎月の授業料って、大金貨一枚(百万円)だよ。そんなの無理だよ……」

「オカマの底力をなめるんじゃないよ! なんてったって、オカマはこの世界の最強種族だからな!」


 ――ハゲ子……ハゲ子……

 ハゲ太は、娘のために神の恩恵を求めていた。

 もし、自分が“神のスキル”を得られれば、大金貨一枚くらいは稼げるかもしれない。

 そうなれば、ハゲ子は学校を辞めなくて済む。もう、無理をする必要もない――

 だが、街に現れたという神の姿は、どこにも見当たらなかった。

 道行く人々に尋ねても、誰も知らないと言う。


「神様ぁあぁぁァァ!」


 道の真ん中で、オカマが天に向かって絶叫していた。

 ――なんでだよ……なんで俺たちばっかり、こんなに苦しまなきゃならないんだよ……


 同じ頃、神民学校の教室では「自習」という名の自由時間が与えられ、生徒たちはおしゃべりに花を咲かせていた。


「ねぇねぇ、それよりケーキでも食べに行かない?」

「知ってる? 第六の騎士の門の近くに、新しいケーキ屋さんができたんだって!」


 ピクンッ!


 アルテラの耳がピクリと動いた。まるでウサギのように、その言葉を逃さなかった。


 ――あ、新しいケーキ屋さん……

 うつむくアルテラが生唾を呑み込んだ。

 ごくり、と生唾を呑む。どうやらアルテラは、甘いものに目がないらしい。


「イク! イク!」

「私もイク!」

 楽しげに盛り上がる女子生徒たち。


 その輪を、アルテラはじっと見つめていた。

 手を挙げようとして、手が止まる。

 ――わ、私も……

 でも、声が出ない。体も震えている。

 それどころか、先ほどから体が震えて手も動かないのだ。

 そう、緑女として生まれたアルテラの存在は、この教室で疎まれているのだ。。

 ――もう、傷つくのはイヤ……

 彼女はそっと、机の上に視線を戻した。


 そんなアルテラの様子に、一人の女子生徒が気づいたようで、ちらりと視線を向けた。

 アルテラは、宰相閣下の愛娘だ。誰もが無視できる存在ではない。

 そのせいか、女子生徒はどこか義務のように、恐る恐る声をかけた。

「ア、アルテラさまも……ご一緒にいかがですか……?」


 その言葉を聞いた他の女子たちは、一瞬で口をつぐみ、顔を伏せた。

 その表情は、緑女という存在に対する嫌悪がにじむ、冷たく、険しいものだった。


 ──怖い……

 アルテラは彼女たちの顔を見て、思わずスカートの裾をぎゅっと握りしめた。

 その手は小刻みに震えていた。

 けれど、心の奥に残っていた小さな勇気をふりしぼり、彼女は声を張った。


「わ、私には……用事があるの!」


 その言葉が発せられた瞬間、女子たちの表情がぱっと明るくなった。

 そして何事もなかったかのように、また笑い声を交わし始めた。

 まるで、厄介な障害物が取り除かれたかのように――

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