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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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いってきま~す(6)

 にらみ合うタカトコウスケ。

 まさに一触即発、ピリピリとした空気が張りつめていた。

 ……一方、そのすぐ横では。

 身もだえするビン子。

 まさに昼想夜夢(ちゅうそうやむ)、デレデレとした妄想が張りつめていた。


「覚悟しろ! タカト!」

 コウスケは腰に手を当て、堂々とタカトを睨みつける。

 荷馬車の上のタカトも、その動きを鋭く警戒した。


 ──奴は……何をする気だ……?

 高く昇る太陽が、二人の額にじんわりと汗をにじませる。


 そう、この緊張感こそバトル小説の真骨頂!

 なに? ギャグ小説だろって?

 バカ言いなさい! これはあくまでもバトル物のハイファンタジー!

 コメディやラブコメとは一線を画しているのだよ! 一線を!

 いうなればこのお話は、親を殺されたタカトの復讐物語!

 そして、その陰で動くのは、この世界が始まりし時の悲しい出来事……そう、引き裂かれた二人の神々のお話しなのだ!

 えっ? そんな雰囲気まるでない?

 そんなわけあるかい!


 身構える二人の上では、呑気な三羽ガラスが青空をカァ~と鳴きながら飛んでいく。

 止まった荷馬車の横では、腰の曲がったおばあちゃんがゆっくりと歩いていた。

 腰をトントン、そしてフゥ~と一息。

 土手の上には、そんなのんびりとした空気が、しれっと漂っていた。


「最初からフィナーレだ!」

 叫ぶコウスケは、腰に隠し持っていた筒をタカトに向けた。

 その筒は、どこか見覚えのある……そう、ペットボトルを少しだけ無理やりカスタムしたような形をしていた。

 しかも先端には、竹の棒のようなものが無理やりツッコまれているという謎仕様。


「タカト! これが俺の全力だぁぁぁぁっ!」

 叫ぶと同時に、コウスケはその棒をしっかりと握り、勢いよくググッと押し込み始めた。

 丸いペットボトルのような筒が、その内部の圧力に耐えきれず、ぷくっとわずかに膨らんだ。

 次の瞬間——その先端に空いた小さな穴から、透明な何かがピュッと飛び出しかける。

 それは……あまりに控えめで、あまりに情けなく、まるでガマン汁のような……って、おい。


「全力全開フィナーレバスター!」

 コウスケは気合と共に、棒を筒の奥深くまでグッと一気に押し込んだ。


 ──うっ!


 次の瞬間、先端の小さな穴から、白い液体が糸を引きながら……


 ビュルルルルルッ!


 と、ものすごい勢いで噴き出した。


 ――あぶない! ビン子!

 無意識のうちに、タカトはビン子をその背にかばった。

 というのも、今日のビン子は……危険日なのだ!

 そんな液体を浴びようものなら、彼女は一日中途方に暮れるに違いない。

 なぜそんなことを知っていたのか? 作者も知らん。

 だがタカトは、本能的にビン子の前に立ちはだかり、壁となったのである。


 ビュルルル・ル・ル……ル……ル……ル……

 放たれた白濁……もとい、水のしぶきは、勢いよく飛び出したものの……

 くるりと美しい放物線を描いて、馬の前の土を少し濡らしただけだった。


「なぜだ……?」

 呆然とするコウスケ。

 そのコスチュームは、さっきまでの威勢が嘘のようにびしょ濡れであった。


「お前は水鉄砲すらまともに作れないのか!」

 御者台の上で、タカトが腹を抱えてワハハと高笑いする。

 そう、コウスケの手に握られていたのは、ペットボトルで作られた水鉄砲だった。

 本来は、底に開けた穴から水を一気に噴き出す仕組み……だったのだが──

 棒との間にできたわずかな隙間から、圧力が逆流。

 結果、水は正面ではなく、飲み口の方からビュッと噴き出してしまったのである。

 ……よりによって自分に向かって。


 えっ? ほんとうにそれは水鉄砲の水なのかって?

 水ですよ! 水!

 アレだと思った? バカじゃないですか?

 大体、アレの小さな穴に棒を突っ込む変態モダニスト、いやオナ〇ストなどいるわけないでしょ!

 え? 実際にいる? ネットを見てみろ?

 …………

 ……ちっ!

 でも残念でした! ここは聖人世界! ネットなどございませ~ん!


 なら、ビン子が危険日だとか言っていただろ! こっちはパンツ下ろして待ってたんだぞ!

 そんなの知らんがな!

 だいたい、今日は青空、洗濯日和!

 働き者のビン子ちゃんは、これ幸いと家にある服を全て洗濯してしまったのだ。

 って、いつの間に! えっ? 道具を荷馬車に運ぶ前ですよ! 前!

 ということで、着替えなどある訳もなく、当然、今着ている服しかないのだ。

 そんな服がぬれて風邪でも引いたら超大変! な! 超危険日だろ。


「俺のターン!」

 タカトもまた、ゆっくりと腰に手を当てた。

「俺のマグナムが……火を噴くぜ……」

 そう呟くその姿は、まるでどこかの世界的怪盗アニメで帽子を目深にかぶったダンディなおじさん──そう、“次元”のようなニヒルさをまとっていた。


 今度は、びしょ濡れのコウスケがタカトの動きを警戒した。

 ――奴は……何をする気だ……

 じりじりと照りつける太陽が、服に残った水分をジワジワと蒸発させていく。

 だが、蒸発しているのは水分だけじゃない。

 胸の奥で広がる不安と緊張も、肌の内側からジリジリと立ち上っていた。

 まるで嵐の前の静けさ。

 音もなく、空気がピンと張りつめていく……。


「全力全開ッ!」

 タカトの指が、風を切るようにサッと動く。

 まるで凄腕ガンマン。

 その一瞬に、すべてを賭けるような気迫が宿っていた──!


「俺の必殺技! ザ・3rd(サード)! ホーリーウォーター!」

 タカトもまた小さなペットボトルをコウスケに向けた。

 だが、そのペットボトルの水鉄砲から聖水が発射される、まさにその直前!

 ビシっ!

 タカトの後頭部に、ハリセン直撃!

「この変質者! こんなところでズボンを脱ぐな!」

 ビン子の怒声が、静かな土手に響き渡った。


 だが、その声はタカトには届かなかった。

 というのも──

 ホーリーウォーターを発射しようと御者台から身を乗り出した、その瞬間。

 ビン子の一撃がビシっ!

 タカトは体勢を崩し、御者台から転落。

 そのまま地面に叩きつけられ、顔面を激しく打ちつけていた。


 それを横目に、おばあちゃんの目がキラリと光る!

 曲がった腰が突然ピンッ!

 そのまま、タカトの横へと飛び込んだ!

 砂埃を上げてスライディングしていく体が、大きく地面を3回たたく!

 (ワン)(ツー)(スリー)! 

 カア! カア! カア!

 試合終了! 試合終了!

 勝利のゴング、いや、勝利の三羽ガラスが空に響き渡った!


 まるでリングポストに登るレスラーのごとく、御者台に足をかけるビン子。

 そして──高々と天にハリセンを掲げた!

 ウィンナー! ……じゃなかった、ウィナー! ビン子ぉぉぉぉ!

 かくして、タカトのバトルはあっけなく、そして情けなく敗北に終わった。

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