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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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黒の魔装騎兵と赤の魔装騎兵(15)

 そんな檻の前で、セレスティーノは仁王立ちしていた。

 ――これで、厄介事は片付いた。

 ピンクのオッサンがこのまま人魔収容所に連れていかれれば、さきほどまで胸をよぎっていた不安は、きれいさっぱり消え去る。


 というのも、いまだかつて……人魔収容所から生きて戻ってきた者は一人もいないのだ。

 収容所の中で何が行われているのか、セレスティーノは知らない。

 知らないが、それでいい。知る必要もない。


 ただ一つ、確信しているのは……

 あのオッサンが、二度と自分の前に現れることはない。


 だが、セレスティーノには――ピンクのオッサンとは別に、もう一つの懸案事項が残っていた。

 学生服の襟元から伸びる一本の女の手が、にゅるりと首筋にまとわりついている。


 線香臭い肌が、すうっと耳元に迫ったかと思えば、干からびたような酸っぱい吐息が、セレスティーノの鼓膜をなで回す。


 ぎくっ。

 その瞬間、セレスティーノの全身が石のように固まった。

 そう……年増の奴隷女、お登勢さん。

 あの女が、背後霊のようにぴったりと彼の背中に張りついていたのだった。


 ピンクのオッサンから逃げるためとはいえ、セレスティーノは先ほど……ついうっかり、お登勢さんを食事に誘ってしまったのだ。

 「あ……あれは、ちょっとした……間違いで……」

 訂正しようとするセレスティーノの言葉を、ずばっと遮ったのは……

 「今日は、あたしがセレスティーノの旦那と、朝までトリプルルッツルツルだからねッ! 邪魔すんじゃないよ!」

 町中に響き渡る、年増の声。

 その瞬間、近くにいた女たちの顔色がみるみる青ざめ、まるでオオカミにおびえるウサギのように、二歩、いや三歩と後ずさっていった。

 ……お登勢さん、どうやらこの街では相当顔が利く存在らしい。

 あるいは、セレスティーノの“ババ専”疑惑”にドン引きしただけかもしれない。

 いや、違う。

 「朝までトリプルルッツルツル」と聞いて……

 毛を抜かれるのはお登勢さんではなくセレスティーノだと察した彼女たちは……

 巻き込まれたくない一心で、ただただ距離を取ったのだ。

 

 勝ち誇るお登勢さんは、セレスティーノの耳元で甘くささやいた。

 ……いや、ささやくにしてはやたら声がデカい。

 まるで、檻の中のピンクのオッサンにわざと聞かせているかのようだった。


 「ねぇ、セレスティーノの旦那って、撫子(なでしこ)のようにおとなしい女が好みなんだってねぇ? まるで……あたしみたいじゃないか❤」


 ――誰が撫子やねんッ!

 撫子? 違うわボケ!

 お前は撫子じゃなくて彼岸花や!

 しかも、彼岸花のドライフラワーや!


 セレスティーノは顔面をひきつらせたまま、どうにか笑顔を捻り出す。

 だが、そんな正論ツッコミを口に出した日には、もう何されるか分かったもんじゃない。

 ……ということで、セレスティーノは覚悟を決めて、ぎこちなくうなずいた。

「そ……そうだね……ハニー……ボキは……おとなしい女性が大好きです……」


 がびーん!

 ピンクのオッサンは、その瞬間、ムンクの叫びになった。

 ――ハ、ハニーですって……

 というか、ゼレスディーノさまは、おとなしい女性が好み……だと!?

 ハッと気づいたピンクのオッサンは、檻からさっと手を離す。

 そして、わざとらしく弱々しい声を作り、隙間からひらひらと手を差し出した。

「イヤァン♪ ゼレスディーノさまぁ~、たすけてぇ~❤」

 それを見たセレスティーノは、乾いた笑いを口だけでひねり出す。

 ――は、は、は……今日はなんて日なんだ……

 今の状況はまさに……

 前門のオッサン、後門のオバはん!

 虎と狼どころの話じゃない。

 二兎追うものは一兎も得ず! いや、二『鬼』も追ったら、生きて帰れん……

 ならば、ここは確実に一鬼ずつ仕留めていくのみ……!

 ……それまでは我慢だ! 我慢! ザ・ガマン!


 「イヤァ!! 誰か、助けて――!」

 進み始めた檻の中から、住人たちが次々に顔を出し、必死に叫ぶ。

 檻の隙間に押し付けられた一人の女が、悲痛な面持ちで懸命に手を伸ばした。

 だがしかし、街の住人たちは誰一人として、その手に応えようとはしなかった。

 ただただ、遠巻きに震えながら、その光景を見送ることしかできなかったのだ。


 そんな……

 閉じ込められた人々の怨嗟(えんさ)の悲鳴。

 それを、まるで甘美な音楽でも聞いているかのように、赤の魔装騎兵は目を細める。

血のように赤く輝くその瞳が、待ちきれぬ様子で舌なめずりを浮かべていた。

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