今日一日お疲れさん!(3)
だが、そんな事件があったことを知らないタカトの反応は、当然……
「ちょっと! アイナちゃんはちょっと休養してステージを休んでいるだけだから当然、生きてるって! 爺ちゃん! ボケるの早いって!」
「だれがボケとるんじゃ! で……もう一つのそれはなんじゃ?」
――もう一つのそれってなんだよ! 真実は一つ! 写真集は一つ! ついでに俺が持っている細長い棒も一つなのだ!
すでにみだらな妄想でピンピンとなったタカトの細い棒が再び背後を伺った。
……
……
……
……
――おおーい! 俺! 棒を二つ持ってたよ!
そう、もう一つの細長き棒がアイナちゃんの写真集の横に折れ曲がって転がっていた。
それを見た瞬間、タカトの細い棒もシュンと力なく折れ曲がってしまった。
って、ちゃうわい!
――しまったぁぁぁぁぁぁ!
そう、そこに転がっていたのは第一駐屯地でジャックからもらったカマキガルの鎌!
――俺……コイツの事……忘れてた!
ついついアイナちゃんの写真集の事で頭がいっぱいになっていたのだ。
当然、カマキガルの鎌は魔物素材。
そんなものが爺ちゃんに見つかると絶対に怒られる。
まぁ、当初の予定通り大量に素材を持ち帰ることができていれば「どやっ!」ってな感じで爺ちゃんに見せびらかせることもできないわけでもない……というか、そんなに大量にあったら隠すことなど不可能だ。
だが、現状……この一個しかないのだ。
怒られた上に没収されかねない……
だから、アイナちゃんの写真集と一緒に背中に隠してたわけなのよ。
だって、後で俺が使おうと思ってたんだからさ……
――もう……俺ってうっかりさん! テヘ! ペロ!
だが、ここで門外に出てカマキガルの鎌を手に入れましたなどと正直に申しても、権蔵が「そうだったのかぁ~。それは大変だったなぁ~。タカトや♡」などと許してくれるとは到底思えない。
ならば……
ならば……
誤魔化すのみ!
そんなタカトは、とっさにカマキガルの鎌を頭に乗せた。
「こ……これは! ウルトラセブンのアイスラッガー! でゅわ!」
このネタ、ジャックとモンガには受けていた。
だが、目の前の権蔵はニコリともしない……
――クソっ! やはりこの言い訳は古かったか!
だが、こうなればもう破れかぶれ! 無理やり笑って押し通すのみなのだ!
タカト! オシて参る!
ちなみに今度のはこの原稿を書いている時点の最新のネタだ!
なぜかタカトはカマキガルの鎌を自らの股間にオシ付けて叫ぶのだ。
「弾けろ! ストロング! デッカ〇〇!」
チーン! 終了!
そう、そんなタカトの満面の笑みを権蔵の低くくて重い声が貫通弾の如く簡単に撃ち抜いていたのだ。
「もう一度聞く! その鎌はどうしたんじゃ!」
そんなものがここに転がっているということは、どこぞで魔物組織を手に入れてきたという証なのである。
それはどう見てもカマキガルの鎌。カマキガルは中型種の魔物である。
この聖人世界で中型種などそうそうお目にかからない
だからこそ、融合国内で中型種以上の魔物がでれば大騒ぎ。危険を知らせる警鐘が鳴り響くのである。
朝の鶏蜘蛛の騒動は権蔵の耳にも届いていた。
だが、カマキガルの話は聞いてない。
――ということは……
権蔵はタカトをギラリと睨み付けた。
――タカトの奴は、言いつけを破って門外に出たということなのか?
そんな権蔵の様子を瞬時に察知したタカトの黒目がくるくると左右に行き交い、すでに行き場所を失っている。
――なんとか誤魔化せ! スパコン腐岳!
だが、既にタカトの脳内にあるスパコン腐岳は、本日の営業をすでに終了している。またのご利用をお待ちしております。
――クソ! 使えねぇ!
ならば、ココは己が力で乗り切るのみ!
「こ……これは……その……天から降ってきましてですね……」
「嘘をつくな!」
――やっぱバレてるぅぅぅ!
もう、生きた心地がしないタカトであった。
そんな時、すぐさまビン子が深々と頭を下げた。
「ごめんなさい。第六の門のお仕事で門の外に出ました」
まぁ、こういう時には素直に謝るのが一番なのだ!
だが、それができないのがタカト君。
そんなタカトは固まっていた。
――えっ……
黒目だけ静かにスライドし、いまだ横で頭を下げているビン子を静かにとらえる。
――ビン子ちゃん、今、それ言っちゃう……
というのも、セブンとデッカーがダメでもまだネタはあるのだ!
そう! ウルトラ兄弟は8人兄弟、いや、もっと多いのか?
というか、あそこの家族関係って昔の日本みたいに複雑なのよ。
あれは絶対に相続でもめるパターンやね!
「俺、ウルトラ警備隊の大隊長の座を相続するからな!」
「あっ! 兄ちゃんずるいって! それは俺が!」
などと宇宙崩壊の兄弟喧嘩が目に浮かぶ……
って、今はそれどころじゃなかった。




