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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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金貨をどう使うかは俺の自由だ!(14)

 そう! 俺の全財産があるじゃないか!

 そうだ! それでビン子を買収しよう!

 買収してしまえばビン子もまた共犯!

 いや、爺ちゃんに怒られたときにはビン子のせいにしてしまえばいいのだ!

 俺って冴えてるぅ~

 

 数分の沈黙の後、タカトは額に浮かぶ汗を拭きながら「だ……大丈夫だって……俺の持ってる全財産でお前が欲しいモノをちゃんと買ってやるから……」と呟くとズボンのポケットをこれみようがしにポンとたたいたのだった。

「あっそ……」

 ――って、あんたの持っている全財産は銅貨5枚50円でしょうが!

 そう言うタカトが大してお金を持っていないことを知っていたビン子は期待するだけ無駄ですよねぇ~って感じでそっぽを向いてしまた。


 夕焼け空に影を落とす雲の上、鳥たちの物悲しそうな鳴き声が家路を急いで飛んでいる。

 そんな空の下、先ほどから何も言わぬタカトとビン子を乗せた荷馬車はガタガタと音を立てながら次第に一般街の人ごみの中へと分け入っていった。

 町は帰宅時間のせいか少々ざわついている。

 ところどころに明かりがともりだした通りからは、どこかからともなくカレーの香りが漂ってくるようだ。

 そんな香りがする飲み屋の暖簾を仕事帰りのおっさんたちが次々とくぐっていた。

 その一方で、路地ではまだ子供たちが遊びたりないのかいまだに大声をあげながら走り回っていた。

 いつのまにかタカト達の荷馬車が作る車輪の音すらも行きかう人々が作る喧騒にかき消されて聞こえなくなっていた。

 

 チリーン……

 そんな喧騒の中にかすかな鈴の音が響いたような気がした。

 だが、そんなわずかな音にもかかわらず、タカトは反応した。

 いやそれは反応したというよりタカトの記憶が震えたのだ

 何か寒気のようなモノがタカトの背中を一気に駆け上がっていくような気がする。

 そう、その鈴の音は優しく、そしてなによりも懐かしい……


 チリーン……

 手綱を握るタカトの手がピタリと止まった。

 懸命に音の糸を目で探す。

 その糸は荷馬車の前を歩く一人の女の腰から伸びていた。

 女の腰にはサクランボのような小さな鈴が二つ結ばれていたのである。


挿絵(By みてみん)


 ――あの鈴は!

 それを見た瞬間、タカトの脳裏に自分が幼かったころの風景が浮かびあがってきたのだ。


 まだ、父正行が生きていたころの家の縁側で、幼きタカトが叫び声を上げていた。

「お母さん! 姉ね(ネエネ)が!」

 タカトが泣きついた先には、縁側のふちに腰を掛ける母ナヅナの姿があった。

 先ほどまで庭先で一人泥遊びをしながら泥団子を作っていたタカト。

 そんなタカトの背後にそっと一つの影が忍び寄る。

 そう、それはタカトの天敵! 姉のカエデの姿。

 足音を忍ばせて近づいてくるカエデの気配は、まるで暗殺者。

 これから受けた仕事を片付けに出かけるかのように一人鼻歌を歌い出す。


 チャラリ~ん ルトタタタタぁ~ たとた・タラリラぁ~ん……

 ジャ~ジャ~ん♪ ジャガジャガジャ~ン♪

 ジャ~ジャ~ん♪ ジャガジャガジャ~ン♪


「一かけ、二かけ、三かけて」

 庭に敷きつめられた玉砂利がカエデの歩みと共に悲しそうな泣き声を上げていた。

「仕掛けて 殺して 日が暮れる……」

 そして、そっと目を閉じた顔の横にカエデは右手をさっと構えたのだ。

「この恨み……晴らします!」

 エイ!

 目を大きく見開くとともに、いきなり投げつけられた二つのコマ!

 そう、この頃のカエデはスパイファミリーごっこにはまっていたのだ

 って、どうみてもお前は「必殺からくり人」の小駒太夫だろうが!


 いてっ!

 とっさに額を押さえてうずくまるタカト。

 どうやら二つのコマが次々とオデコに直撃したようである。

「お母さぁーん! 痛いよぉ! 痛いよぉ!」

「もうやめなさい! カエデ!」

 先ほどまで歌を歌っていた母ナヅナは縁側から庭に降りると、幼きタカトをそっと抱き寄せた。

「痛いの~痛いの~飛んでいけぇ~、これで大丈夫」

 大声で泣きじゃくるタカトのおでこを母ナヅナがなでてくれたのだ。

 ――お母さんの手って……温かい……

 ヒックヒックとしゃっくりをするタカトは母の胸にぎゅっと頭を押し付ける。

 どうやらその安らぎによって泣きやんだようである。

 だが、それを見るカエデは、なんか面白くなさそう。

 ――なんで、いつもタカトばかり優しくされるの?


 そんなタカトの様子に区切りをつけたナヅナは、そばでふてくされているカエデに目をやると大きなため息をついた。

「はぁ……カエデ……もう少しおしとやかにできないの……だいたい、そのコマは投げるものではないのですよ……」

「えー! お母さん、私は強くなりたいの! おしとやかとか軟弱なのはキライ! だいたい、この金角きんかクをどう使うかは私の自由でしょ!」

 そうタカトのオデコに当たったのはコマはコマでも将棋の駒! その中でもカエデのお気に入りの金と角だったのだ。

「それは将棋を指すために使います!」

「刺すのね! 分かったわ! タカト! 覚悟ぉぉ!」

 今度は指先でつまんだ金と角でキツツキのようにナヅナの胸に抱かれたタカトの頭をコツコツと小突き始めた。しかも、そのとんがったとん先で!

「痛い! 痛い! 痛い! 痛いよぉ~ お母さん!」

「やめなさい! カエデ!」

 それを見たナヅナはついに大声を出した。

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