095 露店商人再び
「やっと見つけたぞ!」
「人違いです。」
「いいや、このふてぶてしい態度は間違いないな。」
「間違いないも何も俺はあんたのことなんか知らんぞ。」
「ルビー。」
「ルビーがどうし……って、あの時のくそ親父か!!」
「いやぁ~、思い出してくれて良かったぜ。」
「それで何の用だよ!」
「何、ちょっとした良い儲け話を持って来てやったんだ。」
「断る!」
「そう言うなよ~、ほら今度はちゃんと坊主にも分け前やるからよぉ~」
「だから断るって言ってるだろ!」
「ふぅ~、出来れば音便に済ませたかったんだが……おい!」
「「へい!」」
くそ親父が声を掛けると、2人のお供が襲い掛かって来た。
無理やり連れて行って宝石を作らせる算段なんだろう。
だが、戦闘モードに入った俺は空間認知と高速思考を発動させると、襲い掛かる2人がゆっくりと動いて見えた。
「くっ、この! 避けるな!」
「すばしっこい奴め!」
2人がかりの攻撃を避け続ける。結構人の目が有るんだが、反撃するべきか?
「そこで何をやっている!」
「やべっ!」
「逃げろ!」
「ま、待って俺を置いて行くな!」
どうやら騒ぎを聞きつけて、衛兵がやってきたみたいだ。
それを見たくそ親父と護衛は逃げて行った。助かった。
「騒ぎを起こしたのはお前か! 守衛所へ来い!」
ガシッ!
腕を掴まれてしまった。全然助かってないやん(涙)
いつも思うんだが、俺って本当にLUKが高いんだろうか?
「待ちなさい!」
「何の用だ。」
そこに一人の商人らしき男性から声が掛かった。
「その子は被害者ですよ。因縁付けられて無理やり連れて行かれそうになっただけです。」
「そうなのか?」
「ええ。それに証人はほら、周りにいる人たち全員ですよ。」
「そうだな、確かに無理やり連れて行かれそうになっていたな。」
「その通りよ、ごめんね。おばちゃんも怖かったのよ。」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「ほら言った通りでしょ?」
「う、うむ。そうみたいだな。」
「ほら、逃げた男たちを追いかけたらどうですか?」
「そうだな。先ほどはすまなかった。」
衛兵はこんな子供に対してだけど、しっかりと頭を下げて謝ってくれた。
「誤解が解けたのなら大丈夫です。」
「ありがとう。じゃあ私は行くことにするよ。」
「お仕事頑張ってください。」
「ああ。」
衛兵はそう言うと、男達が逃げて行った方へと走って行った。
俺は改めて助けてくれた商人らしき男性にお礼を言うことにした。
「助けてくれてありがとうございます。」
「何、無事でなによりだったね。まぁ、助けなくても君なら大丈夫そうだったみたいだけどね。」
商人らしき男性は、そう言うとウィンクをした。
「いえ、本当に助かりました。」
「それにしても君は凄いね。大の男2人を相手にしても余裕そうだったし、その年で冒険者なのかい?」
「あ、はい。」
「将来有望そうだ。いつか私の商会の護衛でも頼むのも良いかもしれないね。」
「機会が有った時は是非。」
「期待しているよ。それじゃ気を付けてね。」
「はい。そちらも。」
本当に商人の男性だったみたいだ。しかも私の商会と言ってるくらいだから、そこそこの人物なのだろう。
そう言う人物に助けられ、かつ知り合うことが出来たってことは、やっぱり運は悪くない……のかな? 良く分らん。
そして、その商人の男性は、そのまま向こうへと歩いて去って行ったのだった。
トラブルのせいですっかりとやる気が無くなってしまった俺は、さっさと帰ることにした。
しばらく孤児院を空ける関係も有るため、今日は奮発して10匹分のホーンラビットを孤児院へと提供することにした。
もちろん残った銅貨2枚もちゃんと孤児院へと納めるのだった。




