092 買い物
「さて、俺達は明後日の準備を……とは言っても全部揃ってるし、シュウ達の手伝いでもするか?」
「そうね、それが良いわね。」
「シュウ、何か手伝うことは有るか?」
「う~ん。物を用意するにもお金が無いからなぁ……
野営時の毛布なら孤児院で使っているのを持って行けば良いし、そう考えると特に無いかな?」
「シュウ……」
「シュウ君……」
何でそんな可哀相なものを見る目で俺を見るんですか!?
「よし、俺がシュウの荷物を買ってやろう!」
「いやいやいや、良いですって! それでなくてもアランさんには街に入るための入街税も返して無いと言うのに。」
「そうだったか?」
「はい。初めてこの街に連れてきてくれた時に……って、あっ!」
「何でそれをシュウが知ってるんだ?」
「あ、いえ、その、つまり……そ、そう。身分証の無い人が街に入るのに必要と知ることが出来たので、ギルドカードが無かった俺にはお金が必要だったって思ったんです。
一緒に居たアランさんとエレンさんにしか支払いが出来ないと思えば……ね?」
「確かにそうか。でも、別に返す必要は無いぞ?」
「いえ、そう言う訳にはいかないですよ。いつかキッチリとお返しします。」
「そうか。じゃあ返ってくるのを楽しみにしておくな。」
「はい!」
「それはそれとして、やっぱり荷物が無いと色々と不便だろ? 貸しにしておいてやるから買いに行くぞ!」
アランはそう言うと、スタスタと歩き始めてしまった。
どうやら有無を言わさず決定らしい。下手に断るのも失礼だろう。今回も有難くお世話になるとしよう。
いつか恩を返せる時が来れば良いな。もちろん倍返しだ(笑)
「そう言う訳で俺はアランさんと行くけど、レリウス達はどうする?」
「僕達は僕達で準備しに行くよ。明日は準備のために休みにして、明後日の朝に集合場所に集合で良いかな?」
「はい。」
「ほら、アランさんが行っちゃうぞ。」
「あ、うん。じゃあまた明後日ね。」
俺は振り向くと、アランさんを追いかけて行くのだった。
「この店は色々と商品が充実していてな、結構オススメのお店だ。」
「おー」
着いた場所は、ちょっとした雑貨屋みたいなお店だった。
お店の中に入ると、色々な商品が所狭しと置かれていて、見ているだけでも結構楽しい。
だけど、結構店員から死角になる場所が多いのだが、万引き対策とかって大丈夫なのだろうか? 他人事とは言え心配になるな。
「これと、これ、こいつも必要だな。」
「アラン~、これも有ったら良いんじゃない?」
「それか? ダンジョンに行くわけじゃ無いから、今回は必要無いと思うが?」
「あれ? そうだっけ? あはははっ。」
あっちはあっちで楽しそうだし、俺は俺で商品を見させてもらおう。
俺が今見ているのは生活用品だ。木の皿やコップ、鍋や鉄板、他にはナイフや砥石とかも置いてある。
他にはランタンとかランタン用の油、紙、ペン、インク等もある。もちろん野営用の道具も揃っているみたいだ。
ちょっと変わった物だと、10cm四方のボロ布なんかも置いてあった。縫い合わせてパッチワークみたいな物でも作るんだろうか?
「シュウ、こっちに来てくれ。」
「あ、は~い。」
アランに呼ばれたので行ってみる。
「だいたいこんな物だと思うが、他に必要な物は有るか?」
アランさんが選んでくれた物は、皮のリュック、毛布、水袋、火打石、木の皿とコップ、鍋、後、ビーフジャーキーみたいな乾燥肉が数個と、さっき見つけたボロ布が数枚程有った。
「これって何に使うの?」
さっき気になったボロ布を指差して聞いてみた。
「別に葉っぱで良いなら必要無いが、有った方が他の用途にも使えるし、色々と便利だぞ。」
それを聞いて理解した。なるほどケツを拭くための布か。孤児院では葉っぱだったからね。
他の用途が何かは分からないが、その時になったら教えてくれるだろう。
「問題なさそうです。」
「そうか。なら購入してくるか。」
アランさんがそれらを持って店員の居るカウンターへと持って行き、ドサドサと商品をカウンターに置く。
「幾らだ?」
「えっと……全部で大銅貨2枚、銅貨3枚になりますね。」
「わかった。」
アランさんがそう言うと、お金の入った袋からお金を取り出した。これでまた借金が増えてしまったな。
「丁度ですね。ありがとうございました。」
アランさんは購入した物を皮のリュックへとしまい、毛布は包めて皮のリュックの上に乗せる様にして縛り付けた。
「ほら、背負ってみろ。」
言われた通りに背負ってみると、背負う所がブカブカで背中に隙間が有る状態だった。
動くたびに左右に揺れるため、少々動きづらい。少し長さを調節してもらった方が良いな。
そんなことを考えていたら、アランから予想外の一言が有った。
「丁度良いな。」
「えっ? これだと動くたびに左右に振られて、いざという時に戦いにくいんですけど?」
「違う。いざという時は、すぐに下ろせるようにするのが正解だ。だからこれで良い。」
「なるほど。」
確かに言われてみれば、こんな大荷物を背負ったままでの戦闘はやりにくい。
重りを背負ってのトレーニングならまだしも、命がけの戦闘では自殺行為になるって訳か。
「今日は、本当にありがとうございました。」
お店を出たと同時にお礼を言って頭を下げた。
「なに、子供がそんなこと気にするな。」
「そうだよ~、何と言ってもシュウ君は私達の子供みたいな感じだからね~」
「!?」
えっ? そんな風に思っていてくれていたの? ヤバイ、ちょっと嬉しいと思ってしまった俺がいた。
「あ、ありがとう。」
「もう、照れちゃって、可愛いんだから~♪」
エレンさんに抱き着かれて、ほっぺたをツンツンされてしまった。
「折角だし、他に何か必要な物とか有るか?」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「そうか、じゃあ次は依頼で会おうな。」
「はい!」
「シュウ君、じゃあね~」
「はい。また。」
俺と別れたアランとエレンは、この場を去って行ったのだった。




