088 解体
「おおっ! やりぃ! レベルが上がったぜ! それに弓術も増えた!」
「おめでとう。僕もレベルが上がったよ。」
「はぁ? もうスキルを覚えたって? それって早くね? あ、レリウスはおめでとう。」
「ありがとう。」
俺が剣術を覚えるのに1ヵ月ほどかかったと言うのに、今日だけで弓術を覚えただと!?
「ふふん。シュウとは才能が違うんだよ、才能が。」
サムはドヤ顔だ。一発殴っても良いだろうか?
「もしかしてだが、サムって今日が初めて弓を触ったって訳じゃないんじゃね?」
俺はサムをジト目で睨みつつ質問してみた。
「ギクッ!」
「そう言えば、サムの親父さんは、狩人だったよね。」
そこにレリウスが思い出したようにそう言った。
「ギクギクッ!」
「子供の頃は、僕も一緒に弓を射らせてもらったことが有ったっけ。」
「・・・・」
と言うことは、サムはやっぱり経験者ってことか?
言われてみると、やけに上達するのが早すぎたとは思っていたが……
「なら、どうして最初は外してたんだ?」
「くっ! 久々だから勘が鈍ってたんだよ! 悪いか!!」
「いや、納得した。」
「けっ!」
なる程、もともと弓術のスキルを取れる下地はあったってことか。納得した。
「さて、ウルフを解体をしちゃおうか。」
「なぁ、レベルも上がったことだし、この程度なら全部持って帰れんじゃね? ビックボアよりは小さいだろ?」
「それもそうだね。試してみようか。」
レリウスがそう言うと、ウルフを持ち上げてみた。サムも同様に持ち上げている。
「うん。ちょっと重いけど、血と内臓が無くなれば問題無く行けそうだね。」
「じゃあちゃっちゃと処理して持って帰ろーぜ!」
「シュウ君も大丈夫かな?」
「あ、大丈夫です。」
サムよりSTRが高いから問題はないハズだ。
「よし、じゃあそうしようか。」
各々が自分で狩ったウルフを解体することにした。
周りを見ると、レリウスとサムは一生懸命解体作業を行っている。
解体作業が面倒だったので俺はこっそりアイテムボックスに入れてオート解体をすることにした。
「確か俺が不必要と思った物だけを廃棄できるんだったな。」
実は何度かオート解体していて気が付いた機能だった。極端な話、肉しかいらないと思えば、それ以外の素材は全て廃棄することが出来るのだった。勿体ないからそんなことはやらないけどね。アイテムボックスに入れておく分には荷物にならないし。
今回は、2人に合わせて血と内臓だけを廃棄するイメージで対応する。
『解体が終了しました。
・ウルフ×1
不必要な素材を廃棄しますか? 〔Y〕/〔N〕』
素材名が出ないのは解体と言うよりは要らない部位を廃棄するだけだからだ。
(Y)を押して廃棄してからウルフを取り出すと、お腹がぺったんこになったウルフがそこに有ったのだった。
「よし!」
完璧に血抜きが出来ているため、生臭さが一切無い高品質の肉だ。孤児院へのお土産に出来ないのが勿体ないが仕方がない。
とりあえず解体処理は終わったので、後はレリウス達を待つことにした。
・・・・
「出来た!」
「出来たぞ!」
「お疲れ~」
「なんだ、シュウはもう終わってたのか……って、毛に血の跡も付いて無いってどうやったらそんなこと出来んだよ!」
「あ、いや、ま、まぁ、ちょっとコツがね!」
「シュウ君は凄いね。」
ヤベー! 面倒くさがったから、そこまで気が回らなかったよ。確かにあからさまに異常なほど綺麗すぎた。
俺はキラキラした目で見るレリウスと、疑いの目で見るサムの視線を躱しつつ、ウルフを担ぐのだった。
冒険者ギルドへ戻って来た俺達は、さっさと納品カウンターの方へと向かうことにした。
「ウルフとゴブリンの耳を持ってきました。」
「は~い。ウルフが3匹で、内1匹は血抜きは無しと。」
「いえ、血抜きしてますよ。」
「えっ?」
俺がそう言うと、ティアナさんが驚いてウルフを確認した。
「……本当に血抜きがされている!?」
「えっと?」
「ああっ! ごめんなさい! えっと、後はゴブリンの耳が21個ね。」
ティアナさんがサラサラとメモをした後、判子を押した紙を渡してくれた。
「はい。これを受付カウンターに持って行ってね。ご苦労さまでした。」
「ありがとうございます。」
さて、今回はどうだ!
レリウスが受け取ったメモを見せて貰らうと、こう書かれていた。
【ウルフ 品質:A 解体:×
ウルフ 品質:A 解体:×
ウルフ 品質:A 解体:×
ゴブリン耳 21個】
「おー! 全部品質がAだってさ。」
「さすがは俺だな。」
「僕達でしょ。」
「こまけーことは良いんだよ!」
「「あはははっ」」
俺達は楽しくなって笑い合うのだった。




