087 特訓の成果
動く標的への対応は後にすることにして、当初の予定通り森へ狩りに行くことにした。
鳥みたいな素早い小さな標的よりも、ゴブリン等の大きな標的で練習した方が良いと思ったからだ。
実践で練習って言うのもアレだけどね。
森に入ると、早速ゴブリンを見つけたみたいだ。
「レリウス、シュウ。頼みが有る。」
「どうした?」
「何?」
めずらしくサムがお願いしてきたので聞くことにした。
「ギリギリまで俺にやらせてくれないか?」
「うん。良いよ。シュウ君は?」
「俺も構わないよ。」
「助かる。レリウス達はここで待っててくれ。」
「わかった。」
レリウスが返事をすると、サムは静かにゴブリンに向けて進みだした。
射程距離に入ると、弓を構えて矢を発射した。
「ギャ!」
見事ゴブリンの首を貫いた。もしかしたら頭を狙ってズレたのかもしれないが、即死なのは間違いない。残り2匹。
サムに気が付いたゴブリンが向かってきたところに2射目を発射!
命中!
焦ったのか、当たったのはゴブリンの右肩だ。
そしてこちらへ下がりながら最後の1匹へ第3射!
命中!
今度は胸の中心に当たり、即死したっぽい。残り1匹!
右肩を怪我したゴブリンで動きが遅かったからか、今度は落ち着いて頭部へと発射し、距離も近いことも有って見事命中することが出来た。
一応万が一を考えて用心はしていたのだが、必要なかったみたいだ。
「どうだ!」
「おめでとう。」
「おうよ!」
1人で3匹のゴブリンを倒せたことで、サムはとっても嬉しそうだ。レリウスと拳を合わせて喜びあっている。何あれ、カッコイイ!
何はともあれ、実際良い感じに討伐出来たし、十分な成果だろうと思う。
おそらく直ぐにでも弓術のスキルでも生えるんじゃないだろうか。
「さて、サムの弓の実力も確認できたことだし、どんどん狩って行こうか。」
「おぅ!」
「はい!」
その後はレリウスが前に出てタンク役で、サムが中距離での攻撃と遊撃を担当することに。
俺は基本アタッカーで、状況によっては魔法による攻撃要員として対応することになった。
ゴブリン程度はもう俺達の敵じゃ無かった。
魔法は一切使わず、サムの先制で1匹倒し、レリウスが2匹を受け持った後ろから俺が2匹目を倒し、残った1匹をレリウスが倒すって感じでサクサクと倒して行った。
7組のゴブリンを倒した後、それは起こったのだった。
「左から何か来るぜ! 3匹だ。動きの速さからしてウルフか?」
それを聞いたレリウスが盾を構えて前に出る。
「シュウ君、2匹を頼む!」
「わかっ『待った!』……えっ?」
「1匹だけ頼む。」
「う、うん。」
もうウルフは近くまで来ているため考えてる余裕は無い。とりあえず1匹を狙撃で倒した。
それと同時に、俺が倒したウルフの脇を走っていたウルフの体に矢が刺さり、そのウルフは転がった。
「レリウス!」
「了解!」
最期の1匹はレリウスへと飛び掛かると、レリウスが盾を横殴りでウルフの顔面を殴った!
ウルフは吹っ飛び、脳震盪を起こしたのか、上手く起き上がれないみたいだ。
「今だ!」
レリウスがそのまま飛び掛かり、心臓の当たりを剣で突きさすとウルフは動かなくなった。
「こっちも終わったぜ!」
サムの声がした方を見ると、矢が刺さったウルフの首が切られて倒されていた。
どうやら矢だけでは倒しきれてなかったみたいだ。
「へへっ、今回のは文句無いだろ?」
「僕のもどうかな?」
2人が倒したのは文句なしに完璧だ。俺は何も言わずに拳を出すと、2人はそれ見てニヤケると、同じく拳を出してきた。
コツン!
「よっしゃ~!!」
「やったな!」
「やったぜ!」
俺達3人は喜び合ったのだった。




