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086 特訓


次の日になり、今日も冒険者ギルドへ向かうことにした。



「遅いぞ!」


「えっ? あぁ、サムか。おはよー」



冒険者ギルドに入ると同時にサムに声掛けられたのでビックリした。

それしてもサムはニコニコ顔だ。何か良いことでもあったのだろうか?



「何か良いことでも有ったの?」


「ふふん。これを見て驚くが良い!」



サムがそう言うと、背中に隠していた物を見せてきた。



「弓?」


「そうだ! これで俺も遠距離攻撃が出来る様になったんだ。シュウばかりに良い恰好はさせないぜ!」


「そっか。やっと買えたんだ。おめでとう。」


「お、おう。」



俺が素直にお祝いの言葉を言ったからか、サムは間抜けな顔をしていた。そんなに俺が言うのが意外だったのだろうか?



「じゃあ、今日は狩りかな?」


「そうだね。サムったら昨日からずっと楽しみでソワソワしていたからね。」


「レリウス! う、うるさいぞ!」


「あはははっ、それじゃ森へ行ってみようか。」


「おう!」


「はい。」



と言うことで新しい弓を試すためにも俺達は森へと出かけることにしたのだった。

街を出て草原を歩いていると、気配察知に一つのが現れたが、サムは索敵を行っていないのか気付いていない。

まぁ、サムの練習にも丁度良いだろうし、声を掛けてみることにした。



「ねぇ、あの辺りに何か居るよ。」


「何? ……確かに居るみたいだな。」


「折角だからサムやってみなよ。」


「よし! まかせろ!」



サムはそう言うと、対象へ向かってゆっくりと移動して行った。

獲物を発見したらしく、弦に矢をつがえて弓を構えると、狙いを付けて解き放った!



「外した!」



サムの悔しそうな声が聞えて来た。そして獲物は索敵範囲外へと逃げて行ったのだった。

外した矢を回収したサムが戻って来た。



「あとちょっとだったんだけどな。」


「あとちょっとってどのくらい?」


「うっ! ちょっとはちょっとだ!」


「・・・・」


「あー! 思いっきり外したよ! これで良いんだろ!」


「いや、別に責めている訳じゃないんだけどね。」


「じゃあ、何だよ。」


「ただ、動いている敵ならまだしも止まっている敵で外したから、事前に練習したのかなって思っただけ。」


「と、当然だろ?」


「あれ? 一昨日に購入した後は祭りになっちゃたし、その後はずっと僕と一緒に行動してたよね? いつ練習してたんだい?」


「うっ……」


「サム?」


「全然やる暇が無くて……だから、さっきが初めてだよ! 悪かったな!」


「だと思ったよ。だったら少し練習した方がいいんじゃないかな。」


「それだと今日の稼ぎが……弓買ったから残り少ないし……」


「少しくらいなら僕が貸してあげるよ。だから練習しよう。」


「……そうだな。」



と言う訳で、急遽サムの弓の練習をすることになった。



「的はどうすんだ?」


「う~ん。」


「アレで良いんじゃない?」



俺が指を指した先には、ポコって盛り上がった小さい盛り上がった土が有った。距離はだいたい20m程で、大きさ的にもホーンラビット程度だし、丁度良いんでは無いかと思う。



「そうだな。やってみるか。」



サムが矢を番えて弓を構え……放った!


ザッ!


矢は10cm程右に逸れて外してしまった。



「くそっ! 次だ!」



再び矢を放つと今度は盛り上がった土を掠って行った。



「惜しい!」


「次!」



思わず声が出たが、サムは気にして無いみたいだ。

そして今度は頭の部分に命中した! もしかしたらお尻かもしれんが。



「やったぜ!」



サムも大喜びだ。



「ほら、1回だけじゃなくてもっとやってみなきゃ。」


「うっせー、分かってるよ!」



レリウスの指摘を受けて再び矢を放った。



・・・・



「どうだ!」


「これなら良いんじゃないかな。シュウ君はどう思う?」


「そうですね。丁度良い所に獲物が来たみたいですし、本番をやってみましょう。」



実は結構前から生体反応が反応していたんだよね。一生懸命頑張っていたから声を掛けなかったけどね。

今のサムの命中率は7割弱だ。落ち着いてやればきっと当たるだろう。



「居た! よーし、やったろーじゃん!」



サムはそう言うと、対象へ向かってゆっくりと移動して行った。

目標を発見し、矢を放った!



「キュ!」



矢は見事命中したが、即死には至らなかったみたいだ。

サムは短剣を抜くと、すかさず近寄って止めを刺したのだった。



「どーよ。」



サムが、倒したホーンラビットをぶら下げて戻って来た。



「お見事!」


「やったな!」


「ふふん♪」



サムのドヤ顔だ。うぜぇ!



「次は動いてる敵に当てられるようにだね。」


「そんなの余裕だぜ!」


「じゃあ、これに当てて見て。」



俺は土を丸めて団子を作ってみた。



「行くよ。」


「おう!」


「えいっ!」



俺は団子を放り投げた。



「今だ!」



そこにサムが矢を放つ……が、加速度的な対応が出来なかったため、思いっきり外れていた。

そしてサムは、悔しそうな顔をしていたのだった。どんまい。


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