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083 ゴミ拾い


次の日になり、俺は冒険者ギルドへ向かうことにした。

昨日の収穫祭の名残か、あちこちにゴミが落ちていたり、酔っぱらったオッサンが寝ていたりした。


冒険者ギルドへ到着した俺は、レリウス達を探すことにした。

もしかして昨日の収穫祭で飲み過ぎて二日酔いになってたりして……

そんな俺の心配を余所に、レリウス達を見つけることが出来た。



「おーい。」


「やぁ、シュウ君。おはよう。」


「よぉ!」


「おはようございます。」



どうやら見た感じでも二日酔いは無さそうだ。良かった良かった。



「今日はどうするんですか?」


「今日はこれを受けようと思ってるんだけど、どうかな?」



レリウスが指を指した方には依頼票と言うよりはポスターが貼ってあった。

そこには、収穫祭の後片付けが書かれていた。

どうやらこの街の領主の依頼らしく、参加者の人数制限は設けて無くて、誰ても参加できるらしい。

もちろんランクも関係なく1つの依頼として受けることが出来るのは幸いだ。



「いいよ。」


「よし、じゃあ登録しに行こうか。」



どうやら今回の依頼は特別依頼らしく、受付作業を流れ作業の如く処理をしていた。

ギルドカードを自分で機械に通すと、ギルド員から袋が手渡された。

どうやらこの袋にゴミを入れて持ってくると依頼完了になるみたいだ。

ゴミ袋はそこそこの大きさで、拾った量や重さによって依頼料が変わるとのことだ。



「誰が一番稼げるか勝負しよーぜ!」



またサムが勝負を仕掛けてきた。



「受けて立つ!」


「もちろん僕もやるよ。」



レリウスも参加するみたいだ。



「で、勝者には何かあるの?」


「そうだなぁ……ビリが1位に銅貨1枚ってのはどうだ?」


「お金持ってないから無理!」


「ならお願いを1つ聞く。これならどうだ?」


「お願いってどんなの?」


「不可能なことお願いしても仕方ないからな。俺達で出来る範囲のお願いだな。」


「う~ん、それなら良いか。」


「決まりだな! レリウスもそれで良いか?」


「構わないよ。」


「じゃあ時間は依頼が終わる夕方までだ。あばよ!」



サムはそう言うと、冒険者ギルドを走って出て行った。それってフライングじゃね?

おれが変な顔をしていたみたいで、レリウスも苦笑いをしていた。



「僕も行くことにするよ。」


「あ、はい。じゃあまた後で。」


「またね。」



レリウスもそう言うと、冒険者ギルドを出て行った。



「……俺も行くか。」



俺もそう言うと、冒険者ギルドを後にした。



「さすがにこの辺りにゴミは落ちて無いか。」



当然と言ったら当然か。冒険者ギルドの周辺にはゴミ1つ落ちていなかった。

ここに居ても仕方が無いので移動することにした。



「さて何処に行こうか。」



露店が多い大通り方面に向かうべきか。それとも穴場を探して裏道を行くべきか。

おそらく大通りは人が沢山向かっただろうし、あまりゴミは期待出来無そうだ。なら向かうのは裏道だな。

俺は人通りを避け、裏道へ向かうことにした。



「おっ、見っけ!」



俺は適当にゴミを拾いながら彷徨っている。

空間認知を使って視野を広くしている御蔭で、それなりにゴミを集めることが出来ていた。

ズル? 違うね。これは勝負なんだよ使える物は親でも使えって言うだろ? そう言うことだ。



「でも、まだ袋の10分の1も集まって無いんだよね。」



思ってた以上にこの街は綺麗だった。と言うかすでに拾われだけなのかもしれないけどな。

このままだと負けてしまうかもしれない。どうすっかな。



「ん?」



広く視野を取っている御蔭で、後ろから誰かが近づいているのが見えた。

相手は中年の男性か。人影のない裏通りでこっそり後ろから近づくってのは、何か怪しいな……

もしかしたら他に仲間がいるかもしれない。俺は気配察知も発動させてみたが、どうやら単独行動らしくて仲間はいないみたいだ。


とりあえず、俺は気が付いてないフリをしつつゴミを集めていると、男性が木の棒を振り上げて殴り掛かって来た!

俺は注意していたため、問題無くその攻撃を避けることが出来た。



「な、何!」


「バレバレなんですよ。」



俺は振り返って相手を確認すると、少し酒が抜けきっていない男性で、右手に木の棒、左手には袋を持って居た。あの袋は……



「もしかして俺のゴミを奪うつもりだったんですか?」


「ちっ! バレちまったが結局は同じことよ!」



男性はそう言うと木の棒を振り回し始めた。

とは言っても酔っ払いの攻撃だ。俺は高速思考を使うまでも無く避けて行く。



「くっ! このっ! ガキのくせにちょこまかと!」


「そりゃ、当たりたく無からね。それにほら、足元がお留守ですよ!」



俺は攻撃を避けた後に、しゃがんで足払いを行う。



「なっ!」



男性はそのまま空中で一回転して後頭部から地面へと落っこちた。


ゴン!



「うぐっ!」



男性はそのまま気絶してしまった。一丁上がりっと!



「さて、コイツをどうすれば良いんだ?」



木の棒を見ると、血の跡が付いていた。と言うことは俺以外に被害に遭った人がいるってことか。



「とりあえずこのゴミは貰っておくか。」



男性のゴミ袋には4割ほどのゴミが入っていたので、勝利者の特権と言うことで貰っておくことにした。これで今までのと合わせて5割のゴミが確保できた。

後は、この気絶した男性の処分だが……



「まあいいや、放っておこう。」



別に俺は正義の味方でも無いしな。守衛が気絶している男性を見かけたら何とかしてくれるだろう。

万が一次の人に被害が出ない様に木の棒だけは回収しておこう。流石に血が付いた物をゴミとしては出したくないのでアイテムボックスへとしまっておくことにした。



「よし、続きを頑張るか!」



俺は再びゴミを集めるために街中を彷徨うのだった。



・・・・



「よし、完了!」



俺の袋には溢れんばかりのゴミが入っている。さらに俺の脇には気絶している男性も転がっていた。

何が言いたいかと言うと、最初に襲われた後にも2回ほど襲われたのだ。

2人目が3割、そして最後のコイツが2割のゴミを持って居たため、こうして10割ものゴミが集まったのだ。


それにしても3回も襲われるとは……そんなに襲いやすい雰囲気なのだろうか? 確かに襲われやすい裏路地では有ったが……

いやいや、それよりもこの街の治安の方が心配になるぞ?

そもそも今回のゴミ拾い企画が、冒険者以外にも参加できるのが問題なのかもしれない。

冒険者としての評価は無くともお金は貰えるからな。襲ってきた男性がみんな酔っぱらっているオッサンばっかりなのが良い証拠だ。



「……まあいいか。」



その問題は俺が解決する話じゃないしな。俺的には評価が貰えてサムに負けなければそれで良いしな。



「それじゃ、戻るか。」



俺はゴミ袋を担ぐと、冒険者ギルドへ向けて歩き出した。


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