081 屋台
何度か焼いてみて、完璧になったところで、ジョンが声を掛けてきた。
「よし、そろそろ串焼き屋を始めるぞ!
ミーナ、お釣りは大丈夫か?」
「問題無いよ~」
「じゃあロイ、マイク、シュウ、呼び込みを頼むぞ!」
「「「合点でぃ、兄貴!」」」
「……お前ら、そんな言葉何処で覚えてきたんだよ。」
「行くぜ!」
「「おう!」」
「俺の話聞いて無いし……まあ良いか。」
と言う訳で、俺達孤児院による串肉屋台が営業開始したのだった。
「らっしゃい、らっしゃい! 美味しい串肉の販売だよ~!
ウルフにビックボア、収穫祭だけの特別販売だよ~!」
「おっ、良い匂いしてるじゃん。酒のつまみで買って行こうかな。」
「もう肉汁が溢れて最高の一品でエールとの相性バッチリで、お客さん満足間違い無いっす!」
「そうか、なら買って行こうかな。」
「お客様お一人ご案内~!」
よし! お客様ゲットだぜ!
「シュウやるな! 俺も負けてられねーぜ!」
「俺だって! マイク、どれだけ客が呼べるか勝負しよーぜ!」
「ほぉ! この俺様に勝負とは、片腹痛いわ!」
「はいはい。お2人とも、客を呼んでから言ってね。」
「「は~い。」」
先ほどの台詞とは裏腹に素直な2人だった。
・・・・
「ありがとうございました~」
「次のお客様どうぞ~」
「ビックボアの串焼き5本ね。」
「ビックボアの串焼き5本のオーダー頂きました~」
「おう!」
さっきからお客が途切れない。中々の人気みたいだ。
そこそこ美味しいのは勿論のこと、仕入れ値がタダ(涙)の御蔭で格安で販売しているのも大きいらしい。
どうやら噂が噂を呼んでこの人気になったみたいだ。
「へへへっ、ねーちゃん、串焼き一杯買ってあげるから、あそぼーよ!」
人が集まれば、こう言った変な輩も増えて来るのは仕方がないとは言え、困りものだ。
と言うか、ミーナとレイラも少し大人びているとは言え、まだ10歳だぞ! お巡りさんコイツです!! ってお巡りさんは居なかった。仕方ない……
「なーなー、良いだろ?」
「待ちな!」
「誰だ! ってガキかよ! ガキは用じゃないんだよ、下がってろ!」
「はいそうですか……って言えるかあぁぁ~~!!
ウチの大事な売り子さんに手を出すんじゃねええぇぇ~~!!」
「うっせー!!」
ドカッ! ドンガラガッシャン!!
振り向きざまに裏拳で殴られて吹き飛んでしまった。意識して無かったから避けられなかった。
「シュウ!」
「シュウ君!」
「いちちちっ……やりやがったな!」
正確には痛くは無いのだが、雰囲気だよ雰囲気!
「ちっ! 思いっきり殴ったのに気絶しねーとは、良い根性だ!」
「今度は俺の番だ!」
俺は左右にステップを踏みながらオッサンへと近づく。
「ふん!」
オッサンがパンチを繰り出したが、今度はしっかりと戦闘モードのため余裕でかわせた。
「なっ!」
先ほどは俺に攻撃を当てたから問題なかったが、今回の攻撃は空振りのため、そのまま勢いよくクルンと回ると、足をもつらせて転んでしまった。
「今だ!」
そこにロイの掛け声が入ると、孤児達が各々棒や、板等の獲物を持ってオッサンへと殴り掛かった。
「うぐっ! や、やめっ! だ、誰か助けてくれええぇぇぇ~~!!」
と言って止める俺達では無かった。おっさんはボロボロになっていた。ざまーみろ!
「シュウ、やったな♪」
「おう!」
「俺たちの勝利だ!」
俺はロイとマイクと一緒に勝利を喜ぶのだった。
「しゅ、シュウ君大丈夫?」
そこにレイラがやってきて、俺の殴られたところをハンカチで拭いてくれた。
「ケガは……大丈夫そうだね。よかった……」
「お、おう。ありがとな。」
「うん。」
レイラも胸に手を当ててホッとしていた。
「さっすがシュウ君だね!」
「うんうん。」
ミーナとカレンも勝利を喜びながらやってきた。
「それで、このオッサンはどうする?」
「そんなゴミはその辺に捨てておけば良いんじゃないかな?」
俺が聞くと、ミーナはゴミを見る目でオッサンを見ながらそう言った。うん、ソウダネ……
俺はその言葉に逆らわずにオッサンを道の端っこに捨てておくのだった。




